軽口と、気まずい会食(?)
幼馴染の譲羽紗雪は、なぜか俺の飼い犬に張り合おうとしてくる。
「犬飼君、今度はなにか食べ物で夏を感じようと思うのですが、なにがいいと思います? 企画立てますので」
「食べ物? 夏の? あー……」
「もちろん、あれですよね!」
「あれ?」
夏、といえば……ワクワクとした紗雪に促されて同時に口にする。
「バーベキューですね!」
「流しそうめ……え、まさかの?」
あとはスイカ割りとか。
「紗雪……お前陽キャの民だったのか……? 見損なったぞ」
「どこをどうしたら見損なうのか分かりませんけど、犬飼君陽キャラのこと馬鹿にしてません? 私達も世間一般では『リア充』とひとまとめにされて嫌煙される人種ですよ」
「こいつ、自分のことも容赦なくdisりやがる……クールすぎやしないか?」
「犬飼君よりはよほどクールビューティです」
「ビューティまでは言ってないんだよなぁ」
「褒めないでください。照れちゃいます」
「褒めてもないんだよなぁ」
そんなやりとりを続けていたら、両者の父親がものすごく微妙そうな顔をした。冒頭で紗雪が企画を立てるとか云々言っていたが、実はというとこの会話は双方の両親が揃ったご挨拶代わりの会食で行われている。
俺達はいつものノリで軽口を叩きながら食事していたわけだが、まあどう考えても気まずいよな……両親が。しかも結構いいお値段のするところでの食事会である。
食事しながらバーベキューがどうのと言える紗雪の気がしれない。というより、ちょっとお洒落な店でこんな日常会話をしていること自体ナンセンスだ。俺達は両親にマジかよみたいな目を向けられながら、そっと目を逸らした。
「でも最近はバーベキューも世間様の目がありますし、できる場所は限られているのでしっかり計画を立てておかないと……」
「人に意見を求めておいてすでに決定済みってどういうことだよ」
「意見は意見ですし……」
「どんだけ肉食いたいんだよ。お前今シャレオツな飯食ったばっかりじゃん」
「足りませんし……」
「店で堂々とそんなことを言うなよ。あ、紗雪のオトウサン、別に追加で頼まなくてもいいですって」
「犬飼君! まだお義父さんと呼ぶのは早いです……!」
「そう言う問題じゃなくね……?」
どこだろうと、俺達は俺達なのであった。
黙ってれば美人なのにな……どうしてこんなに残念なんだろう。
そうして、微妙な雰囲気を纏ったまま会食はしめやかに解散したのだった。
将来を見据えた顔合わせみたいな雰囲気だったのに、いろいろと台無しである。




