第21話 はじめての混浴(下)
腰にバスタオルを巻いて浴場に入った俺はまず蛇口とシャワー、それに石鹸とシャンプーなどの使い方を一通り二人に教えた。
クレナとロニもバスタオルを巻いたドキドキシチュエーションだが、ここは努めて平静を保って話を進める。
石鹸とタオルの使い方はこちらの世界の人間にも通じるのだが、それ以外は全て彼女達にとって未知の物である。
「石鹸の方は分かるんだけど、シャンプーの方はちょっと……」
その反応は予想通りだ。石鹸はこの世界にある物の延長線上だが、シャンプーの様な液状の石鹸は彼女達にとって初めて見る物なのだから無理もない。
「俺が二人の頭を洗うから、それぞれ見て覚えるって事でどうだ?」
「そうするしかなさそうね」
「それではクレナさま。私から」
神妙な面持ちで申し出て椅子に座るロニ。今から実験台か何かになる様な気分なのかも知れない。そんな怖いものでもないのだが、初体験だとそうも言ってられないのだろう。
「リュカオンの体温って、人間より高かったりする?」
「変わらないはずだけど、それがどうかしたの?」
「いや、シャワーの温度をな」
頭を洗う時のシャワーの温度は、体温より少し高いぐらいが適温なのだ。俺はパネルを操作してシャワーから出るお湯の温度を変更する。
ロニの後ろに俺が座り、クレナは俺の隣で浴槽の縁に腰掛ける。浴室が狭いので、距離を取れるだけのスペースが無いのだ。
クレナ、見て覚えろと言ったが頬を染めながらチラチラとこっちを見るな。恥ずかしくなるだろうが。
気を取り直してカスタードクリームの様な色をしたロニの髪を見てみると、非常に量が多い事が分かる。
長さも腰まであるが、長さではなく量が多いのだ。彼女自身は細身なので余計にボリュームを感じられた。
そんな彼女の髪はお世辞にも手入れが行き届いているとは言い難くぼさぼさだ。野性味に溢れている。
「まずは髪を濡らすぞ」
「はーい」
程々の勢いでお湯を出し、髪を濡らしていく。ロニは温めのお湯を浴びて気持ち良さそうに表情もゆるめていた。
子供の頃、友人の家で毛の長い大型犬を洗うのを手伝った事があるのだが、あの時もこんな感じだった気がする。
人間と同じ位置に大きな狼の耳、それにお尻からふさふさの狼の尻尾が生えているロニ。
尻尾は丁度タオルの隙間から顔を覗かせていた。クレナが位置を調整したのだろう。
今は髪を洗っている訳だが、これらも忘れる訳にはいかない。尻尾の方も濡らそうとシャワーを当てると、ロニはくすぐったそうにしていた。
「それ、ずっと同じ温度のお湯が出続けているの? すごいわね……」
見ているクレナは、シャワーと操作パネルを交互に見て感心した様子だった。
何気なく使っているシャワーも、この世界には存在しないものだ。
量が多いので時間が掛かったが、一通り髪を濡らした所で俺はシャワーを止めた。
「ん~、髪が傷んでるな。まずはトリートメントからか」
ロニの髪は傷んでいるので、まずは背中に伸びた髪にトリートメントを付けて、軽く、優しく、揉み込む様に沁み込ませていく。
「それは何をやってるの?」
「このトリートメントは、傷んだ髪をきれいにする物でな。普通ならシャンプーの後なんだけど、髪が長い場合はまずこれを傷んだ髪に染み込ませるんだよ」
「ふーん……これは石鹸じゃないのね」
どちらかと言うと石鹸ではなく髪の栄養剤だと思う。
クレナはトリートメントの入ったボトルを興味深げに見ていた。
「次はシャンプーな。ロニ、しっかり目を瞑ってろ。泡が目に入ると痛いぞ」
「石鹸と同じですね、分かりました!」
俺が声を掛けるとゆるんだ表情をしていたロニがハッと我に返って返事をした。
それに合わせて動いた尻尾が俺の腹をくすぐる。
俺とクレナ、二人で顔を見合わせてくすくすと笑いながら、俺は手に付けたシャンプーをロニの頭に乗せて泡立てて行く。
