ドッグプールと、これからの予定と、水びたし
幼馴染の譲羽紗雪は、なぜか俺の飼い犬に張り合おうとしてくる。
「むー……くるみちゃん、泳ぐの上手ですねぇ」
ドッグプールへ遊びに行く当日。
俺達は二人してプールサイドのチェアに腰掛けていた。
今も浅いプールの中で、くるみが短い足を一生懸命に犬かきしながら泳いでいる。プールの上に浮かせているゴムのおもちゃを追いかけているのだ。
くるみが溺れてしまわないよう、必ずどちらか一人は無事に泳いで遊んでいるか見守っている。よって、ペットボトルの水を飲んだり、トイレに席を外すときなんかは片方に任せている形になる。
くるみのことを大好きでいてくれる紗雪だからこそ、任せられることだ。他の人が相手なら、きっと怖くてくるみから目が離せなくなってしまうと思う。あと、別の意味で怖いからくるみと他人を二人だけの空間にいさせたくない。水場という危ない場所だし。信頼している紗雪だからこそ、だ。
なお、ここのドッグプールではミネラルウォーター意外の飲食は禁止されているので、水分補給は水だけだ。それはくるみのほうも同様。腹ごしらえをするなら、遊び終わってからでないといけない。
だから、くるみがプールの中にバッシャーン! と飛び込んでみたり、プールサイドで走り回って遊んでみたり、色々と楽しんでいる間はただひたすら見守るのみである。
「本当に水着を下に着てきたんだな……」
「見たかったでしょう?」
「それはまあ、うん。そうだけど」
目のやり場に困るんだよなあ……。
あくまでドッグプールなので、水に入るかどうかは人間側の自己責任となる。普通なら犬が泳いでいる水には入らない。というか、入っちゃダメだ。
だから本当に水着を着てきて雰囲気を楽しんでいるだけである。
「今度、課題が片付いたら一緒にプールでも行きましょうか」
「海とかは?」
「海もいいですね!」
「川釣りとかもあるぞ」
「夏ですからねぇ……いっぱいやれることはありますね。あ、私蛍を見てみたいです!」
「今どきいるかなぁ……相当田舎のほう行かないとダメじゃない?」
「それなら、そのときは一緒に旅行ですね?」
「お、おう……」
こいつ、意外と大胆にぐいぐい来るよな……。
「分かった。じゃ、約束」
「もちろん!」
「あ、くるみ。もういいのかー?」
小指を絡めて約束したところでくるみが走り寄ってきた。
濡れたままなのでいつもよりも毛のボリュームが減って細身に見える。決して太っているわけではないが、やっぱり毛がある分膨らむからな。
「くるみちゃー……うひゃあ!?」
ぼーっとしながらテーブルに肘をついて考えていると、笑顔で撫でに行こうとした紗雪が、くるみの身震いに巻き込まれてずぶ濡れになっていた。
「人間用のタオルも持ってきてよかったな」
「そ、そうですね……うう……くるみちゃん……」
「あとでくるみにドライヤーかけてみる?」
「やります!」
本当、すっかり仲良くなったよなあ。
そんな暑い夏の日の出来事。




