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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
冥婚

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112/289

セコイ!

 矢納に確認したところ、このスレに書いてあることはほぼ事実らしい。


 ただ、後輩をパワハラで()めさせたという事は、(かたく)なに否定していた。


北村(きたむら)の奴が、勝手に辞めただけだ。俺のせいじゃない。それとな、俺は別に出社を禁止されていたわけじゃない。うちの会社は先進的だから、リモートワークを積極的に押し進めているだけだ」


 とは言っているが、スレの書き込みによると、矢納がいると事務所内の雰囲気が悪くなるので『君のような優秀な人間には、ぜひリモートワークをやってほしい』と上司に(おだて)てられて、今の体制になったらしい。


 こんなのが同じ部屋にいたら、そりゃあ雰囲気も悪くなるだろうね。


 まあ、それは僕らには、どうでもいいことだけど……


「あなたの事情は分かりましたが、車を止めたかったら店の駐車場に入れればいいじゃないですか。なぜ、いつも路上に止めるのです?」

「店の駐車場は、有料なんだよ。コーヒー一杯飲めば最初の一時間は無料だが、その後は一時間あたり百円かかるんだ。俺は最低でも五時間止めるから、四百円も取られるんだよ」


 セコい!


「たったの四百円が、()しいのですか?」


 と、僕の言った一言で、矢納は顔をしかめる。


「自分で金を(かせ)いだこともないガキが、たった四百円とか言ってんじゃねえよ!」


 ああ、こいつも僕を小学生だと思っているな。


 僕は名刺を差し出した。


「稼いでいますけど」

「なに?」

「僕は自分でお金を稼いでいますよ」

「ガキがバイトで小遣い稼ぎしたぐらいで、威張(いば)るんじゃねえ! 大人は生活費とか、車のローンとか、キャバクラ代とか、大変なんだよ」


 最後の一つは、いらないと思うが……


「ていうか、おまえ霊能者なのか? じゃあ、ちょっと俺を見てくれよ。変な霊に()かれていないか」

「僕たちは、プロです。無料で仕事は引き受けません」

「いくらだよ?」

「仕事の依頼は、霊能者協会を通じてください」

「けっ! 本当は、霊能力とか嘘だろう」

「そう思いたかったら、どうぞ。霊など信じない人の依頼なんか受けません」

「いや、別に霊を信じないわけじゃないが……おまえ、本当に霊が見えるのか? それなら……」


 矢納は、スマホの画面を僕に見せた。


 画面には、飯島露の立てたスレッドが表示されている。


「幽霊がこんなスレを立てたというが、本当なのか?」

「本当ですよ。かなりレアなケースですが」

「本当かよ!? しかし、なんでこのJKは、俺を恨んでいるんだ?」

「ここに書いてある通りですよ。あなたのせいで、事故に()ったからです」

「事故は、俺のせいじゃない」

「あなたがどう思おうと、あなたの路上駐車が原因だと彼女が思っているのだから、仕方ないでしょう」

「止まっている車なんて、()ければいいだろう」

「避けた結果、後ろから来たトラックに追突されたのですよ」

「だったら、悪いのはトラックだろうが! 俺は悪くない」

「トラックの運転手は悪くないと、彼女は言っています」

「彼女は言っていますって? なんで分かるんだ?」

「あなたには、見えないでしょうけど……」


 さっきから、僕の横に立っている飯島露を指さした。


「ここに、彼女の霊がいるのですよ」


 それを聞いて、矢納はギョッとしたのか、一瞬だけ顔が恐怖にゆがんだ。


「マジかよ?」

「マジです」


 その時、飯島露はスマホを取り出して何か操作し始めた。


 何をしているのだろう?

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