爪を立ててはいけない。指の腹でマッサージする様にして、髪ではなく頭皮を洗うのだ。
もちろん耳と尻尾もだ。耳を触るとロニは可愛らしい声を上げた。
「で、泡立てた状態で一分待つ」
「て、手間が掛かるのね……」
その後はお湯を含ませる様に手を使って優しく泡を洗い流し、髪の傷みに応じてトリートメントやリンスで仕上げるのだ。
ロニの髪は傷んでいるのでフルコースである。
洗い終えた後の濡れた髪にも優しく接しなければならない。「拭く」ではなく「水気を取る」、揉んだり擦ったりは厳禁だ。
これから湯船につかるので、今は軽く水気を取って髪がお湯に入ってしまわない様にタオルを巻いて髪をまとめておく。
髪の量が多いため、ちょっと見た目的に面白い事になった。
「ど、どう……?」
「はふぅ……」
おずおずとクレナが尋ねるが、ロニは蕩けた表情をしていて返事が出来る状態ではない。
余程気持ち良かったのだろう。背後の俺は小さくガッツポーズを取った。
そしてクレナも、その態度で十分に伝わったらしい。火照った顔を強張らせ、何か言いたげに俺の方を見ている。
「次はクレナの番なんだが、これじゃロニが見て覚えるのは無理そうだな」
「え~っと、ロニに覚えさせるのは次の機会って事で? 私だって頭洗いたいし」
「それもそうか。それじゃロニはこっちに来い。クレナは代わりにそこに座れ」
湯船の縁に座らせるとそのままひっくり返ってしまいそうなので、ロニは俺の後ろに移動させる。するとロニは甘える様に俺の背中にしなだれ掛かってきた。力が抜けている様だ。
可愛いし、背中に当たる感触が嬉しいので、何も言わずにそのままにしておく。
「クレナの方は、髪を洗うの楽そうだな」
「ロニの髪が多過ぎるのよ」
「確かに」
そんな会話をしながらクレナの髪を濡らしていく。彼女の髪は肩までの長さなので時間は掛からない。
こちらはロニほど髪が傷んではいない様だ。これならばトリートメントは後で良いだろう。
それにしても、やはりバスタオルを巻いてもらって良かった。裸のままなら恥ずかしさの方が勝ってしまい、きっとこんな和やかな雰囲気にはなれなかっただろう。
手順通りにクレナの銀色の髪を優しく髪を洗っていく。意識して視線を下に向けない様にすれば大丈夫だ。濡れると結構透けるな、バスタオルって。
「ねぇ」
「ん、何だ?」
そしてリンスまで終えて頭を洗い終わると、クレナが俺に声を掛けて来た。彼女も気持ち良かったのか、ロニ程ではないが頬が上気している。
「トウヤの髪、私が洗ってもいい?」
「練習か?」
チラリとこちらを見たクレナは、俺の言葉に小さく頷く。
確かに、俺の髪なら練習台に丁度良いかも知れない。
「それじゃお願いしようかな」
そう言って俺はクレナと場所を交代する。ロニは蕩けたままなので、前の椅子に座った俺の前の床にぺたんと体育座りさせた。身体をこちらに預けてきて何とも愛くるしい。
男の髪を洗っているシーンなど嬉しくもないだろうから割愛しておこう。
クレナが上手くやろう上手くやろうと意識するあまり身体が近付き、おっぱいが俺の背中に触れてはそれに気付いて離れるのを繰り返していた。
その度に慌てている様子が見なくても伝わってきて、やけに可愛らしかったとだけ言っておく。
身体を洗う事については特に教える事は無い。クレナとロニは、その泡立ちの良さに驚いていたが、それ以外はこの世界と同じだ。
いつも通りの事なのだろう。まずロニがクレナの背中を流す。
初めて経験する泡立ちに二人とも楽しそうで、まるでじゃれ合っている様にも見えた。
当然身体を洗っている時はバスタオルを外すので、そう言う意味でもとても泡立つ石鹸には感謝である。
そして先に身体を洗い終えたクレナが、再びバスタオルを巻き浴槽に入る。
すると勢い良くお湯が流れ出た。うむ、小さなお風呂ならではの光景だ。
