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エマニュエル・シリーズ設定資料集  作者: 長谷川
◆種族・民族・国家
9/17

種族①──天界・魔界・人界

 この頁ではエマニュエルに存在する種族について、三界ごとに分類し解説する。

【天界】


◆神

 神鳥ネスの涙から生まれたとされる存在。世界の始まりには《白きもの》と《黒きもの》の二神しか存在しなかったが、やがて《始まりの二柱》の間に《母なるイマ》が生まれ、二柱とイマの間に二十二大神が生まれた。

 さらに世界が成長し、様々な現象や概念が生まれるにつれ、それらを象徴する神々が誕生。これらの神々はのちにアヴォテハ神族とイーテ神族に分かれることになるが、その詳細は「神々・宗教・神刻」の項で解説する。

 本来エマニュエルの神々は両性具有の存在であり、性別は存在しない。が、のちの世の人々がそれを偶像化するにあたり仮の性別が与えられ、同じ神の偶像でも時代や製作者によって男神だったり女神だったりする。

 普段は天界で暮らしているため、人前に姿を現す機会は少ない。しかし神話の時代には、人々の祈りに応えて度々下界へ降りる姿が絵画や逸話に描かれている。

 また神によっては人類に強い興味を持ち、人間に化けて地上をうろつく者もいた。現在はいずれの神も神界戦争で負った傷を癒やし、力を取り戻すべく永い眠りに就いている。

 なお、エマニュエル創世記内には天界から降り注いだ神々の血が海となった描写があるが、海が青いのは神々の血が青色をしているためだという。また《始まりの二柱》に引き裂かれた際、神々は肉体を失い、精神のみの存在となったとする説がある。ゆえに神々は不老不死であり、神を殺せるのは神のみと言われている。


◆天使

 神話の時代、神の御使いとして天界と人界の橋渡し役をしていた存在。見た目は人間に似ているが背中に羽が生えており、頭上には神々に与えられた光の冠(天使の輪)が浮いている。

 元々は徳の高い行いをして神々に認められた人間であり、死後、その魂が天界へ導かれて天使となった。頭の冠は生前の行いを讃える神々からの贈り物。古代の王たちが栄誉ある者に月桂冠を贈ったのは、この天使の輪を真似たためだという。

 天使たちは天使となる際、総じて神の血を飲んでいるため、同じく彼らの血は青い。現在は眠りに就く神々を守護するため天界に留まっており、すべての神が目覚めたとき《夜明けの喇叭(シャルマン・ヨベル)》を吹き鳴らし、人類に《神々の目覚め(エル・シャハル)》の到来を告げるという。


◆精霊

 神々の力や意思を運び、世界の理を運行する存在。目には見えず、個々の意思も持たないが、摂理の運び手として確かに存在している。

 たとえば大地に蒔かれた植物の種が芽を出すのは、精霊たちが地中を循環し、大地神アダマーの恵みを種に届けるためである。また、雨には雨の神タリアの力を運ぶ精霊が、日光には太陽神シェメッシュの力を届ける精霊が宿っていて、いずれも種の生育を促す。もしもエマニュエルに精霊が存在しなければ太陽の力は衰え、雨は降らず、大地は死に絶えてしまうという。

 神術使いたちが『神気(しんき)』と呼ぶ神術の源も、厳密には精霊である。神刻(エンブレム)に宿った精霊は、術者が神術の行使を願うとき、その祈りに応えて神の力を術者へ運ぶ。精霊の介添えがなければ人間が神術を使うことは不可能。優れた神術使いとは、生まれながらにたくさんの精霊を呼び寄せる性質を持った者のことである。


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【魔界】


◆魔物

 魔界に暮らし、人間の肉を食らって生きるものの総称。瘴気に満ちた地の底の世界でも生存することが可能だが、大半の魔物はその代償として知性を持たず、本能のままに人を食らうことしかできない。血の匂いや死臭の他、人間が発する負の感情にも惹かれる性質があり、戦争等で治安が悪化している土地には自然と魔物が集うという。

 胎樹リューリカ(※1)がつける実から生まれ落ちるため、生殖活動を行わない(そもそも生殖器を持たない)。ひと口に魔物と言っても実に多種多様な姿形のものがいて、魔界の生態系は未だ謎に包まれている。ただし地上の動物のような食物連鎖やテリトリーといった概念は存在しないらしく、数が増えると種を超えて群を形成し、大群となって人間の集落を襲うケースが度々目撃されている。

