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一人で
自分一人で生きていけるはずがなかった
一人ではなにもできなかった
生きることすらできなかった
途方に暮れるのは容易かった
一人で歩く夜道は心を黒へと染めていく
不安も怖さも拭えないままで
歩いては走ってを繰り返した
振り返ることはできなかった
自分で自分の首を絞めるような真似だけ
それだけは容易くできるのに
他のことはできるはずもない
神様もとうに見放したはずだ
自分一人で生きていける世界だったなら
なにを知ることもなかったと
心というものも知らないまま
生きていくことになるだろう




