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異世界混浴物語  作者: 日々花長春
お風呂場の勇者
22/206

第20話 はじめての混浴(上)

 少し自己分析してみる。

 サンド・リザードマンに囲まれた不審な男。逆らう事の出来ない状況でテントに連れ込まれて何をされるのかと思っていたら、意外と親切に助けてくれた。

 しかも一生跡が残りかねない火傷を傷一つ残さず治してくれた。

 こう言うのを「ギャップ萌え」と言うのだろうか。ちょっと違う気もする。


 それはともかくとして、クレナとロニの二人はひとまず俺の事を信用してくれたらしい。

「俺達、今日が初対面だったよな?」

「これでも人を見る目はあるつもりよ?」

 自信満々なクレナ。命の恩があるとは言え、随分と信用されたものだ。

「ユノ・ポリスを出てからここまで、仲間にしてくれると言ってくださった方は何人もいましたが、クレナさまは全員信用出来ないと断ってましたから」

「あんなの全員野盗紛いじゃない。まさかロニは信用出来るって思ってたんじゃないでしょうね?」

「くさかったです」

 ストレートに言うロニ。狼型の亜人・リュカオンである彼女は、やはり狼らしく鼻が良い様だ。

「トウヤ様はすっごく良い匂いです!」

「ああ、ありがとう。『無限バスルーム』のおかげだろうな」

 その点、俺は悪くない匂いらしい。『無限バスルーム』の石鹸を使って清潔にしているおかげだろう。相変わらず変なところで凄さを発揮するギフトである。

「まぁ、『砂漠の王国』の話が出来るかどうかって問題もあるんだけどね」

 ロニの話を、クレナが苦笑いを浮かべながら補足した。

 確かにオリュンポス連合全体で『砂漠の王国』に関する歴史を抹消しているなら、それについて探る事は業界のタブーにメスを入れる事に等しいと考えられる。

 『砂漠の王国』と言うか「魔王生誕の地」に興味を持ち、ひとまず信用出来そうな俺は、初対面である事をすっ飛ばすぐらいの好印象なのだろう。

 「同好の士を見付けた」と言い換えれば分からなくもない。その重さを考えれば「異端者同士」と言っても良いレベルなので尚更だ。

 俺自身もクレナとは気楽に付き合っていけそうな雰囲気を感じていた。


「それはともかく、お風呂の話なんだけど」

「俺としては嬉しい話なんだが、お前達はそれで良いのか?」

 クレナが平然としているため、逆に俺の方が躊躇してしまう。

「ああ、もちろん風呂の中ではバスタオルを巻いてもいいぞ。俺としてはあんまりしたくないが、タライにお湯を張って出してそれを使ってもらうって方法もある」

 タライにお湯は結局『無限バスルーム』を使わせないと言う事になるので、出来る事ならばそれは避けたかった。

 しかし、嫌がる子と強引に混浴する気は無い。だから本当に嫌がるならば、タライにお湯を張って使ってもらうと言う方法もやむなしである。

「いらないわよ、そんなの」

 しかし、クレナはあっさりと俺の提案を蹴ってしまった。

 そう言いつつも彼女の頬は紅潮している。

「さっきも言ったが、無理をさせるために助けたんじゃないぞ、俺は」

「わ、私の身体に恥じる所なんて無いもの。あなたもその方が嬉しいでしょ!?」

 俺が念を押す様に言うと、クレナが立ち上がり胸を張って堂々と宣言した。ちょっと無理している気がする。

 ほぼ真下から見上げるとむっちりおっぱいに遮られて顔が見えないが、きっとしたり顔をしているに違いない。

「治療してる時の恥じらいはどこに行ったんだ」

 俺がツっこみを入れると、クレナはどこか呆れた顔をして腰を下ろすと、ずいっと俺に顔を近付けてきた。

「信用出来るか分からない男と、信用出来ると信じた男。同じ態度になる訳がないでしょ」

「それは、まぁ」

 正論である。俺を信用出来ると判断したからこそ、クレナはこの態度を取ってくれているのだ。

