幼馴染と、無茶と、お姫様抱っこ
幼馴染の譲羽紗雪は、なぜか俺の飼い犬に張り合おうとしてくる。
「紗雪、それ手伝うよ」
「いえ、大丈夫です!」
「そ、そう」
重そうなノートの山を持ち運ぶ紗雪に声をかけ、手伝おうとしたのだがすげなく断られてしまう。いつもなら半分持つよっていうのが当たり前で、断られたことなんてなかったので少々びっくりしてしまった。
「ふんっ、ふんっ、これくらい私でも運べます!」
先生の手伝いを率先してやったり、体育の時間に運動場を駆け回ったり、とにかくなんでもかんでも運動やら自身に負荷をかけようとしている様子に不安が募っていく。
こないだの散歩のことで、気にしているのだろうか?
多分あれ、体力つけようとして頑張ってるんだよな……でもあんな無茶苦茶なやりかたしてると危ないんじゃないか?
彼女は無理をしすぎているように思う。体力をつけたいのだとしても、あまりやりすぎると身体のほうが先にダウンしてしまうだろう。でも、俺が声をかけても意地を張ってしまって話にならないし……。
そもそも、ああやってくるみに張り合っている彼女は生き生きとはしているが、それって俺のほう見ずにくるみを見ていることになるわけで……って、俺までなに考えるんだ?
疲れてるのかなぁ。
どうするべきか。そう考えていると、運動場で走り回っていた紗雪が立ち止まるのが見えた。嫌な予感がして走り出す。
「あ、れ……?」
「紗雪!」
ゆっくりと身体を傾かせ、倒れそうになる彼女を支える。
ほら来た、熱中症だ。それに急激な運動のしすぎ。いきなり運動量を増やすだけだと、ダイエットのために絶食するようなレベルでやりかたがよろしくない。
「体力つけたいなら、自分に合った量から始めろよな」
「ご、ごめん」
「歩けるか?」
「頑張って歩きます」
ふらふらしている彼女に、強がっちゃって……と呆れつつ背中と膝の裏に腕を滑り込ませる。
「へぁ!?」
お、意外といけるもんなんだなぁ……お姫様抱っこ。
「あ、あのあの、人が! いっぱい人が見てますからぁ!」
「大人しく保健室に連行されとけ。この前のお礼も兼ねてつきっきりで看病するから」
「そんなことされたら、さ、さらに熱が上がって死んじゃいますっ!!」
「心配かけられた仕返しだよ。今度からはちゃんと俺の説得にもちゃんも応じること」
「は、はひっ!」
顔を真っ赤にしながら手のひらで覆う彼女を眺めつつ、俺は先生に聞こえるように声をあげる。
「保健室行ってきます!」
「はいはい、でも犬飼はちゃんと授業中に帰ってこいよー」
「はい!」
……釘を刺されてしまった。




