お腹のもふもふと、信頼と、決心。
幼馴染の譲羽紗雪は、なぜか俺の飼い犬に張り合おうとしてくる。
「そういえば……くるみちゃんってかなり人懐っこいですよね」
「ん? そうだね。愛想はいいほうだと思うけど」
例によって例のごとく、家にやって来ていた紗雪は仰向けになったくるみの腹をわっしわっしと気持ちよさそうに撫でている。この前シャンプーしたばかりだから、さぞ毛並みがいいだろう。
「ああ、でもお腹を見せるのは一部だけかもな。普通、よほど信頼してないとお腹なんて触らせないだろうし」
「え、でも私初対面のときに触らせてくれましたよ?」
「……よく考えたらそうだね」
くるみは案外、人を見ている。
中型犬に見えないほど、コーギーという犬種はそんなに大きくないが、頭は結構いいほうだ。牧羊犬をやれる犬種なのだから、人の命令もよく聞く。
だけれど、いくら愛想が良くても動物が腹を見せるのは信頼できる人物にのみである。お腹が一番肉が柔らかい部分のため、本能的なもので晒すのを避けようとするからだ。
でもどうだ? くるみは初対面の紗雪にもお腹を見せていた。
それはなぜか?
……俺が紗雪を信頼してる、からとか?
「犬って結構賢いからさ、俺が紗雪のこと信頼してるから、それを見て判断してお腹を見せてもいい相手だ〜って思ったのかもしれないね」
「そんなことまで判断できちゃうんですか!? すごい!」
賢くて手間がかからない子だからなあ、くるみは。
「くるみちゃ〜ん、お腹柔らかい〜」
カットをしたあとでもお腹の毛はふわふんとしている。
くるみも撫でられながら、気持ちいいのか目を瞑って舌をぺろっと出している。尻尾がパタパタと床を叩いているので、それだけ嬉しいということだ。めちゃくちゃリラックスしている。
「くるみに張り合うより、友達付き合いしたほうがいいんじゃないの?」
「今でも十分、お友達ですよ? でも、張り合うのはやめません。自分磨きにもなりますし」
確かに、くるみとの散歩をするようになってから、紗雪は筋肉がついてきたように思う。ほどよく体力と筋力がついて、健康的なのは良いことだ。
「くるみの散歩、ずっと紗雪が行ってたら今度は俺が太りそうだな」
冗談まじりに言うと、彼女は「そのときは犬飼君のお腹をもふります!」とか冗談みたいな言葉が返って来た。
「うわー、それはさすがに嫌だなあ。だらしないし……太らないようにしないと」
自分も、週にいくらか走り込みをするべきなのかもしれない。明日からやろう。そう、決心した。