 魔物は常に飢えと渇きに苛まれており、どれだけ人を食らっても満たされない。しかし同族同士で共食いするような事例は確認されておらず、かと言って餓死している姿が目撃されたこともないという。

 さらに魔物には実体を持つものと持たないものがいる。非物質的な魔物は「霊体」と呼ばれ、物理攻撃が通用しない場合が多い(ただし霊体の魔物は実体を持つ魔物に比べて神術に弱い傾向がある)。

 最も手強いのは実体と霊体の中間に当たる半霊体の魔物。彼らは大抵の場合、巨体であったり神術を防ぐ能力を備えていたりするが、死ぬと死骸が瘴気の霧となって消滅する。この霧は有害で、人間が吸い込めばたちまち肺が腐ってしまう。

 魔物の血が黒いのも血液中に瘴気が含まれているため。こちらは肌に付着する程度なら実害はないが、ひどい悪臭を放つため、大量に浴びるとかなり悲惨なことになる。なお作中に登場済みの魔物については別頁で詳しく解説する。


◆魔族

 魔物でありながら知性を兼ね備えた存在。言語を操り、魔術の素養と無知性魔物を統率できる能力を持つ。

 同じ魔族でも下級魔族と上級魔族の二種類が存在し、下級魔族は魔族語は解するものの人語は解さない場合が多い(稀に例外もいる)。使える魔術(※2)も上級魔族に比べて弱く、無知性魔物の引率者としての側面が強い。

 上級魔族は魔族語及び人語を解し、非常に高度で複雑な魔術を操る。魔界との契約を望む人間に魔血を与え、魔人に変えてしまうのもこの上級魔族。魔界で唯一個体ごとの名前を持つが、安易に名乗ることは恥とする独特の文化を持つ。

 これらの上級魔族は『魔王の忠僕(ギニラルイ)』と呼ばれ、魔界には七十二柱の『魔王の忠僕』が存在する。《魔王》とは神界戦争で神々に滅ぼされた魔族の始祖・ガロイのことを指し、『魔王の忠僕』はさしずめ亡き王に仕える魔界の貴族といったところ。『魔王の忠僕』の位は上へ行くほど強く賢い魔族であることを示し、この肩書きを持つ者は血中に含まれる瘴気を自在に操ることができる。また、手傷を負っても人間の肉を喰らえばたちどころに傷が癒える能力を持つ。

 人間の血肉以外にも絶望や憎悪といった負の感情を糧としており、時たま地上に現れては圧倒的な力で人間たちを殺戮する。さらには人間を魔術にかけて弄び、殺し合いをさせて楽しむことも。混沌を好み、いずれは神々に代わってエマニュエルを支配せんと望んでいることから「悪魔」や「鬼」と呼ばれることもある。


◆魔人/魔女

 人間でありながら魔のものに魅入られ、魔界の住人となってしまった者のこと。男は「魔人」、女は「魔女」と呼ばれ、『授血(アブリャート)』(※3)なる儀式を経て不老の肉体と魔術を操る力を得る。負傷しても人間の血肉を喰らえば傷が癒える特性は魔族に同じ。また魔族との契約が完了すると同時に血液は魔血化し、瘴気の中でも生きられる肉体となる。その代償として抑えがたい破壊衝動や食人欲求に駆られるようになり、人間であった頃の理性や人格を失う者が多い。

 魔人の力を得た者は、生来の素質によって特化する能力が違う。その能力に基づき魔人を大別したものを以下のように呼称する。


屍霊使い(カニバル)

 魔人の中で最も能力が低い存在。瘴気を偽魂(ぎこん)に変えて屍へ宿し、屍人(しびと)(※4)として操る力を持つ。非常に強い食人欲求を有し、生きている限り人間を喰らい続ける。屍霊使いが操る屍人に骸骨(スケルトン)が多いのは獲物の骨以外、すべての肉をたいらげてしまうため。使える魔術は偽魂の生成と瘴気の錬成のみ。


吸血鬼(ヴァンパイア)

 屍霊使いの上位互換。人間の肉ではなく血を啜ることで生存する魔人。吸血鬼に血を吸われた者は屍人となり、吸血鬼に隷属する存在へと成り果てる。攻撃的な魔術に秀でる一方で、呪術に関しては下級・中級止まり。魔族並の戦闘能力を誇るため、常人ではまず歯が立たない。


