病院と、予防接種と、献血車
幼馴染の譲羽紗雪は、なぜか俺の飼い犬に張り合おうとしてくる。
毎日放課後に俺の家に来ては、なぜか飼い犬のくるみに張り合うようなことをして帰るのだ。
「ねえ、犬飼君。どうして今日は、くるみちゃんが見当たらないの?」
「ああ、くるみならほらそこ」
不思議そうな顔をする紗雪に、ベッドを指さす。
ベッドの上にはふっくらとなにかが埋もれているような膨らみがあった。
枕のあるほうから覗けば布団の中に入り込んだくるみの、それも珍しくふてくされた顔が見られることだろう。
「わっ、可愛い……」
「そうでしょ」
「でもどうして、今日はこっちに隠れてるんです? いつもはすぐに甘えてきますよね」
「昨日、予防接種に病院連れて行かれたからすねてるんだよ」
「へえ、くるみちゃんはとってもいい子ですけど、注射は怖いんですね」
「さすがに注射は苦手みたい。病院行くだけなら嫌いじゃないみたいなんだけどね」
「それはそれで珍しいですね。病院は嫌いじゃないんですか」
犬って大抵病院嫌いだからな。でもくるみはお医者さんのことは好きなんだよ。すごい褒めてくれるからな。
「病院の先生のことは好きで、会うといっぱい尻尾振るよ。でも注射は嫌いなんだ」
「へえ……本当に人懐っこい子なんですね」
「まあね、そういうところが可愛いだろ」
「もちろんです」
「注射を怖がったり、こうして少しの間すねるのがかえって可愛いんだよな」
「分かる気はします」
そんな話をした翌週。
紗雪は学校にやってきた献血車に突進していくのだった。
どんな張り合いの仕方だ……?
注射して涙目になった姿はちょっと可愛かったけどさあ。




