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夏過ぎし
あなたの居ない夏を過ごす
冷えた部屋に寝転がりながら
白い天井に手の平をかざした
何処かでいい夢を見ているだろうか
言葉も声も願いも届いてはくれない
不思議な夢を見ていた
もらった手紙を数年も放置し
それを開いた夢
思い出が滝のように降り注ぎ
幻でなかったことを表していた
あなたの居ない夏はどうも
静かに過ぎ去っていきそうだ
これから冬がまた顔を出して
あなたの夢に現れる日も近かいかも
言葉も声も願いもあの日のままかも
不思議な出会いであった
もらった優しさを返すことも
それを渡すこと
それらは想い出のまま仕舞い
幻のようにおぼろげに光るのだ