「結構伸び代あると思うんだけど、その自信の無さはマイナスね。まだレベルもそう高くなさそうだから仕方がないのかも知れないけど」

「放っとけ」

「まあ、異世界人とサンド・リザードマンじゃ旅慣れてもいないだろうし、そこは私がフォローしてあげるわよ」

 そう言って楽しそうに笑うクレナ。俺としてもそれは有難い話である。

「それに、これは『前払い』でもあるわ」

 何に対する前払いなのだろうか。俺は見当のつかない顔をする。

 するとクレナはニッと笑みを浮かべながら更に説明してくれた。

「トウヤの成長性、それと将来性ね」

「『女神の勇者』だからか?」

「それも判断材料の一つだけど、一番はあなたの魔法よ」

「魔法? 基本的なのしか使ってないはずだが、ギフトの事か?」

「その基本的な魔法で私の火傷を傷一つ残さずに治してくれたでしょ? これ、あなたが思っている以上にすごい事なのよ?」

 クレナは自分の胸の上に手を置く。その表情はどこか嬉しげだ。

「トウヤは神官魔法をかじってるみたいだけど、魔法を一回使うのに掛かる時間ってどれくらいだと思う?」

「『癒しの光』は傷の大きさ次第だけど、『精霊召喚』だと召喚するだけなら一分も掛からないか?」

「普通の魔法はそんなところね。でもあなたはこの半月、一日六時間以上ギフトを使い続けた。これってすごい事だと思わない?」

「……一応あれ、肉体的な負担は掛からないんだけど」

「それでも使い続けたと言う事は、MPが鍛えられてるのよ。多分MENも。次にステータスカードを更新したらすごい事になってるんじゃない? 光の女神の祝福もあるし」

 神殿でもらったステータスカードは、リアルタイムに更新される様な便利な物ではない。当然、今のステータスは出発前に調べた物だ。

 狩りで実戦を経験して肉体的なステータスは成長しているだろうと思っていたが、彼女の言う通りならば、MP・MENの方が大きく成長している事になる。

 単純に魔法一回につき一分と考えた場合、俺は毎日三百六十回魔法を使い続けていた事になる。なるほど、そう考えれば鍛えられると言うのも理解出来る。

「懸けるだけの価値があるって事か」

「私達を助けてくれた事、それにトラノオ族との話も合わせて、私はそう信じたわ」

「ちょっと打算的な気もするが……」

「誰と比べてるか知らないけど、私がハッキリと言ってるだけで、その人だって『あなたに求めているもの』はあったと思うわよ?」

「求めてるもの、か」

 今俺が思い浮かべていたのは春乃さんだった。

 言われてみれば確かにリウムちゃんの好意は好奇心に依るところがあったし、春乃さんに対してはお互いに癒しと安らぎを求めていたのも否定出来ない。

 セーラさんは天然っぽいのでよく分からないが。

 ああ、そう言う事か。そこで俺は理解する事が出来た。

 力があれば一夫多妻、一妻多夫も許されると言うこの世界。

 その力と言うのは権力然り財力然り、この世界に蔓延る何かしらの「脅威」から守るための力なのだ。


 俺はクレナの顔を見詰める。彼女も真っ直ぐに俺を見詰め返して来た。

 勘当されたとは言え貴族としての矜持は捨てていない。堂々とした態度だ。

 彼女の中では、俺への信頼は先物買いの様な感覚もあるのかも知れない。

 それを計算高い、打算的だと怒る人もいるかも知れないが、俺はそうは思わなかった。

 クレナは俺が大物になれると信じてくれたのだ。それを怒る様では、きっと大物にはなれない。むしろそれを受け容れ、応えてこその器だろう。

 俺のやるべき事は、彼女の信頼に堂々と胸を張って応える事だ。

「よし、分かった。クレナ、ロニ、お前達が俺に何を求めるのか、この際だからハッキリと言ってくれ」

「その意気よ、トウヤ!」

 俺がそう言うと、彼女の表情に晴れやかな色が浮かんだ。

「この世界について分からない事もあるだろうから、一から説明するわね」

「ああ、頼む」