俺がにやにやとクレナを見ていると、彼女はその視線の意味を察したのか羞恥に顔を紅く染め上げ、俺に向かって両手でお湯を掛けてきた。
俺はそれを嫌がる態度を取りながらも、内心はそのシチュエーションを楽しんでいたのは言うまでもない。
「次はトウヤ様ですよー」
ロニが笑顔で手招きしてくる。俺の背中も流してくれるらしい。
もちろん断る理由は無いので、俺は素直に先程までクレナが座っていたロニの前にある椅子に座る。
背中を洗い終わったところでロニをお風呂に入れる。今の浴槽のサイズでは三人一緒に入る事が出来ない。
と言う訳で二人が湯につかっている間に俺は背中以外を自分で洗う事にする。
クレナ、恥ずかしがりながらチラチラ見るな。こっちは身体を洗うのにタオルを外してるんだぞ。
俺も二人が洗いっこをしている姿をじっくり見ていたので、あまり人の事は言えないが。
その後ゆっくりと身体を洗った俺は、ロニと交代した。
念のために言っておくが、見られるのが嬉しかった訳ではない。ロニが暖まる時間を確保するために、あえてゆっくりしていたのだ。
クレナはまだ湯につかっているつもりの様なので、俺は彼女の隣に腰を下ろす。
浴槽から出たロニは、洗濯板と木の棒を持ってきて衣類の洗濯を始める。
神殿で実験していた時も交代で湯につかっていたので二人一緒に入るのは初めてなのだが、こうして実際に入ってみるとちょっと狭い。
そう言えば、セーラさん達にも『無限バスルーム』は狭いと言われていた。
ロニが細身なのでクレナとロニの二人ならばまだ余裕がある感じだったが、男の体格である俺とむっちり系のクレナだとどうしても身体が触れ合ってしまう。
俺とクレナは互いに浴槽の壁に背を預け、向かい合って湯につかった。足を伸ばせるだけのスペースがないので、俺が足を開いてその間にクレナが体育座りする形だ。
だからクレナ。恥ずかしくて顔を見られない、もしくは顔を伏せてるのかも知れないが、視線を下に向けるな。俺だって我慢してるんだぞ。
クレナは両腕でおっぱいを押し上げる形になり、谷間がすごい事になっていた。
「こ、この狭さどうにかならないの?」
「最初からこのサイズと言うか……俺達の故郷じゃ個人用の風呂はこんな物だからなぁ」
「個人用の風呂って、また贅沢な……」
「いや他の国はともかく、俺の故郷では割と一般的に普及してたから」
「……すごいのね、トウヤの世界って」
こう言う会話をしていると、見慣れた風呂場の中にいてもやっぱりここは異世界なのだと思い知らされる。
そもそもクレナの銀色の髪やロニのカスタードクリーム色の髪も、俺達の世界ではそうそうお目に掛かれないものではあるが。
「『ギフト』って成長しないのか?」
「するんじゃない? あなた自身の成長に合わせて」
「そうか。どこまで成長しても戦いの役には立ちそうにないが、せめてもう少し寛げるサイズになって欲しいな」
「そうね、せめて三人で入れるくらいは……」
そう言ってクレナはロニの方を見る。
ロニは楽しそうに洗濯をしていた。叩き洗いと言う方法らしい。
俺もつられてそちらを見た。微笑ましい光景なのだが、どうしても洗濯機の無い不便さを強く感じてしまうのは、俺が現代日本で生まれ育った人間だからだろうか。
「それはともかくとして、なごむなぁ……」
「あげないわよ。パーティのリーダーはトウヤだけど、ロニの主人は私なんだから」
思わず目尻が下がってしまう俺に、クレナがジト目でツっこみを入れる。
パーティのリーダーの座とロニの本能的な忠誠心を受ける役目は譲ったが、彼女自身は譲らないと言う事だろう。
その気持ちはよく分かる。
だが俺もここで黙って引き下がる訳にはいかないので、ハッキリとクレナに宣言する事にした。
「心配するな。いずれクレナごといただくから」
「…………期待してるわ」
