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俺はラブコメがしたいッ!  作者: 珍王まじろ
三年生編・last☆stage前半
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活動×開始

 世の中には“予想外”と言う言葉があるけど、人生を送る上でその予想外は大なり小なり日常的にあるものだと思う。

 そして美月さんが設立した制作研究部へお誘いをされてから4日目の放課後。俺は文化部棟の使われていなかったらしい一室に居て、大きな予想外を目の前にして戸惑っていた。

 いや、正確に言うと戸惑っていたと言うよりは、どうしてこんなことになってるんだ? ――という思いの方が強かったような気がする。

 なぜそんなことを思っているかと言うと、この一室には俺の他に茜、まひろ、るーちゃん、愛紗、妹の杏子が居て、ついでに渡なんかも居たりするからだ。

 そして俺がこうして文化部棟の一室に居る理由だが、それは先日美月さんが設立した制作研究部への誘いを受け入れたからに他ならない。


「……なあ、杏子はともかくとして、なんで君たちはここに居るわけ?」


 8畳ほどの広さの一室に集まりパイプ椅子に座っている面々に対し、俺はその面々をそれぞれ見回しながらそんな言葉を口にした。


「なんでって龍ちゃん、制作研究部に入部したからに決まってるでしょ? おかしなこと言わないでよ」


 さも当然だと言わんばかりに、しかも可哀相な子を見るような表情でそんなことを言う茜。

 コイツ……言ってることの前半は至極まともなのに、最後の最後に毒を吐いてきやがるな。

 いつもどおりと言えばいつもどおりの茜の態度にこめかみをひくつかせながらも、俺はその言葉に対して質問を続ける。


「いや、俺が聞いてるのはそういうことじゃなくてだな、茜とまひろは所属してる部活があるし、るーちゃんと愛紗は家事とかで忙しかったりするだろ? なのになんでこの部活に入ったのかってことを聞いてるんだよ」

「そんなの簡単だよ。部活は掛け持ちもできるし、それに龍ちゃんが制作研究部に入るって美月ちゃんから聞いたからね」

「あ? 部活の掛け持ちができるからはともかくとして、なんで俺が制作研究部に入ることが茜が入部する理由になるんだよ」

「そ、それは……だ、だって龍ちゃんが美月ちゃんに迷惑をかけるかもしれないでしょ!? だから監視の意味も込めて入部したのよ!」

「お前は俺の保護者かよっ!」


 たくっ……誕生日が俺より1日早いからって、どんだけお姉さん風を吹かせてんだよ。


「で、まひろはどうなんだ? 美術部もあるのになんでこの部に入ったんだ?」

「私は美月さんからゲームの背景を描いてもらいたいって頼まれたから、それなら美術部との掛け持ちでも支障はないかなと思ったの」


 にこやかな笑顔を見せながら、これでもかと言うほど納得できる理由を述べるまひろ。どこかのやんちゃな幼馴染にも見習ってほしいもんだ。


「なるほど、納得した」

「ちょ、ちょっと龍ちゃん! 私の時と態度が違い過ぎない!? 差別よ差別!」

「心配すんな、気のせいだから」


 茜とまひろの理由を聞き比べれば、俺の反応がこのようになるのは至極当然のこと。

 だから茜の俺に対する非難の言葉はこの際それに当たらない。


「るーちゃんと愛紗はどうなの? 部活に入って大丈夫なの?」

「わ、私は大丈夫ですよ。由梨にも部活に入るって話をしたら、『頑張ってねお姉ちゃん、家のことは私もちゃんと手伝うから』って言ってくれましたし」

「そっか、そうなんだ。それなら大丈夫そうだな。で、るーちゃんはどうなの?」

「私も特に問題はないよ? 家のことは部活を始めても支障が出ることはないと思うから」

「そうなんだ。じゃあ大丈夫そうだね」


 それぞれの理由を聞いてとりあえず納得した俺は、頭を何度か頷かせた。


「それにしても、美月さんどうしたんだろうな。みんなを待たせたま――」

「ちょーっと待った――――!」


 室内にあるパイプ椅子にそれぞれ腰を下ろし、そんな話をしてから美月さんの話でも始めようかと思って言葉を発している途中、それをぶった切るようにしてこの室内に居るもう1人の人物である渡が高らかに声を上げた。


「あれ? 渡居たの?」

「ひどっ!」

「なんでお前がここに居るんだ? ここはお前の自宅じゃないぞ?」

「相変らずの辛辣しんらつなセリフですこと……俺は如月さんが面白そうな部を設立したって聞いたから見学に来ただけだよ」

「なーんだ、入部したわけじゃなかったんだな。それならいいや」

「どういう意味っ!?」

「気にすんな気にすんな」


 渡には悪いが、渡が入部するとせっかくのハーレム構成が台なしになるからな。

 まあハーレムとは言っても居る面々はよくつるんでいる仲間だけだが、それでも見知らぬ女性に囲まれているよりかは遥かにいい。俺も余計な緊張をしなくて済むし、なによりみんな贔屓目ひいきめを抜きにしても可愛いからな。最後の1年を飾るための部活としては申し分ない構成メンバーと言えるだろう。


「――皆さん、お待たせしてすみません」


 一通り俺が聞きたいことを聞き終わった頃、制作研究部の部長である美月さんが少し息を切らせた状態で部室へと戻って来た。

 今までなにをしていたのかは分からないけど、なにか大事な用事があったのだろうということは想像にかたくない。だから野暮な詮索はしないでおこう。


「お帰り、美月さん。大丈夫?」

「はい、大丈夫です。それより皆さん、集まってもらったのに遅れてすみません」

「大丈夫だよ美月ちゃん。私たちもさっき来たばかりだし、みんなでお話をしながら待ってたから特に時間も気にならなかったよ。ねっ、みんな」

「うん。茜の言うとおりだよ」


 茜の言葉にみんながウンウンと頭を縦に頷かせる。

 すると美月さんはほっと安心したような表情を浮かべてから『ありがとうございます』とお礼を言い、室内にあるホワイトボードの前へと移動してから俺たちの方を向いた。


「それでは皆さん、本日が制作研究部の第1回目の活動になります。色々と大変なことはあると思いますが、部長として精一杯に頑張りますので、よろしくお願いします」


 気合十分の美月さんの挨拶が終わると、室内からは誰ともなく拍手が起こった。

 いったいどんな活動になっていくのか不安もあるけど、みんなで楽しい思い出を残せればいいなと切に思う。

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