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修学旅行!⑧

修学旅行二日目。俺は昨日に引き続き、信道と共に京都観光を続けている。




「金閣寺も人多かったな恭二!」

「あぁ」




時刻は正午を少し過ぎた頃である。俺は歩きつつ、信道に問い詰めた。




「で、そろそろ教えろよ。ここまで来た理由」

「だから、気になるラーメン屋があるって言ったろ?」




信道は明らかに何かを隠している顔でそう返した。ちなみに今、俺たちがいるのは京都駅だ。晴れ空の下、駅前は外国人観光客で賑わっている。




「いや、それが怪しいんだよ。お前わざわざ店を調べて行くタイプじゃねぇだろ」

「修学旅行だから気合い入れてんだっつの」



駅前の人混みを進んでいく信道の背中を追いかけつつ俺は、



「おい、いい加減白状しろっての」




こいつ、にやにやしやがって腹立つな。どうせ他クラスの女子と、待ち合わせとかその辺なんだろうがどうせ……。




「信道くんー!」




背後から聞こえる女子の声。ほら、予想した通り。




「ハルさーん!」




信道が踵を返し、嬉しそうな顔をして返事をしている。ハル……? ハル……ってなんだっけ。俺は急いで声の方へと振り返る。




「あ、恭二君だ」

「え……」




私服姿の可愛いらしい、女の子がそこにはいた。誰だろうか、俺の名前を呼んでいる。




「えっと……」

「おいおい! 忘れてんだろ恭二、俺の彼女のハルさんだよ」

「あー」




そっか、思い出した。文化祭の時に紹介してもらったなそういや……。なるほど、だから京都駅か……。俺は恐る恐る、




「お久しぶりです。えっと……わざわざ東京から、来たんですか?」




俺の率直な質問にハルさんは苦笑しながら、




「そうなんです。信道君が昨日の夜、急に電話してきて、会いたいーって」

「その……お仕事は良いんですか?」

「うん、たまたま休みだったから。それに丁度旅行とか行きたいなーって思ってたし」




そう言ってハルさんは微笑む。ピンクの可愛いコートワンピに黒の短靴とタイツの格好は、やはりフォロワーだけあって圭と系統が似ている。そのロングヘアにも圭が使いそうなリボン柄のヘアピンを付けていてお似合いだ。俺を驚かして、満足そうな顔をした信道が、




「それで、京都駅って事よ恭二!」

「だろうな」

「驚いたか?」

「まぁ……」




俺の反応に、信道はハルさんの方を見て笑った。




「それじゃあ、ラーメン食い行くか恭二! この駅ビルの10階にあるみたいだし!」

「結局ラーメンかよ」

「ほら、嘘はついてないだろ?」

「はいはい」

「ふふ……仲良いね二人とも」




ハルさんが俺と信道のやり取りに笑っている中、俺たちはビルの中へと入る。人混みを抜けて進んでいく中、ハルさんが横から、




「恭二君は昨日も信道君と一緒だったの?」

「そうですね。昨日は清水寺に行ってました」

「へえ」

「んで、その後に恭二のお姉ちゃんと飯食ったんだよな!」

「あぁ」




すると、ハルさんはやや驚いた様子で、




「へぇ……恭二君のお姉ちゃん京都に住んでるの?」

「はい。なんか気付いたら」

「気付いたら? ふふ面白いね恭二くん」




そんな話をしながら、俺たちはエレベーターに乗り込んで10階へと移動する。




「そういえば二人は高校で出会ったの?」




何気ないハルさんの質問に信道が、




「そうっすね。高一で同じクラスになってそっからっす」




なんだこいつ、彼女に敬語なのかよ。




「へぇ、じゃあ二人の出会いはどうだったの?」




と、そう言ってハルさんは俺の方を見つめてくる。




「いやぁ……」




どうだっけか……。正直なんも思い出せない。入学して気がついた時にはもうこんな関係性だったからな、信道の方は覚えてるのかも知れないが。




「んー? どうだったっけ恭二」




どうやら期待するだけ無駄だった。信道も記憶が曖昧なようだ。そして俺たちは曖昧な記憶を辿れないまま、エレベーターを降りて10階へときてしまう。すると、ハルさんはやや不満そうな顔をして、