俺の言葉にクレナは頬を染めながら視線をそらした。
皆と混浴すると言う事はそう言う事なのだ、クレナが俺に掛ける期待と言うのは。
男としてきっちり責任は取らねばならないのである。
その後風呂から上がった俺達は、就寝用の大きな布を出して眠る事にする。予備の分も合わせて丁度三枚あった。
さほど厚みがある布ではないが、この辺りの地面は砂地に近いので背中は痛くない。
ただ、これもトラノオ族では本来使われていない物なため、ゆったりと眠れる程のサイズではない。
ちなみにリザードマンは仰向けで寝ようとすると尻尾が邪魔になるため、俯せでうずくまる様にして眠るのだ。
それはともかく、俺達は三枚の布を並べて三人一緒に寝る事にする。
誰が真ん中になるかで少し揉めたが、結局はロニを真ん中にして川の字になって眠る事になった。
俺が真ん中で挟まれるか、クレナが真ん中で挟まれるかの争いだったのだが、最終的にはロニが大喜びだったので良しとする。
ちなみに洗った洗濯物はクレナ達の荷物にあった細い紐を使ってテントの中に吊す。
ロニが鼻歌交じりで楽しそうに干している赤とオレンジ、それに白の二枚を見上げながら俺はクレナに問い掛ける。
「洗濯物って夜の内に干すのか?」
「昼間干して、そこでじっとしておくつもり?」
「あ、そうか」
俺は視線を下ろしてクレナを見た。
洗濯物は天日干しで乾かすのが一番だが、日中は旅人にとって移動するための時間なのだ。
まさかパンツを旗の様に掲げて旅をする訳にもいくまい。
「そう言うちゃんとした洗濯は、街とかでやるものよ。たまーに廃屋とかを見付けて、そこで数日休む時とかに洗濯する事もあるけど」
「なるほど、そう言うものなのか」
「あなた、ユピテルからここに来るまでどうしてたの?」
「ユピテルから山まで一日、山を越えるのに一日、荒野も一日で突っ切っての強行軍」
「む、無茶したのね……」
俺の答えを聞いて、クレナも流石に呆れていた。
うん、トラノオ族を救うために必要だったとは言え、俺も無茶だったと思う。
ちなみに、その後の洗濯についてはトラノオ族の奥様達に任せている。
普段はただの布きれの様な腰布しか洗ってなかったので手慣れていない様子だったが、頑丈な旅装束だったので破られたりはせずに済んだ。
「トラノオ族が腰布をまとめて干してるとこがあるから、明日そこに案内しようか?」
「あ~、テントの前に下着干すとかはちょっと躊躇するけど、そう言う場所なら良いわね」
「分かった。朝一で案内するよ。昼前には完全に乾くはずだ」
「流石『空白地帯』ね……」
この辺りの日差しは強いのである。
「終わりましたー」
「ご苦労さま、ロニ」
洗濯物を干し終えたロニが俺達の側に来て、布の上にぺたんと腰を下ろした。尻尾がふりふりと楽しそうに揺れている。
「それじゃ今日はもう寝ましょうか」
「はいっ!」
クレナ達二人が疲れていると言う事もあり、俺達はそのまま床に就く。いや、床無いけど。
そのまま上を見上げてしまうとクレナのブラジャーが目に入り、どうしてもその中身を思い出してしまうので、俺は寝返りを打って身体を横に向ける。
するとロニの方は既に寝息を立てていたが、彼女の顔を挟んで同じ様に身体を横たえていたクレナと目が合った。いかん、破壊力はこちらの方が高い。
「って、何でまた寝返り打とうとするのよ!」
「いや、あれの中身を思い出しそうで」
「うっ……やっぱいいわ。そっち向いてなさい」
見えないが、そう言うクレナもおそらく顔を赤くしているだろう。
そのまま二人に背を向けてじっとしている俺。緊張している事と、二人ほど疲れていない事もあり、なかなか寝付く事が出来ない。
「ねぇ、トウヤ……」
すると背後からクレナの小さな声が聞こえてきた。
振り返って返事をしようか迷っていると、彼女は更に言葉を続ける。
「今日は、ありがと……明日からもよろしくね」