「私が家を勘当されたって話はしたでしょ? それから二人で旅をしてきた私達は、どこにも属していない状態なの。ここまでは良い?」

 クレナがユノ・ポリスの貴族の娘で、現在は勘当されていると言う話は聞いていた。

 どこにも属していないと言うのは、帰る家が無い、寄る辺が無い状態だと言っているのだろう。

 そこまで考えて、俺はこくりと頷いて応えた。「住所不定無職」と言ったら多分怒るだろうなと思いながら。

「私が求めるのは、トウヤに私達の帰る家になって欲しいって事よ」

「つまりは『庇護者』か」

 クレナは真面目な顔をしてこくんと頷く。

 クレナとロニは勘当されてきた二人きりで支え合ってここまで来た。

 仲間を増やせなかった原因は、抹消された歴史である『砂漠の王国』の事があったからだろう。もしかしたら、勘当された原因にも関わっているかも知れない。

 だが俺はそれを受け容れた。魔王について調べるため、『砂漠の王国』に行かねばならないと判断した。

 命の恩人であり、ステータス的にも将来性に期待が持てるかも知れない『女神の勇者』。

 更には、このオリュンポス連合では異端とも言える『砂漠の王国』探索でも協力出来る。

 なるほど、これは見逃す事は出来ない。

 俺がクレナの立場でも何とかして仲間に引き込もうとするだろう。自分達だけでは『砂漠の王国』まで辿り着ける可能性が低いのだから。

 実際のところ、彼女自身も二人だけで旅を続けていく事に色々と限界を感じていたのではないだろうか。

 打算的ではあるが、一目惚れされたと言われるよりは納得出来ると言うものだ。


 もしかしたらユピテル貴族の肉食系子女達も同じ様に考えていたのだろうか。

 クレナ達が求めるのは庇護者であり、『砂漠の王国』探索の協力者なので、主導権を握るつもりはなさそうだと言う一点が異なるが。

 ユピテル貴族達が紹介する仲間を断った事自体に後悔は無いが、クレナの話を聞いた今は、受け容れるのも器だったのではないかと思わなくもない。

 ここは、そう考えられる様になった事が成長だと考えておく。

「それにしても……愛が欲しいと言うのは贅沢なのか?」

「? そう言うのって後からついて来るものでしょ? 私も好意が無いとは言わないけど」

 俺の呟きに真顔で問い返してくるクレナ。

 どうやらこの世界は恋愛観、結婚観そのものが俺達の常識とは異なるらしい。いや、俺達の世界も昔はそうだったと聞いた事がある。

 まずは生活力有りき。それと引き替えにして成立すると考えると、一夫多妻も一妻多夫もやけにシビアなものに思えてくる。

 可愛い女の子達に囲まれるのは男としては夢も希望もあると思うのだが、それだけで済む程甘いものではないのが現実なのであろう。

 力の庇護を求めて集まって来る女の子達。その心を繋ぎ止められるかどうかは俺の努力次第と言う事だ。むしろ皆と愛情を育んでみせる。そう前向きに考えるとしよう。


 俺自身、春乃さん達との混浴の約束を果たすために大物になる事を目標としている。

 強くなる、大きくなると漠然と考えてきたが、クレナとの話を通じて具体的なものが見えて来た気がする。

 それは「この世界で生きてくだけの力・女の子達を庇護出来る力」を身に付け、また「立身出世し、この世界における社会的な立場を確立する」事だ。

 さしあたって俺がやるべき事は、クレナの期待に応えて彼女を庇護する事であろう。

「分かった。と言うかありがとう。クレナのおかげで漠然と考えていた俺の目的が、具体的に見えてきた気がする」

「お役に立てたなら何よりよ。期待してるからね」

 そう言うクレナは、どこかほっとした様子だった。

 彼女の申し出を受け容れた俺は、続けてロニの方を見る。

「ロニの望みは何だ?」

「えっ? 私も言って良いんですか?」

「当たり前だろ」

「ロニ、ここはお言葉に甘えちゃいなさい」

「えーっと、えーっと……」

