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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
冥婚

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緑のお姉さん

夢露美(むろみ)さん。この車、人は乗っていません」


 突然聞こえた女の声に振り向くと、緑色の制服を(まと)った二人の女性が矢納の車の中をのぞき込んでいた。


 駐車監視員! やった! これで矢納の奴、たっぷり罰金を取られるぞ。


 これで少しは懲りる……あれ?


 駐車監視員たちは矢納の車に着手しないで、そのまま離れていく。


「待って下さい!」


 僕に呼び止められ、駐車監視員たちは振り向いた。


 僕は矢納の車を指さす。


「ねえ、お姉さん達。どうして、この車をやらないのですか?」


 二人の駐車監視員は、一瞬困ったような表情を顔に浮かべてから答えた。


「私たちはね。近くに運転手さんがいる車には、着手する権限がないのよ」

「ええ? でも、この車には人が乗っていないのでしょ?」

「そうだけど、この車の運転手さんはそこの喫茶店の中にいるのよ」


 なんで知っているのだろう?


 聞いてみると、この辺りの駐車監視員はこの車に何度も着手 (この車が放置駐車違反をしているという事を確認する作業)をしていたらしい。


 しかし、いつも確認作業が終わる寸前で矢納が店から出てきて『これは俺の車だ! 帰れ!』と怒鳴って駐車監視員を追い払っていたそうだ。


「あの運転手さん、いつも店の中から私たちが作業する様子を見ているのよ」

「作業が終わる頃合いを見計らって店から出てくるのよね。性質(たち)が悪いわ」


 という事は、駐車監視員の確認作業が終わるまで、矢納が店から出てこなければいいわけだな。


「樒。ちょっと耳を貸して」

「なに? 息を吹きかけたいの?」

「違う! いいから耳を貸して」


 樒の耳に僕は口を近づけた。


「ごにょごにょごにょ」

「いいわよ。やってやろうじゃない」


 そう言って樒は、ニヤリと笑みを浮かべた。


 その目は如実にこう語っている。『おぬしもワルよのう』と……


 樒が店の方へ向かうのを確認すると、僕は駐車監視員のお姉さんたちの方を振り向いた。

 

「お姉さんたち。今日はまだ、この車の運転手の姿を見ていないのでしょ?」

「そうだけど……」

「じゃあ、運転手が近くにいることは、まだ確認していないよね」

 

 実際、運転手は喫茶店にいるのだけど、それを知っているのは僕らだけ。


 結局、彼女たちは僕から苦情を受けたという事で矢納の車に着手を始めた。


 そして、数分後……


「英子ちゃん。確認をして」

「はい」


 カメラを持っていたお姉さんが、相棒の持っている端末画面をのぞき込んでいた。


 打ち込んだデータに間違いがないかチェックしているようだ。


 やがて彼女の持っているプリンターから、これから矢納の車に張り付ける黄色い紙 (確認標章)が印刷される。


 これを貼られると、一万五千円の罰金が科せられるそうだ。


「変ねえ。あのおっさん、まだ店から出てこないわよ」

「いつもなら、とっくに出てくる頃なのに……」


 そりゃあ、出てこないさ。


 だって矢納の奴は今頃、店の中で樒の不動金縛りの術を食らって硬直しているのだから……

 

 矢納が店から出てきた時には、駐車監視員は作業を終えて姿を消した後だった。


「ああ! あいつら、貼りやがったな!」


 フロントガラスに貼られた黄色い紙を、矢納は悔しそうにひっぺがす。


「だから、駐車場に入れてって言ったのに」

「高い駐車料金になったわね。おっさん」


 僕と樒の慰め? の言葉など耳に入る様子もなく、矢納は駐車監視員の姿を求めてキョロキョロと周囲を見回した。


「監視員はどこへ行った?」

「あっちです」


 荻原君が指さした方向へ、矢納は駆けだしていく。


 礼も言わずに……


 まあ、礼を言われても困るよね。


 だって、駐車監視員が去っていったのは、荻原君が指さした方向とは逆方向なのだから……

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