くるみと、クラシックと、ピアノ
幼馴染の譲羽紗雪は、なぜか俺の飼い犬に張り合おうとしてくる。
「犬飼君、犬飼君」
「なに?」
「昨日のツブヤイターのことですが、くるみちゃんがクラシック好きなのって本当です?」
学校。休み時間に紗雪から声をかけられて考える。あー、そんな投稿したなぁ。
「本当だよ。遊んだあと興奮してても、静かなクラシックかけたら気持ちよく寝はじめる」
「それ、好きってことなんでしょうか……?」
まあ、確かに眠気を誘われる曲ってだけかもしれないが、気持ちよく眠れる曲っていうのは安心できる曲でもある。それだけ耳に馴染むんだろう。犬がクラシックで寝るっていうのも、面白いもんだが。
「あの、今度試してみてもいいですか?」
「試す? なにを?」
「私がピアノを弾いてみせるので、本当に寝るかどうか……とか」
「ピアノ弾けるの!?」
「しょ、少々ですけど……」
紗雪は照れたように顔を覆っている。いや、すごいことじゃん。
「料理もできるし、ピアノもって……お嬢様っぽいな」
「そんなんじゃないですよ、もう……」
「あれ、じゃあコンクールとかにも出たりするの? 今までそういうのしてるの見たことないけど」
「そこまで上手じゃありませんから……で、でも、応援してくれるなら……目指してみようかな……?」
「おーおー、目指すなら応援するよ。そんで晴れ舞台のときは紗雪のすごいところを見に行く!」
「へ、わ、私を? ピアノの演奏を聞きに行くんじゃなくて……? 私を……? そ、そうですか……そっか……頑張ってみようかな」
意図して言ったわけではなかったが、紗雪はますます照れてしまった。
「ところでさっきまでなんの話してたんだっけ?」
「くるみちゃんがクラシック好きなことですよ。私と同じですね。私と、同じ、ですね!」
「あ、あー、そうだな」
好きなもので張り合うんじゃないよ……。