 慌てた様子で考え始めるロニ。クレナの従者なのでセットとでも考えていたのだろうか。

 耳をピクンと動かしたロニは、甘える子供の様な顔をして俺にこう言った。

「あのっ、私と、クレナさまと、仲良くしてくださいっ!」

 鼻から熱い何かが噴き出しそうになった。可愛過ぎるだろう。

「抱き締めてもいい?」

「トウヤは右から、私は左からね」

 クレナも同じ事を考えていた様だ。

 俺達はロニをサンドイッチして思いっ切り抱き締め、頬ずりしておいた。


「ね、ねぇ、そろそろお風呂に入らない?」

 ひとしきりロニを愛でた後、クレナの方から混浴に誘って来た。その頬は紅潮し、声は上ずっている。

 本音を言えば混浴出来るのは嬉しいが、本当に良いのかと半信半疑だ。

 先程までの話を踏まえて考えるならば、これが俺の庇護に対して彼女達が差し出せるものなのかも知れない。

 逆に言えば、他に差し出せるものが彼女達には無いのだろう。

 俺に出来る事は素直に受け取り、かつ無理な要求はしない様に自重する事だ。

「でもクレナさま、大丈夫ですか? 最近お腹周りが……」

「余計な事言わなくていいのっ!」

「は、はい!」

 ロニのツっこみを、クレナは顔を真っ赤にしながらピシャリとシャットアウト。

 しかしクレナの方も怒っているのか喜んでいるのか複雑な表情だ。以前ならばこう言う風にロニがツっこみを入れる事も無かったのだろう。

 俺自身はむっちり系も良いと思うのだが、彼女はそれなりに気にしている様だ。これが男女の感覚の差なのだろうか。

 ここでクレナは話題の矛先をロニへと変えた。

「それよりロニはどうするの?」

「もちろん、私も一緒に入ります。お背中を流させてください」

 ロニもパタパタと尻尾を振りながら、満面の笑みで混浴を承諾してくれた。

 従者の様な態度。本人もそのつもりなのだろう。

 今は長袖長ズボンの鎧下を着ているが、メイド服が似合うのではないかと思えてくる。いや、可能であれば着物を着せて温泉旅館の仲居さんも良いかも知れない。

 ここまで素直だと心配になると言うか、放ってはおけないと言う保護欲が湧いてくる。

 再び腰を下ろしたクレナの方を見ると、彼女も見守る様な暖かな笑みを浮かべていた。きっと俺と同じ様な気持ちなのだろう。

 お互いに顔を見合わせて、慈愛に満ちた笑みを浮かべる俺とクレナ。

 今、確実に俺達は理解し合えた。これからは二人でロニを守ってやらねばなるまい。



 それから俺達は『無限バスルーム』の中に入った。

 俺とクレナはそれぞれ着替えの寝巻きを、ロニはそれに加えて洗濯板と木の棒を持っている。

 旅の間は、水浴び出来る時が洗濯のタイミングであるらしい。それだけ水が確保出来る場所が限られているのだろう。

「ん? なんだこれ?」

 脱衣室の床に赤い物が落ちていたので拾い上げてみると、それはクレナの着ていた赤いパンツだった。ここで着替えた時にそのまま忘れていったのだろうか。

「ちょっ! 返してよ!」

 混浴は良くても、これは恥ずかしいらしい。クレナは顔を真っ赤にして俺の手からそれを引ったくる。

 クレナはそのままパンツを背中に隠すが、俺はそれを認める訳にはいかなかった。

「ちょっと待て、クレナ。もう一度そのパンツを見せてくれ!」

「えっ!? ちょっと、それは……!」

「なんでそのまま残ってるんだ、それは!」

「…………へっ?」

 呆気に取られた表情になるクレナ。

「いや、何を考えているか大体分かるんだがな。俺は今まで、ここには何も残さない様にして扉を閉める様にしてたんだ」

「えっと……なんで?」

「流したお湯はMPに還元されるんだ。もしかしたら、お前の忘れていったパンツが俺のMPになってた可能性もあるんだぞ」

「いや、それはちょっと……」

 戸惑う気持ちは理解出来る。パンツをMPに還元とか、俺も微妙な気分だ。