「えー覚えてるでしょ普通」

「いや、なんか恭二とは気付いたらこんな関係だったんで全然記憶がないんすよ。なぁ恭二?」

「マジでそうです」

「なにそれ。変わってるね二人とも、ふふ」




その長く綺麗な髪の毛を振るいながらハルさんは笑った。いやマジで覚えてねぇんだよな……。信道の顔を見る限りあいつも同じ雰囲気だし。けどまぁ、男同士ってそんなもんだよな……気が付いたら一緒にいたみたいな。すると信道は話をはぐらかそうと言わんばかりに、




「まぁまぁハルさん、そんな事は置いといてラーメンどうします? めっちゃいっぱいありますよほら!」




と、目の前に立ち並ぶ様々なラーメン屋を示す。どうやらここは色んなラーメン屋が集まっているフロアのようだ。テンションの上がっている信道にハルさんは苦笑いを浮かべつつ、




「二人の行きたい所で良いよ私は」




ハルさんの言葉を聞いて、信道は待ちきれないような素振りで俺の方を見た。




「ほらどうするよ恭二! どこにすんだよ!」

「いや……俺もどこでも良い。お前が好きな店選べよ」

「マジで!? よっしゃ! じゃあーー」

「どうせ、あの店だろ?」




と、俺は先んじて信道が選びそうな豚骨ラーメンの店を指した。その瞬間、信道は驚いたように俺を見つめて、




「は? よく分かったな恭二! 凄っ」

「豚骨好きだなお前、相変わらず……」

「えー、さすが親友なだけあるね恭二君。私、分かんなかったし」




ハルさんがやや驚いたような顔をしている。ハルさんは更に続けて、




「じゃあさ、逆に信道君は恭二君の選ぶ店は当てれるの?」




そう言われた信道は少し自信なさげに、


  



「いやぁどうすっかね……何となくは分かるっすけど、当てれるかは……」




信道の反応にハルさんは何故か嬉しそうにしている。




「じゃあ恭二君さ、自分が選ぶ店を内緒で私に教えて。信道君のクイズにするから」

「ちょ、ハルさんむずいっすよーそれ。いくら親友でも」

「ふふふ」




信道は少し頭を抱えているが、もう既に考えている様子だ。俺は壁にあるフロアガイドを見る。ラーメンか、正直どれも美味そうだからどこでも良いのだが、まあ強いて言うならあそこか。俺はそっと店名をハルさんに耳打ちした。するとハルさんは微笑みながら、




「はい、じゃあ信道君決まった?」

「ええっと……」




信道は頭を掻きつつ少しだけ考え込んだ後、




「あの奥の味噌ラーメン屋っすか……? 恭二、味噌ラーメン好きだし……」




お。その回答にハルさんは嬉しそうに、




「え、正解! やるじゃん信道君! びっくりした」



ハルさんは口元で小さく拍手をして見せる。その反応を見た信道は少し安堵したような様子で、




「良かった……。いやなんとなく恭二は迷ったらいつも味噌味を選ぶ記憶があったんで……」

「味噌、美味いだろ」

「俺はあんまりなんだよなー味噌は」

「すご〜い二人とも。ちゃんと親友してる」




そんな話をしつつ俺たちは、信道の選んだラーメン屋へと向かった。そして信道は財布を取り出して、




「ハルさん好きなの選んで良いっすよ」

「ううん、大丈夫。むしろクイズ当てたから、二人ともご馳走してあげる」



と、そう言ってハルさんは入り口横の券売機に5000円を入れた。俺はすかさず、




「信道は良いとして、俺は全然大丈夫ですよ」

「ううん普段、信道君と仲良くしてくれてるし、そのお礼もあるから」

「……良いのか信道?」



俺は信道の方を見る。すると信道もどうすれば良いのか分からない様子で、




「ま、まあハルさんがそう言うなら……」




そして俺たち3人は食券を買い、店内へと入った。店内に入るとほんのり豚骨の匂いが感じられる。結構本格的なタイプだ。店員にテーブル席へと通された俺たちは席につく。




「ん?」




携帯が震えている。取り出して画面を確認すると、それは菜月からだった。こんな昼から電話なんて珍しいな。そもそも学校のはずだし、何のようだろう。




「どうした恭二?」

「いや別に」




まぁ、もう店の中にも入ってしまったし、食った後に折り返すか。

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