学校と、お昼と、焦げたクッキー
幼馴染の譲羽紗雪は、なぜか俺の飼い犬に張り合おうとしてくる。
「犬飼君、今週もお弁当持ってきましたよ!」
俺達が付き合う前からときおり、こうして紗雪は昼の弁当を持ってくる。飼い犬のくるみを俺の彼女だと勘違いしていた頃から始まった習慣だったが、今でも続いているのだ。
だが、今日は俺も少しだけ前進している。なぜなら! 紗雪のためにクッキーを焼いてきたからだ。
「ありがとう。今日は俺もクッキー焼いてみたんだ。食べてくれるか?」
「えっ、もうクッキーを焼けるようになったんですか! この前まで野菜を切るのすら不安になるような感じでしたのに!」
「うっ、その話はやめてくれ。学校で暴露されるのはちょっと辛い」
俺が落ち込みつつそう言うと、近くの席にいる友人達が「実習の時点でそれは知ってるから自由に話してて問題なし!」と野次を入れてくる。やめろってば。
「ちょっと焦げてるかもしれないけど……」
「構いませんよ! だって犬飼君がせっかく挑戦したお菓子ですからね。私にはそれだけでじゅーぶんです。あ、これはチョコレート味ですか? それともココア?」
「あ、待って。それ本当に焦げてるから。俺が焼いたのはプレーンだけのはず……」
「………………」
紗雪は目をきゅっと閉じて渋い顔をしている。
食べてしまった。制止するのが遅れたからだ。
「……ごめん」
「だいじょうぶれす……美味しいです……」
「無理しなくていいから」
「まずいです」
「うん、本当ごめん」
正直に言われるのも、それはそれでちょっと落ち込むのだった。
次はもう少し上手くできますように……。




