夏休みと、課題と、デスマーチ
幼馴染の譲羽紗雪は、なぜか俺の飼い犬に張り合おうとしてくる。
カラン、とグラスの中の氷が音を立てる。
じーわ、じーわとうるさいセミの声が室内にまで入り込んでくる。
ただ、こうして雑音があるほうが集中力は続いていくものである。あまりにも静かだと、かえって小さな物音が気になって心乱されてしまったりするから。
チリーン、と遠くで風鈴の音がする。
「紗雪、氷追加しようか?」
「ま、まだ大丈夫です……せめてこのページが終わってから」
現在俺達はそろって夏休みの課題を片付けているところだった。
二人で課題をやるのももはや当たり前になっていることだ。いつものこと。
「早めに課題終わらせて、いっぱい遊びに行くんですから!! 今日中に全部終わらせますよ! あ、私泊まりますので!」
「ってことは、徹夜なんでしょ……」
「なに当たり前のことを言ってるんですか」
「だよね」
今夜はデスマーチ決定である。
「ぬぁーっ! このページは終わりました。くるみちゃんニウムを補給してきます!!」
「おー、いってら」
くるみちゃんニウムってなんだよ。くるみはなにかの成分かなにかか?
紗雪はわーっと言いながら、冷たいクッションでくつろいでいるくるみに覆い被さりに行く。くるみはくるみで、そんな彼女を若干迷惑そうにしながらもお腹を見せてあげるというサービス精神を発揮している。
「はわ〜」
お腹のもふもふに顔を埋めてくつろぐ二人。正直ちょっと暑そうだ。ただ、両方楽しそうなのでまあいいかな。俺は俺で、そんな二人を見て精神的に少し癒されるし。
「五分経ったよ」
「うっ、もう五分ですか」
紗雪は渋々とテーブルのほうに戻ってくる。一度の休憩でくるみに構うのは五分と事前に決めてあったからだ。俺達二人とも、くるみに吸い込まれたら戻って来られなくなっちゃうからな……。
「ぷぴー」
紗雪が離れたからか、俺達がずっと構いっぱなしにできないからか? くるみは音の鳴るおもちゃをぷぴぷぴと鳴らしながら遊んでいる。
そして、やがてはゆるやかに寝始めてしまった。おやすみ。
「お昼はそうめんだって」
「あー、冷たくていいですねぇ」
多分課題のデスマーチ本番は夜中である。
今から備えるために、俺達はおしゃべりしながらシャーペンをノートの上で滑らせていくのだった。