殺戮者(ブッチャー)

 魔術・呪術方面の能力が著しく低い代わりに、驚異的な身体能力を得た魔人のこと。人間離れした戦闘能力と頑丈さを誇り、聖術(※5)を用いずに滅ぼすことはほぼ不可能。異常なまでの破壊衝動に駆られており、生きている限り破壊と殺戮を繰り返す。人間の恐怖や絶望が動力源。


魔物使い(ウォーロック)

 屍霊使いと同格の魔人。魔人としての能力はさほど優れていないものの、あらゆる魔物を自在に呼び出し操る力を持つ。殺戮者に次ぐ破壊衝動の塊でありながら、呼び寄せた魔物に破壊行動を代行させるため、正体や居場所が発覚しにくい利点を持つ。力を保つために人間の肉を喰らうが、屍霊使いほどの食人欲求は持ち合わせていない。


呪術師(ブードゥー)

 呪術系魔術に特化した魔人。呪いによって人に苦しみを与えることを何よりの喜びとする。魔人の中では最も社会に溶け込みやすく、対価を受け取って人を呪う『呪い屋』として暗躍する者も。ただ人を呪うだけでなく、魔薬・毒薬の知識にも長けている。


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【人界】


◆人間

 エマニュエルの人口のおよそ9割を占める種族。肉体的構造は地球の人間とほとんど変わらない。現在のエマニュエルの支配者であり、四大大陸に無数の国家を形成。エマニュエルに存在する種族の中でも数少ない〝同族同士で争う種族〟と言われている。平均寿命は50年前後。人種や民族の詳細については別頁にて後述する。


◆獣人

 獣の頭に人間の体を持つ種族のこと。ほとんどの獣人は同族のみが暮らす小さな共同体を形成し、ひっそりと生活している。

 『獣化(じゅうか)』と呼ばれる能力で獣の姿に変身できる種族とできない種族があり、前者は人間とも生殖が可能。後者は人間と交わっても子ができない。

 また獣化可能種族は近しい動物と対話できる特性を持ち、狼人(ロボ)族には狼の言葉が、猫人(ケットシー)族には猫の言葉が分かる。他にも種族によって特異な能力を備えているものがおり、それが人間との軋轢や差別を生む原因となっている。寿命はだいたい30年。獣人に分類される種族の詳細については別頁で解説する。


◆半獣人

 人間と獣人の間に生まれた個体のこと。より狭義には獣人の中でも獣化可能な種族と人間が交わって生まれた者のことを指す(獣化不可種族は人間と交わっても子を残せないため)。

 エマニュエルの総人口の0.01%にも満たない稀少な存在で、姿は人間に近いが耳や尻尾など、一部に獣人の特徴が残る。また獣化可能種族を親に持つことから、半獣人も獣の姿を取ることが可能。さらに狐人(フォクシー)の半獣ならば化かしの力、兎人(ラビット)の半獣ならば驚異的な跳躍力、鳥人(ファウル)の半獣なら翼を活かした飛翔能力など、親獣人が持つ特殊能力をも遺伝的に継承している。

 寿命は獣人と同じく30年程度。このため人間に近い見た目でありながら肉体の成長速度は獣人並みで、20歳くらいに見えても実は15、6歳と、外見と実年齢の間に齟齬がある。また上述の特殊能力の他、動物との会話も可能なことから、人間に似て非なるものとして気味悪がられ、差別や迫害の対象となることが多い。

 なお人間と獣人が惹かれ合って結ばれるケースはエマニュエルではごく稀で、大半の半獣人は強姦被害から生まれる。その事実がまた半獣人への差別を助長しており、奴隷制が健在のエレツエル神領国やアマゾーヌ女帝国では半獣人=奴隷と認識され、人権が認められていない。


◆亜人

 人間にも獣人にも属さないものの、人類に近い知性と特徴を備えた種族のこと。大抵の種は人間の上半身に獣の下半身を持つ。獣人のように獣化する能力は持たないが、不老の存在で死ぬまで若い姿を保つ。寿命は種によって様々。なかなか人前に姿を見せない種族が多く、一部の種を除いて人間や獣人との繁殖例は確認されていない。亜人に分類される種族については別頁にて解説する。