穏やかさと軽いはにかみが入り交じった様な声。今彼女はどんな顔をしているのか見たい。そう思った俺は寝返りを打って彼女の方を見た。
「そ、そのまま向こう向いてなさいよ……」
「いや、顔が見たくて……」
しかしその後の言葉が続かない。見た後どうするかを考えていなかった。
見詰め合ったままどうしたものかと思っていると、真ん中のロニが両手で俺達の手を握り、抱きかかえる様に自分の胸の上まで持ってきた。
触れ合うロニに握られた俺とクレナの手。三人で手を繋ぐ形だ。
「みんななかよくですよ~」
にへっと笑いながらそう言うロニ。完全に起きている訳ではなく、半分寝ぼけている様だ。
俺がもぞもぞと少し手を進めてクレナの手を軽く握る。すると彼女も俺の手を握り返してきた。
見詰め合う俺とクレナの顔に小さな笑みが浮かぶ。
こう言う雰囲気も悪くない。俺達三人は手を繋いだまま眠りにつくのだった。
翌日全ての洗濯物を干した後、俺達の旅の準備は急ピッチで進められた。
と言っても改めて用意するのは食料ぐらいだ。
定期的に住む場所を変えるトラノオ族は、移動期間中に食料にする事もあって普段から干肉を作っている。流石にハムやソーセージの様な手の込んだ物は無い様だが。
ここ半月は部隊を組んで狩りをしていたため狩りの成果も好調であり、俺達に干肉を分けても問題は無いそうだ。
その一方で野菜・果物類は実に独特だった。『空白地帯』で育つ植物はユピテルのそれとは大きく異なる。
トラノオ族が主に食べている野菜はサボテンだ。若い茎節を食べる。
また別種のサボテンから取れる「トゥナ」と呼ばれる果物もよく食べられていた。赤、黄、緑と三種類ある大きな果実で、少し歪な卵形をしている。
他にもヤシの様な樹から取れる「デーツ」と呼ばれる物もある。こちらは拳大の大きさの楕円形の果実で、干すと長期保存出来る果物だ。干した物は濃厚な甘味がある。
水不足に苦しんでいたトラノオ族は、渇きを癒すために大量にこれらを採取していたらしく、水が手に入って必要なくなった分はこちらに回してくれるらしい。
無論、長期保存出来る干しデーツの割合を多めにしてくれる事になっている。
他にも彼等が薬として使っている「アロエ」も貰える事になっているので、ゴールドオックスの毛皮と合わせて水の代金としては十分以上だと言えるのではないだろうか。
「これ、どうやって持ってくの?」
「大丈夫、人力車があるから」
これらは全て人力車に積み上げて持って行く事になっている。
『無限バスルーム』で保管出来る可能性もあるのだが、それを使うのは実験をしてしっかり確認をしてからの方が良いだろう。
人力車も、今度は俺が乗る事を想定していないのでそれだけ多くの荷物を積める様になっている。
長老達との話し合いで『空白地帯』を出る時は俺がルリトラの背に、クレナとロニがドクトラの背に乗る。
そして人力車と道中の露払いは、他の戦士達に任せて境界線まで送ってもらう手筈になっていた。
この方法を使って一日で『空白地帯』を出て、そこからは徒歩で進むのだ。
どちらにせよ人力車に三人は乗れないので、その分荷物を多く積み込むのである。
「クレナ、金属鎧は禁止な」
「わ、分かってるわよ」
簡素な物だが、クレナとロニの分の日よけの外套を用意してもらう事になっている。それを使えば無事に『空白地帯』を抜ける事が出来るだろう。
そんなこんなで旅立ちの準備を進め、翌日俺達はトラノオ族の集落を旅立つ事になるのである。
初めての混浴が終わり、ようやくタイトル詐欺も解消されました。
ここまでが『異世界混浴物語』のプロローグとなります。
書き溜めは既に尽きておきますので、今後はじっくり話を構成しながら「週一、二回」を目標に更新していこうと考えております。
読者の皆様、これからも『異世界混浴物語』をよろしくお願いいたします。




