セコイ!
矢納に確認したところ、このスレに書いてあることはほぼ事実らしい。
ただ、後輩をパワハラで辞めさせたという事は、頑なに否定していた。
「北村の奴が、勝手に辞めただけだ。俺のせいじゃない。それとな、俺は別に出社を禁止されていたわけじゃない。うちの会社は先進的だから、リモートワークを積極的に押し進めているだけだ」
とは言っているが、スレの書き込みによると、矢納がいると事務所内の雰囲気が悪くなるので『君のような優秀な人間には、ぜひリモートワークをやってほしい』と上司に煽てられて、今の体制になったらしい。
こんなのが同じ部屋にいたら、そりゃあ雰囲気も悪くなるだろうね。
まあ、それは僕らには、どうでもいいことだけど……
「あなたの事情は分かりましたが、車を止めたかったら店の駐車場に入れればいいじゃないですか。なぜ、いつも路上に止めるのです?」
「店の駐車場は、有料なんだよ。コーヒー一杯飲めば最初の一時間は無料だが、その後は一時間あたり百円かかるんだ。俺は最低でも五時間止めるから、四百円も取られるんだよ」
セコい!
「たったの四百円が、惜しいのですか?」
と、僕の言った一言で、矢納は顔をしかめる。
「自分で金を稼いだこともないガキが、たった四百円とか言ってんじゃねえよ!」
ああ、こいつも僕を小学生だと思っているな。
僕は名刺を差し出した。
「稼いでいますけど」
「なに?」
「僕は自分でお金を稼いでいますよ」
「ガキがバイトで小遣い稼ぎしたぐらいで、威張るんじゃねえ! 大人は生活費とか、車のローンとか、キャバクラ代とか、大変なんだよ」
最後の一つは、いらないと思うが……
「ていうか、おまえ霊能者なのか? じゃあ、ちょっと俺を見てくれよ。変な霊に憑かれていないか」
「僕たちは、プロです。無料で仕事は引き受けません」
「いくらだよ?」
「仕事の依頼は、霊能者協会を通じてください」
「けっ! 本当は、霊能力とか嘘だろう」
「そう思いたかったら、どうぞ。霊など信じない人の依頼なんか受けません」
「いや、別に霊を信じないわけじゃないが……おまえ、本当に霊が見えるのか? それなら……」
矢納は、スマホの画面を僕に見せた。
画面には、飯島露の立てたスレッドが表示されている。
「幽霊がこんなスレを立てたというが、本当なのか?」
「本当ですよ。かなりレアなケースですが」
「本当かよ!? しかし、なんでこのJKは、俺を恨んでいるんだ?」
「ここに書いてある通りですよ。あなたのせいで、事故に遭ったからです」
「事故は、俺のせいじゃない」
「あなたがどう思おうと、あなたの路上駐車が原因だと彼女が思っているのだから、仕方ないでしょう」
「止まっている車なんて、避ければいいだろう」
「避けた結果、後ろから来たトラックに追突されたのですよ」
「だったら、悪いのはトラックだろうが! 俺は悪くない」
「トラックの運転手は悪くないと、彼女は言っています」
「彼女は言っていますって? なんで分かるんだ?」
「あなたには、見えないでしょうけど……」
さっきから、僕の横に立っている飯島露を指さした。
「ここに、彼女の霊がいるのですよ」
それを聞いて、矢納はギョッとしたのか、一瞬だけ顔が恐怖にゆがんだ。
「マジかよ?」
「マジです」
その時、飯島露はスマホを取り出して何か操作し始めた。
何をしているのだろう?