◆竜族

 トラモント黄皇国の北辺・竜牙山脈(りゅうがさんみゃく)にのみ棲息する巨大生物。大小4本の角と膜状の翼を持った爬虫類のような見た目で、神話の時代、空を飛ぶ術を持たない人類を憐れんだ自由の神ホフェスが創り出し、人間に下賜したと言われている。

 元は地上と天界を結ぶ山《白き剣峰(ラヴァン・サイフ)》に暮らす白い蜥蜴だったと言われ、その美しさを気に入ったホフェスが翼を与え竜とした。人類や動植物と違い神に創造された生き物であるため、生物の摂理から外れており、ほとんど食事を必要としない(稀にクロス海の(くじら)を狩って食べることがある)。血の色は青。

 鼻の先から尻尾の先端までは成体で12~15mほど。鞍があれば人を乗せて飛ぶことができ、寿命は200~300年。

 額に神の力の結晶である『竜命石(りゅうめいせき)』を持ち、この石の力によって神術を行使することができる。ただし竜命石はその名のとおり竜の命そのものであり、割られると死亡する。竜命石には砕いて飲むと不老長寿を得られるという言い伝えがあり、人間の中にはこれを狙って竜の密猟をもくろむ者もいる。

 本来の質量を無視して人型を取ることができるが、変化しても竜眼、角、尻尾、竜命石はそのまま。交尾は人型で行うものの、出産形態は卵生。

 人の魂の色や匂いを識別することができ、汚染された魂を持つ者には決して近づかない(悪性の強い魂は色が淀み、強烈な悪臭を放つと言われている)。反対に純粋で美しい魂を持つ者に惹かれる傾向があり、パートナーとして認めた者には己が血を分け与える。

 竜の血を飲んだ人間は『竜騎士』と呼ばれ、命と五感、そして感情を竜と共有する。このため竜が死ねば竜騎士は死亡する(逆も同じ)が、竜が生きている限り竜騎士は生き続けるため不老の存在となる。竜や竜騎士が生涯に得られるパートナーはひとりだけ。なお竜は『心話(しんわ)』と呼ばれるテレパシー能力を持ち、竜の姿でいるときはこれによって会話するが、血の契約を結んだパートナーとはどれほど離れていてもこの能力で交信することができる。

 神話の時代には雄竜も雌竜も同等の数がいたというが、現在雄竜は一匹しか生存しておらず、他はすべて雌竜。これは神々が不在の間、人類が竜を悪用することを防ぐための措置であり、万一そのような事態に陥ったときには雌竜たちが雄竜を食い殺すよう定められている。竜が人間の魂を品定めできるのもそのため。

 現存する竜の個体はおよそ100体ほど。彼らは竜の谷(アラニード)と呼ばれる小さな集落に集まり、わずかな人間と共存している。これを『竜父(りゅうふ)』と呼ばれる唯一の雄竜が王として束ね上げており、当代の竜父が死ぬと孵化していない竜卵から必ずオスの個体が生まれる。竜父の生みの親となった雌竜は『竜母(りゅうぼ)』と呼ばれ、竜父に次ぐ権威を持つ存在となる。

 なお竜の谷では人間と竜が交わることが禁忌とされ、この禁忌を犯した者は例外なく追放される。何故なら人間と肉体関係を持つと、竜は竜命石を失い定命の人間となってしまうためである。

 有名な例として、トラモント黄皇国の祖である竜騎士フラヴィオは黄皇国建国後、初代黄帝の座に就くと騎竜オリアナと交わり子を成した。このためオリアナは竜としての姿と力を失い、晩年は人間としてフラヴィオを支え続けたという。

 現在のトラモント黄皇国ではこれが美談として語り継がれているが、竜の谷での評価は真逆。フラヴィオの存在は「竜父の命令に背いて谷を飛び出したあげく、竜を人に堕とした咎人」として悪しざまに語り継がれている。

(※1)

 胎樹リューリカとは、魔物たちの始祖たる《魔王(ガロイ)》が天樹エッツァードの枝を手折り、挿し木して生み出したもの。魔界に植えられたエッツァードの枝は瘴気に汚染されて歪み、葉は枯れ落ちて、無尽蔵に魔物を生み出す邪樹と化した。

 現在、リューリカは魔界の天井(=人界の地面)から逆さに生え、地中に悪しき根を張り巡らせていると言われる。その根が人類の生み出す負の感情や争いで流れた血を吸収し、胎樹の実を育てる養分にしていると考えられている。

