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やたらとペットの犬(※ コーギー)に張り合ってデレてくる幼馴染の紗雪さん  作者: 時雨オオカミ
『彼女な幼馴染がペットの犬に張り合ってくるんですけど!』

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14/52

散歩と、体力と、影法師

 幼馴染の譲羽(ゆずりは)紗雪(さゆき)は、なぜか俺の飼い犬に張り合おうとしてくる。


「い、犬飼君。ちょっと、ちょっとだけ休憩していいですか?」

「ん? 分かった」


 ゆっくりと歩いていた足を止める。

 待ち合わせをして、紗雪が可愛らしいチョーカーをつけた私服でやってきたはじめてのデート中である。

 はじめてのデートが犬の散歩に同行するだけってのもどうかと思うが、紗雪のほうから指定してきたデートスタイルだからな。くるみはまだまだ歩き足りないようだが……ときおりこうして、紗雪からストップが入る。


 これで何度目かの休憩になる。くるみのリードを紗雪に預けて、自販機で冷たいお茶を買った。彼女はいつも大体お茶か水を飲んでいるので、ジュースよりはお茶のほうがいいだろう。


「疲れちゃったか?」

「ええ、だいぶ……その、こんなにたくさん歩くことってあんまりなくて」

「そっか、まあ犬は体力あるからなぁ……」

「あの、いつも、どのくらい散歩するんですか?」

「んーと、いつもは大体5キロくらい歩いて帰ってるかな。隣町まで走って一緒に行ったり、林の中に入って走り回ったり、街中歩いてウィンドウショッピングしたりしながらね」

「……今どれくらい散歩してます?」

「半分くらいかな」


 紗雪が露骨に「絶望してます」っていう顔になった。

 歩いて今、2キロとちょっとくらいなので、あとはゆっくりと別の道を通りながら帰るだけなのだが……できる委員長タイプの紗雪には、歩きとはいえ長時間の運動は結構堪えたみたいだ。


「折り返して帰るだけなら、近道もあるし、このまま散歩コースを全部回るよりは楽だよ。そっちで帰る?」

「犬って運動量すごいんですね。さすがにここまでとは想像していませんでした」


 これは紗雪とのデートなのだから、紗雪が疲れてしまったなら彼女を優先にして帰るつもりではある。しかし、まだ彼女はお茶を飲んでいる最中だ。落ち着くまで話題を続けたほうが良さそうだ。


「そうだね、特にコーギーは元が牧羊犬だからか、体力があるんだよ。だから、一日に必要な運動量もそれなりってところかな」

「こんなにちっちゃいのにすごいですね。散歩がいっぱい必要なのはゴールデンレトリバーとか、大型犬だけだと思っていました」

「紗雪とのデートなんだから、紗雪が疲れたならもう帰ろうか?」


 このまま帰ろうか? その提案に、紗雪は静かに首を振った。


「くるみちゃんには負けていられませんね。私も勉強ばかりで運動はあまりできないですし、このままではいけないと思っていたところです。体力をつけたいので、犬飼君にはお付き合いいただいてもいいですか?」

「そっか。分かった、協力するよ」


 足元のくるみを紗雪が撫でる。

 くるみのお散歩コースを完遂するつもりのようだ。

 これは、張り合っているのもあるが、多分くるみのためでもあるだろう。


 それを「自分のためだから」と言って、俺に提案してくるんだから……可愛くてしょうがないよね。


「休憩とりながら、ゆっくり行こうか」

「はい! おともしますよ!」


 時間は夕暮れ時。

 自分達の影に視線を向けると、三つの影が仲良く寄り添っているように見えた。

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