455/479
秋の夜
茜色に染まっていく団地を窓から眺めて
次々と灯っていく街灯のどこか寂しい明かりに
夜の訪れを感じながら風は髪をなびかせていく
見てきた景色が違えばなにもかも違って
あの短い日々で綴った物語の行く末は知らない
完結することもできなかった思い出と共にして
優しく、やわらかな世界であったならば
今のこの苦しみも、だからこその気付きもない
一生に一度の出会いに感謝しながら生きていく
藍色に染まっていく夜空を窓から眺めて
煌々と光る無機質な街灯に吸い寄せられていく
虫と同列に並んだ人間でありたいとふと思った




