説得と、お昼ご飯と、父さん
幼馴染の譲羽紗雪は、なぜか俺の飼い犬に張り合おうとしてくる。
そして、現在は飼い犬のくるみと結託して、俺を萌え殺そうとしてくる悪い幼馴染だ。
「だめなんですか!? 添い寝……」
「だめです」
俺の理性が焼き切れちゃうからだめです。
「でもこんなにくるみちゃんも歓迎してくれてるんですよ? 私もくるみちゃんと一緒に寝たいです!!」
「くるみが優先か……」
「え?」
「いや、なんでもない」
確かに、くるみは俺の部屋で寝る。そりゃあ、もう盛大にお腹を見せてぷうぷうと鼻から可愛い音を出しながら寝る。夏だったら俺の腹にかかっているタオルケットを奪い取るくらいのこともする。そして俺が腹を壊す。
……と、まあ。くるみと一緒に寝るのはお決まりなのだが、そのくるみと一緒に寝たいから、俺とも一緒に寝る! と言っているのだこいつは。その意味分かってんのか。真面目な委員長キャラくらい貫き通せよ。今じゃただのポンコツじゃないか。
「くるみは夜、そっちの部屋に貸すから一緒に寝るのは勘弁してくれ」
「ちぇ〜」
なに残念そうな顔してるんだ! 俺はお前の父親から『なにもすんなよ』と圧をかけられてるんだぞ!? 俺を破滅させたいのかお前は!!
「二人とも〜、お昼ご飯できたわよ〜」
リビングでそう言い合っていたからだろうか、キッチンから顔を出した母さんが微笑ましいものを見る目で声をかけてきた。いたたまれない……。
「あ、お手伝いしますー!」
「あらあら、いいの〜? それじゃあ、このお皿を持っていって……」
母さんと二人で食卓の準備を始め、紗雪が離れる。
俺も手伝おうかと立ち上がったが、キッチンのほうから「洸夜は座ってて〜」と母さんの声が聞こえたため、再び座る。罪悪感……。
「洸夜……」
「ん、父さん?」
夜はちゃんと手伝おう。そんな風に考えていると、後ろから肩を叩かれて振り返る。そこには、生暖かい目をした父さんがいた。なにか悟ったような……そんな微妙な顔。
「……頑張れよ」
「あ、うん」
母さん達が来るまで、男二人で気まずくなっていたのだった。




