いつもの散歩と、クレープと、運動
幼馴染の譲羽紗雪は、なぜか俺の飼い犬に張り合おうとしてくる。そして、現在は俺の家にお泊まり会中である。
「よかったのか? 『一緒に遊ぶ』の内容がくるみとの散歩で」
隣を歩いている紗雪に尋ねる。今、くるみのリードを持っているのは俺のほうなので、彼女は空いた手でクレープを二つ持ち、片方を器用に食べているところだった。
「いいんですよ! だって、くるみちゃんがいないと張り合いないですし!」
「なんでそう……張り合いたがるんだよ」
「んー……」
紗雪はちょっと考えるようにしてから、クレープをかじる。もぐもぐと食べている時間、なにやら神妙な顔で考え込んでいるので、なにか地雷でも踏んだかとちょっと焦りを覚えた。
「別に真剣に答えなくてもいいんだからな?」
俺の言葉に、紗雪は首を横に振った。それからうんうんうなって、ようやく言葉にできたのか、口を開く。
「なんで言えばいいんでしょうね。くるみちゃんと……犬飼君の魅力を分かち合いたい? ……とか、もしくは……教え合いたい? とか……そんな感じかもしれません」
「俺を共有財産みたいに言うなよな……まったく。別にいいけど」
「あ、そこはいいんですね」
たはは、と苦笑した彼女は頬にクレープのクリームを少しだけつけたまま、笑顔でこちらを見る。
「だってほら、私達二人とも君のことが大好きなんですからね!!」
「うぉん!!」
タイミングよくくるみも鳴き声をあげて、紗雪はくるみに向かって「ねー?」と首を傾げる。まったく、すっかり仲良くなっちゃってさ。
「イインチョ、ほっぺにクリームつけて言ってると子供っぽいよ」
「ちょっ、委員長呼びはやめてくださいよ! 別に毎回委員長なわけでもな……ほっぺ!? どっちにですか!?」
「右」
「ちょっ、待っ、あのあの、クレープ。君の分のクレープ持ったままだと辛いです!!」
「んじゃ、リード持つの交代ね」
「ふぁい!」
先に俺の分のクレープを受け取り、それからくるみのリードを渡す。くるみは別にぐいぐい引っ張って行くような子でもないので、紗雪はやっと落ち着いて頬をティッシュで拭い始めた。
「はー、子供ですね……私」
「今更じゃん」
「否定くらいしてくださいよ!!」
「それよりさ」
クレープをかじる。甘い。
「せっかく散歩で長距離歩いてても、途中で買い食いばっかりしてるから運動になってないんじゃない?」
「なっ!? だ、だだだ誰が太ったって言うんですか!!」
「……太ったなんて一言も言ってないのに」
「そういうことじゃないですか!! 犬飼君はデリカシーってものがありません!! もう!! ほとんど同じものを食べてるのにどうして君は太らないんですか!? 私のお肉を分けてあげたいです!!」
病的に痩せているよりは、少しくらいぽよっとしてるほうが可愛い……と思うんだけどなあ。そんなことを思ってしまったが、さすがにそれは口に出さずに「はいはい、できるならね」と軽口を返すのみに留めるのだった。