 実際どうなるか分からなかったので、今まで『無限バスルーム』の中には元々あった物以外は残さない様にしてきたのだが、予想外の所で実験が出来てしまった。

「え~っと、この伸び具合、間違い無くクレナさまのパンツだと思います」

「伸び具合って言うなっ!」

 ロニに確認してもらったところ。赤いパンツは確かにクレナの物の様だ。

 そしてクレナは、おっぱいもお尻も成長期真っ最中らしい。

「……色々と考えなきゃいけない事もあるが、それは風呂に入ってからにしようか」

「そうね。そうしてちょうだい」

 自分のパンツを話題にされ続けるのは避けたいのだろう。クレナは疲れた表情で俺の提案に同意してくれた。


 まず躊躇なく服を脱いだのはロニ。

 リュカオンの様な尻尾のある種族は、ズボンに穴が空いているのではなく、尻尾の部分に切れ込みが入っていて、上の方に付いている紐を括っているらしい。

 パンツの方はベルトを緩めた時に気付いていたが、ローライズの様だ。

 俺達の世界のローライズのパンツは腹部を圧迫しないなどのメリットがあるらしいが、この世界では尻尾の邪魔にならないと言うファンタジーならではのメリットもあるらしい。

「トウヤ様、クレナさま、脱げましたっ!」

 一糸まとわぬ姿だが、隠す事なく堂々とした態度のロニ。ここまで来るといっそ清々しいものを感じてしまう。

 リウムちゃんは年齢の割には小柄に見える外見である反面、内面は年齢以上に大人びている部分があった。

 それに対してロニは同い年のクレナより少し小さいぐらいの身長。決して巨乳とは言えないが、そこそこの大きさの程良く張りのある胸。

 腰は細く、お尻も小さめだが、しっかり年相応の女性らしい丸みを帯びたフォルムをしている。足もすらっとしなやかだ。

 身体の成長は年相応、しかし中身が子供っぽいところがあると言ったところか。

 何にせよ、俺にとっては眼福である。髪が多いもっさりした頭をわしゃわしゃと撫でてやると、ロニは気持ち良さそうに目を細めて俺の手を受け容れた。

 俺は彼女の身体を顔から爪先までくまなく見る。リュカオンと言っても爪が鋭い訳ではなさそうだ。

「ロニ、ちょっと後ろ向いて」

「はい、トウヤ様」

 俺に言われるまま素直に背中を向けるロニ。

 腰まで伸びたもっさりした髪を持ち上げつつ、首筋からお尻、そしてかかとまでをくまなくチェックする。

 尻尾は尾骨の位置から生えている様だ。さわってみると、ロニはくすぐったそうに身をよじらせた。

「念のために一通り見てみたが、ロニの方はクレナみたいな火傷はなさそうだな。ひりひりしてるとことか無いか?」

「はい、大丈夫です」

 この素直に慕ってくれている事が伝わってくる笑顔が眩しい。

 あまりにも可愛いので、俺はもう一度ロニの頭を優しく撫でてやった。


「あれ? クレナさま、どうしたのですか?」

 一方クレナはもじもじしてまだ服を脱いでいなかった。

 入るまでは平然としていたが、先程彼女の体型を話題にしたためか、変に意識してしまっている様だ。

 俺もクレナの方を見ると、その視線に気付いた彼女は真っ赤な顔をしたままおずおずと俺に問い掛けてきた。

「ねぇ、トウヤ。一つ聞いてもいい?」

「なんだ?」

「私って……太ってると思う?」

 真剣な目だ。実は結構気にしていたらしい。

 だから俺も、その問いには真剣に答える事にする。

「むちむちしてエロいと思う」

「あのね……」

「いや、真剣だってば」

 クレナは少しむっとした様子だったが、俺は真剣そのものだ。

 確かにロニはほっそりと引き締まったスタイルでありながら少女らしさも兼ね揃えているので、比較して気になるのは分かる。

 春乃さんに至っては腰は割と細めなのに隠れ巨乳と言う奇跡の様なスタイルをしていた。

 それに比べてクレナは全体的にむっちりしている。それは否定しない。

 思うにクレナのむっちりスタイルは、貴族としての豊かな食生活により培われたものなのではないだろうか。