 逆さに生えたリューリカは『胎盤(プラセンタ)』と呼ばれる巨大な肉壁の中に埋もれる形で支えられており、胎盤に開いた穴の中に透明な膜が張った実をつける。膜の中は瘴気を帯びた培養液に満たされ、魔物は成体になるまでその中で過ごしたのち、実が熟すと膜を破って生まれ落ちる。リューリカの麓は魔族たちの間で《母なる大地(ゼムリャ=マトカ)》と呼ばれ、魔界の聖域として固く守られているという。


(※2)

 魔術とは魔族が魔力によって行使する人外の力のこと。中でも呪いの力に特化したものを「呪術」と呼ぶ。上級魔族が使う魔術はほとんど万能の力と言ってよく、血中の瘴気を固形化して武器としたり、人間から自我を奪って自在に操ったりすることができる。一方、人間たちは魔族が用いる術以外にも、神々の恩恵によらない力(神術以外の未知なる力)をも「魔術」と呼んで忌避する傾向がある。

 エマニュエルには神刻(エンブレム)を刻むことなく精霊を操ったり、妖術を用いて人の病や怪我を癒やしたりする者が存在するが、彼らは魔族と契っていないにもかかわらず魔人や魔女と同一視され、厳しい迫害に晒されることが多い。ルミジャフタ郷の巫女ナワリやアビエス連合国に隠れ里を持つ口寄せの民、ゲヴァルト族の秘宝を管理する咒医(メディウム)、倭王国の巫術師(ふじゅつし)などが妖術師として特に有名。


(※3)

 授血(アブリャート)とは、魔族が人間を魔人(魔女)へと変える儀式のこと。魔界との契約を望む者はこの儀式の中で魔族の血を授かり、それを飲むことで魔人へと変異する。

 ただし人間の肉体は通常、魔族の血を拒絶するようにつくられており、人間から魔人へと変化する過程には想像を絶する苦痛が伴う。中には肉体が魔人のそれへとつくり変わる前に力尽きてしまう者も多く、魔界と契約を結ぶ行為は文字どおり命懸けとなる。しかし魔人となったあとの魔術の恩恵や、不老の肉体を手に入れられるという魅力に負けて、今なお魔人になることを望む者があとを絶たない。


(※4)

 屍人(しびと)とは、人間の亡骸が魔物化したもの。屍人が生まれる過程は様々だがいずれも魔の力によるものであり、特に魔人の一種である屍霊使い(カニバル)が人の死体に偽魂を込めて傀儡化したものが有名。

 他にも吸血鬼(ヴァンパイア)に血を吸われて死亡した者が魔毒によって屍人化したり、屍霊(ズローヴァ)と呼ばれる霊体魔物が死体に取り憑くことで屍人が生まれる例もある。

 過程は違えど屍人となって甦った者は総じて自我を失い、人間の肉を喰らうだけの魔物と化す。既に死んでいるため肉体が欠損しても痛みを感じることはなく、聖術を用いる、脳を潰す、または燃やす以外にこれを滅する方法はない。

 なお屍人に噛まれると生きた人間も屍人へ変異してしまうと考えられているが、実はこれは誤り。実際には噛まれても命に別状がなければ、生きながら屍人になってしまうことはない。

 ただし死亡した者の近くに魔人や屍霊がいれば、死後即座に肉体が乗っ取られてしまうケースがあるため、このような誤解が広まったと考えられている。


(※5)

 聖術とは、至聖神カドシュの力を宿した術のこと。主に聖刻(ホーリー・エンブレム)から生まれる力がこのように呼ばれ、魔術の対極に存在する聖なる術として広く知られる。聖刻は破魔の力に特化した神刻であり、たとえ高位の『魔王の忠僕(ギニラルイ)』であっても聖術を無効化することはできない。

 さらに神々の血が結晶化した神血石(しんけつせき)にも聖なる力があり、この神血石を用いて作られた聖水も聖術と同等の効力を持つ。また、エマニュエルにおいて銀は魔を退ける聖なる金属であり、純銀製の矢や刃物にも魔を退ける力が宿っている。

 他にも神木(しんぼく)や聖油による篝火など、魔を寄せつけない方法はエマニュエルにいくつか存在し、これらをまとめて広義的に「聖術」と呼ぶこともある。なお聖刻を身に刻み、なおかつ魔物討伐を生業としている者は『退魔師(たいまし)』と呼ばれ、聖職者にも並ぶ信頼と尊敬を集めている。

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