寿命の違いと、将来語りと、いつもの癖
幼馴染の譲羽紗雪は、なぜか俺の飼い犬に張り合おうとしてくる。
「なあ紗雪」
「はい、なんですか?」
ふとした瞬間に俺は思いついたことをぽつりとこぼす。
「よく考えたらさ、犬の寿命って人間とは違うんだし、くるみにとっての二年って、人間に直すと二十年くらいになるんじゃないかと思って」
以前、飼い犬のくるみの自慢話を彼女がいると思い込んでいた彼女は、勘違いが発覚した際に言っていた。
――くるみちゃんは二歳ですか。なら、私のほうが犬飼君といた期間は長いですね。
思えばあのときからくるみへ張り合うようになったなーと、すでに懐かしむ感覚で出た、何気ない言葉だったのだ……犬の二年は、人の二十年くらいという言葉は。
「なななっ、ま、負けてた……!?」
なぜショックを受ける。
相手は犬だぞ。
「あ、あー、でも俺の感覚だとほら、紗雪と同じ二年の感覚だからさ」
取り繕うように言ってみるが、なんと紗雪はみるみるうちに涙を目に溜めていっている。毎回思うが、どんだけ涙もろいんだお前は。
「つーか、そもそも比べるものじゃないな?」
「ううっ、そうですよ! そうなんですよ! 比べるものじゃありません!! どっちも可愛いでいいでしょう!!」
自分で自分のこと可愛いって言っている……って自覚は多分ないんだろうな、こいつ。だが、ツッコミどころはもう一つある。
「それ自分で認めてたら、くるみと張り合えなくなるぞ」
「はっ!?」
こいつは委員長キャラで通っているのだが……やっぱりド天然としか言えない。これのどこが賢そうなんだろう? そんな失礼なことを考えつつ苦笑する。
「紗雪さ、くるみと張り合うの楽しいんだろ」
「なんでバレてるんですか!?」
「だってそういうことじゃん」
「ま、まあ? そうですけどなにか?」
「なに開き直ってんの。いいよ、見てて面白いから」
「そ、そうですか、それならこれからも存分に張り合うことにします」
「どーぞどーぞ」
くるみのことを好きでいてくれているのは俺にとってもありがたい。
「この調子なら将来一緒に暮らすとき、くるみも一緒で大丈夫そうだな」
「へ?」
そのためには早く一緒になるのと、くるみに長生きしてもらう必要があるわけだけれど。
紗雪はほっぺたを押さえて、赤い顔を隠す。
毎回やってるし、ほっぺた押さえるの癖なのかな? またひとつ紗雪のことを知れた気がする。
「紗雪がデレればデレるだけ俺もデレるぞ」
「そんな脅しする必要ありますか!?」




