お泊まり会後で、体育と、言い合い
幼馴染の譲羽紗雪は、なぜか俺の飼い犬に張り合おうとしてくる。
お泊まり会も何事もなく終わり、学校での出来事。
「いったた……」
体育のとき、少しドジってスライディングを失敗したのだ。
ジャージだったため多少は大丈夫だが、ズボンの上からでも思い切り擦ったため、膝に擦り傷ができている。地味に痛いやつだ。
「絆創膏あったかな……」
いや、持っていない。さすがにそこまで用意周到ではないんだよなあ。
「い、犬飼君!? 怪我したんですか!」
おっとこのパターンは。
「なあ紗雪、絆創膏持ってない?」
「へ? え、ええと……」
あ、この顔は「今は持ってないけど別のところにはある」って感じだ。
「き、傷! 傷をまず見せてください! ちゃんと洗わなきゃ!」
「いや、ズボン越しに擦っただけだから」
「それでもです!」
「へーい」
「先生! ちょっと抜けますね!」
ただの個人練習中だったからいいものの、これが練習試合とかだと思い切り迷惑かけたことになるんだよなあ。ま、ただの練習でスライディングとかしようとして俺が悪いか。
他のクラスメイトや友人達の「過保護だな」っていう生暖かい視線を感じながら、水道まで移動していく。悪い。本当にごめん。変に惚気てるみたいでマジで申し訳ない。
「傷口を洗って…………」
じゃーと水道の蛇口から水が流れていく。
紗雪はその水の流れには目を向けず、俺の膝小僧を見つめてくる。やめろ、本当やめろ。くだらねぇことで怪我してるのがめちゃくちゃ恥ずかしくなっちゃうだろ!!
「紗雪?」
すっと紗雪の顔が俺の腹より下へ近づけられ……。
「なっ……!!」
一瞬変な想像が脳裏をよぎったが、それをぶんぶんと頭を振るって追い出す。
紗雪のショートの髪が俺の足をくすぐった。そして、膝に少しあたたかくて柔らかい感触。
「おまっ! こらっ! なにしてるんだ! やめなさい!!」
「えっ、そんな風に怒ります!? 子供叱る感じで怒ります!? そこはきゃー! 紗雪のえっちー! じゃなくてですか!?」
「おま、お前ぇ! そう言うってことはちょっと意識してたのかよ!! やめろよそういうの!! 学校だぞバカッ!!! ばっちいから傷口を舐めるんじゃありません!!!」
「くるみちゃんはいつも犬飼君のことペロペロしてるじゃないですか!」
「犬と張り合うなおバカ!!」
「馬鹿じゃないもん!!」
「おバカだよ!! これ以上なく!! めっ!!!」
「また子供にするみたいに叱るぅ〜!! それ嫌です!!」
「くるみへの対応すると一緒だ! ほらっ、紗雪! めっ!!!」
「ご、ごめんなさぁい……」
怒涛の勢いで言い合いをした俺達は、その後気まずい間柄になって体育の授業に戻るのだった。




