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異世界混浴物語  作者: 日々花長春
神泉七女神の湯
182/206

第173話 リア充爆発しろ

 色々あった入浴が終わった。

 ルリトラ達も既に水浴びを終えていた。ブラムスとメムは後でいいとの事なので、見張りを交代させて大浴場はサンドラ達に譲る。

 ロニは何か軽食を作ってくると言って炎の女神キッチンに向かい、春乃さんとラクティもそれに付いて行った。春乃さんは先程の事を気にしているのかもしれない。

 気にしなくてもいいのに……と俺が言う訳にもいかないので、黙って見送る事にする。

 という訳で見張りはルリトラ達に任せ、二階の広間で休ませてもらおう。

 クレナを連れて二階に上がると、そこには胡坐をかいたプラエちゃんとセーラさんの姿があった。その周りに雪菜とリウムちゃんとデイジィの姿もある。

 プラエちゃんはセーラさんを抱っこしたままで、まるで子供をあやすようにしている。あれハンモックみたいで寝心地は良いんだけど、恥ずかしいんだよな。

 案の定セーラさんは顔を真っ赤にしていたので、助け船を出す事にしよう。

「雪菜、リウムちゃん、どっちが行きたい?」

「んっ」

 リウムちゃんが手を挙げたので、彼女に行ってもらう事にする。

 とてとてと近付き抱っこを求める。するとプラエちゃんはオロオロし始めた。セーラさんも放っておけずに困っているようだ。

「も、もう大丈夫ですよ。ありがとうございました」

 ここぞとばかりにセーラさんがお礼を言って下りた。

 よく見ると耳まで真っ赤になっている。ただでさえ恥ずかしい抱っこなのに、それを俺達に見られてしまったからな。大丈夫、それについては触れないから。

 プラエちゃんの方は、リウムちゃんを抱き上げて同じようにあやしている。リウムちゃんの方は、ああいうの平気そうなんだよな。

「プラエちゃん、ありがとうな。セーラさん、元気になったみたいだぞ」

「そう? 良かったぁ~♪」

 するとプラエちゃんは、嬉しそうに顔を綻ばせた。頭を撫でようと手を伸ばすと、彼女は頭をこちらに向けてきたので、思い切り撫でてやる。

 よく見ると、プラエちゃんが頭をこちらに向けるために前傾姿勢になった結果、抱っこされたリウムちゃんが彼女のおっぱいに埋もれてしまっている。

 息苦しいのかぺちぺち叩いて訴えているが、プラエちゃんは気付いていないようだ。

「やんっ」

 助けようかと思ったその時、リウムちゃんの手が敏感なところに当たったようで、プラエちゃんが弾かれたように頭を上げた。

 リウムちゃんは腕から下りて、クレナの後ろに隠れてしまった。

 そしてプラエちゃんは痛かったのかビックリしたのか、涙目でこちらを見てきた。ここは大丈夫、大丈夫と撫でて慰める。もちろん、撫でるのは頭である。


 今度はプラエちゃんが俺に甘えてきたので、腰を下ろして存分に可愛がる事にする。もたれ掛かられると重いが、どんと来いである。

 すると俺の頭の上にデイジィが乗って来た。俺がしばらく動かないと思ったのだろう。

 それにしても、彼女が横たわるとやっぱり大きいな。雪菜とリウムちゃんが近付いてきて、プラエちゃんの腰を枕に寝転んだ。

 このようにプラエちゃんはその大きな身体から皆に甘えられる事が多く、それを可愛がる。しかし、彼女自身もまた甘えたがりなのだ。

 その大きな頭を抱えるようにして撫でると、プラエちゃんは頬を緩めて嬉しそうな笑みを浮かべた。

 クレナとセーラさんは、流石に二人には続かず俺の両隣りに腰を下ろす。

 そしてセーラさんも、プラエちゃんの頭を撫でた。

「私はやっぱり、こうやって甘えてもらう方が好きですね」

「私もどっちかというと、そっちね」

 クレナが同意している。周りの目が無い時は甘えたがる事には触れないでおこう。

 それはともかく、確かにセーラさんにはそういうところがある。光の神殿にいた頃も子供達の面倒を見ていたな。一緒にシャワーを浴びさせてあげていた。

 時間があれば、また子供達を呼んでプールで遊ばせてあげるのもいいかもしれない。

 そんな話をしていると良い匂いがしてきた、

 軽食を用意したロニ達が二階に上がってきて、プラエちゃんがバッと顔を上げる。すると彼女を枕にしていた雪菜とリウムちゃんがコロンと転がった。

 春乃さんも来たので、彼女も交えてあの頃の思い出話に花を咲かせる。