 しかし腰はしっかりくびれており、肉感的なスタイルの良さ、グラマラスな魅力が溢れているのだ。俺はこれを太っていると言うのは失礼だと思う。

 おそらくロニと比較しなければ太っていると感想は出て来ないだろう。

 そもそもだ。本当にただ太っているだけならば、北国であるらしいユノ・ポリスからここまで旅をする事など出来なかったのではないかと思う。

 実際、はち切れんばかりのおっぱいを、形を崩す事なく支える彼女の身体は結構鍛えられているだろう。

 しかしその身体は筋肉質には見えず、実に柔らかで女性的だ。これも一つの奇跡と言っても良い。

「――と俺は思うんだが、どうだろう?」

「~~~~~っ!!」

 熱く語る俺に対し今にも顔から火が出そうなクレナは、身体を強張らせていた。

 居た堪れなくなっているのだろうが、彼女の問い掛けに真剣に答えただけなのでそこは勘弁して欲しい。

 やがて限界が訪れたのか、クレナは顔を赤く染めたまま大声を張り上げた。

「わ、分かったわよ! 脱いでやるわよ! とくと見なさい!!」

 そして勢い良く上着を脱ぐと、オレンジ色のブラとスリップに包まれたおっぱいが大きな揺れと共に姿を現す。

 続けてズボンを脱ぐと、同じ色のパンツに包まれたボリュームのあるお尻が見える。

 静脈が浮き出る程に透き通った色白の肌を持つ彼女は、色付きの下着を好む様だ。何色もセットで持っているらしい。

「どうよっ!」

 自慢気な表情をし、下着姿で仁王立ちになるクレナ。

 恥ずかしさを誤魔化すためにやっている様な気がする。やはり無理をしているのだろうか。

「それより、あんたこそいつまで服着てるの!? さっさと脱ぎなさい!!」

 そして真っ赤な顔のクレナに言われて気付く。俺自身も服を脱いでいなかった事を。

「トウヤ様、お手伝いします」

「あ、ああ、大丈夫大丈夫。一人で脱げるから」

 着替えを手伝ってもらうなど縁が無かった自分としては、子供みたいで恥ずかしいと言う気持ちが先に立つ。

 防具を身に着けるのは一人では無理なのでルリトラと互いに手伝っているのだが、それとこれとは話が別であった。

 ロニは残念そうな顔をして俺を見る。その視線に負けずに俺は服を脱ぐ。もしかしたら、立身出世すればそう言う事も普通になるのかも知れないと考えながら。 

 俺が脱ぎ終わる頃には、クレナも一糸まとわぬ姿になっていた。

 俺の言葉で自信を取り戻したのか、それとも開き直ったのか、彼女自身の言葉通り恥じる所は無いと言わんばかりの腰に手を当てた堂々とした態度だ。

 いや、顔が赤い。やはり恥ずかしくない訳ではないらしい。

 それにしても分かっていた事だが、すごいボリュームである。

 思わず見惚れてしまった俺は――


「すいません、やっぱりバスタオル巻いて下さい。二人とも」


――このままではいけないと白旗を揚げ、二人にバスタオルを巻いて入浴してくれるようお願いした。二人の艶姿をこの目に焼き付けながら。

 このまま一緒に入浴すれば、混浴を楽しむどころか一人我慢大会になってしまうのが容易に想像出来たのである。

「し、仕方ないわねぇ、ほらロニもこれを巻きなさい」

「分かりました」

 口では仕方がないと言いながらも、明らかにほっとした様子のクレナ。やはり彼女も恥ずかしいのを押して無理をしていたのだろう。

 先程より明るい雰囲気になっているクレナの後ろ姿を見ながら、これで良かったのだと思いながら俺も腰にタオルを巻く。

 これにて混浴の準備完了である。

 色々考えましたが、最初から全開では後の発展が無いと言う事でこう言う形となりました。


 ちなみに春乃が冬夜に求めている事は『外伝 東雲春乃の旅』で触れられています。

 この世界に残るか帰るかの選択を迫られた時この世界に残る事を選び、一緒にこの世界で生きていく事ですね。

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