神罰?
死神だと?
確かにこの霊気の強さから、ただ者ではないとは思っていたが……てっきり僕は、座敷童の類いかと思っていた。
「こいつが、死神?」
樒が疑わしげな視線を幼女に向ける。
「な……なんじゃ? 疑うというのか?」
「私は、前にも死神に会ったことがあるけど」
樒に死神の知り合いがいるとは知らなかった。
「あんた、なんかイメージが違うわね」
「何を言う! 死神にもいろいろいるのじゃ」
「ふーん」
樒は視線を飯島露の方に向けた。
「ねえ、露ちゃん。あんた死神が二度来たと言っていたわね」
「ええ。二回来たわよ」
「確か『準備が整うまで待っていろ』と言って帰っていった死神と、スマホを持ってきてくれた死神だったわね。このハーちゃんは、どっち?」
「スマホを持って来てくれた方よ」
「なるほど」
樒は幼女の方を向く。
「ねえ、ハーちゃん」
「な……何じゃ?」
樒の雰囲気に、幼女が狼狽えている?
「あんた、露ちゃんに現世の端末と通信できるスマホを上げたそうだけど、それって死神がやってもいい事なの?」
「も……もちろんじゃ」
「本当に? 閻魔様に、怒られないの?」
「お……怒られないぞ。わらわは閻魔など怖くないぞ」
おいおい。閻魔様は死神の上司だろう。
それを呼び捨てにして……
「スマホはともかく、露ちゃんは荻原君と一緒に霊界に逝くような事を言っているけど、それってあんたが唆したの?」
「唆したとは人聞きが悪い。露は愛しい男に告白する寸前で命を落としたのじゃ。わらわは可哀そうで見ていられなんだ。しかし、わらわに死者を生き返らせる事は出来ぬ。そこで逆転の発想じゃ」
逆転の発想?
「死者を生き返らせる事が出来ないなら、生者を死なせればよいのじゃ」
あのなあ……
「だから、ホワイトデーの日に荻原新の命を断ち、愛しい露と黄泉の国で添い遂げさせるのじゃあ!」
ポカ!
樒は問答無用で、ドヤ顔をしている幼女の頭を叩いた。
「痛い! お……おまえ生身の人間のクセに、霊体であるわらわを殴れるのか?」
「私はちょっと霊格が高いからできるのよ。そんな事より、生きている人間を殺して霊界へ連れて行くですって? それって、死神がやっちゃいけない事でしょ」
「何を言う。所詮規則なんて破られるためにあるのじゃ」
「そりゃあ、多少の規則破りは私もやったけど……」
多少なのか? 樒の不正請求は……
「あんたが、やろうとしている事は、死神の規則で絶対にやっちゃいけない事のはずよ」
「規則規則と五月蠅い奴じゃな。規則なんかより大切なのは人の心じゃ。おまえには、露が可哀そうだと思う心がないのか? それでも人間か?」
「いや、人間じゃない奴に、言われたくないのだけど……」
しかし、飯島露が可哀そうだというのは分かるが……
「ちょっと待ってくれ。ハーちゃん」
「なんじゃ?」
幼女は僕の方を向いた。
「飯島露さんが、可哀そうだというのは分かる。でも、荻原君の気持ちはどうなるの?」
「何を言っている。新も露を好いておるぞ。好きな女子に死なれて、不憫でならぬ。だから、黄泉で添い遂げさせてやるのじゃ」
「だから、黄泉でも霊界でもいいけど、荻原君はそこへ行く事に同意していないよ」
「何を言っておる。新は同意したぞ。なあ露」
「うん。荻原君は一緒に逝ってくれるって言ったし」
「だから、それは告知義務違反です」
「え? こくちぎむ? なにそれ?」
そこから説明しなきゃならないのか……
「ええい! さっきから規則だの義務だの五月蠅いぞ! この人間ども!」
あ! 幼女が切れた。
「わらわは、規則とか義務とか、人の自由を縛るものが大嫌いじゃ」
ポカ!
「痛い! おまえ! また、わらわを殴ったな。母上にだって殴られた事ないのに」
幼女は涙目で、樒を睨む。
「殴って何が悪いのよ」
「児童虐待じゃ」
「なにが児童よ。ロリババアのくせに」
「ロリババア言うな!」
「そもそも、あんた人間じゃないでしょ」
「ふん! 如何にもわらわは人間ではない。わらわは魔神……いやいや、死神じゃ。その死神を怒らせおったな」
ん? 今、こいつ魔神って言いかけなかったか?
「怒らせたからどうだって言うのよ? 神罰でも下すの? あんたみたいな低級神の神罰なんて怖くないわよ」
「ほざいたな。今、言った事を後悔させてやるぞよ」
突然、幼女の身体が輝き始めた。
何をする気だ?