 まだ恥ずかしそうにしていたので、たくさん話して、なし崩し的に誤魔化してしまおうという意図もあったりする。避けていると、かえって長引いてしまうからな。

 彼女も察してくれたようで、頬を染めながら積極的に話に乗ってきてくれた。


 軽食も食べ終え、そのまましばらくゆったりとした時間を過ごす。

 そこでふと気になった。まだ遠征軍の問題が残っている。俺達はいつまでのんびりしていられるのだろうかと。

「そういえば、聖王家の話し合いってどれぐらい時間が掛かると思う?」

「今日一日でって事は無いでしょうね。状況を確認して、それから考える時間を置いて翌日に結論。まぁ、状況確認にどれだけかかるか次第じゃない?」

「先行できてるとはいえ、そこまで余裕がある訳じゃないんだが……」

「聖王もお疲れでしょうし、じっくり状況確認って事は無いんじゃないでしょうか?」

「ハルノの言う通りね。その辺りも加味して今日明日で状況確認、明後日に王子の処分を決めて、その後遠征軍への対処をフランチェリス王女に任せるって感じじゃない?」

「王子の処分か……どうなるだろう?」

「それは聖王家次第ね。遠征軍に対処する分には関係の無い話よ」

「六女神の神殿の件についても、王子に関しては気にしなくていいと思いますよ。もう口出しする事もできなくなるでしょうし」

 クレナと春乃さんが言う。なるほど、それもそうか。

 どういう処分が下されるか分からないが、今回の一件で、王子の立場は弱まるだろう。逆にフランチェリス王女の立場は今より強まるはずだ。

 それ以上については、俺達が口出しする事ではないだろう。というか、下手に深入りしない方がいい。

「じゃあ、明後日ぐらいに連絡が来ると考えておけばいいかな?」

「明後日に王女が対遠征軍の責任者に任命されて、私達に連絡が来るのは更に翌日って可能性もあるわよ?」

「王女は、事前に根回ししてくると思う」

「……ああ、確かに」

 王女は、その辺りはキッチリやってくると思う。

 ならば今日の内に食料補給の注文だけでも済ませておこうか。大量の食糧は用意するにも時間が掛かるからな。

「量を考えると、何軒かに分けて注文する事になるでしょうから、神殿の人に頼んだ方がいいかもしれませんね」

「私が神殿の者を呼んできましょう」

「ありがとう、サンドラ」

 詳しい地元の人に頼めるならその方がいいだろう。お礼を言ってサンドラを見送った。

 こちらは待っている間に注文をまとめておこう。

「ロニ、どれくらい注文すればいい?」

「そうですねぇ、お肉を補給しておきたいです」

 魚は水の女神釣り堀で手に入れられるが、肉は外で狩りをする必要があるからな。

「あと、新鮮なお野菜も欲しいですね。漬物ばかりでしたから」

「ああ、果物も欲しいな。滞在中にも食べておきたい」

 風の女神冷蔵庫があるとは言え、長旅になると保存できるものは限られてしまうのだ。

 真っ先に食べられなくなるのは、新鮮な野菜や果物である。

 そのまま何が欲しい、何が食べたいと皆で盛り上がりながら紙にまとめていると、サンドラが神官を連れて戻って来た。

 何故か二人がかりで見覚えのある神具を抱えてきている。

「それは確か……ステータスカードのだったか?」

 そう、ステータスカードを作る時に使用した神具だ。更新にも同じものを使う。

「ええ、せっかく戻って来たのだから更新してはどうかと言われましたので」

 俺が『無限バスルーム』の扉から離れられないから、わざわざ持ってきてくれたのか。

 確かにアレスには光の神殿が無くて更新できなかったし、丁度良いかもしれない。

 早速カードを部屋から持ってきて、ステータスを測定してもらう。

 神具に手を当て、静かに目を瞑る。


 次の瞬間、強烈な爆発音が耳をつんざいた。


 何事かと慌てて目を開けてみると、神具が煙を噴いていて慌てて手を離す。

 周りを見ると、皆耳を押さえてしゃがみ込んでいた。

 向かいの神官を見てみると呆然と立ち尽くしていた。何が起きたか分からないようだ。

「な、何があった……?」

「今……神具がピカッって光って、その後ものすごい音が……」

 先程の耳をつんざいた音か。改めて神具を見てみると、手を当てる部分が赤くなっていた。もしかしなくても熱くなっているのか?

 あのまま手を当てていたままだとどうなっていた事か……。

 皆を助け起こす。幸い、光と音だけで目と耳がやられた以外の被害は無いようだ。

 しかし、また何か起きるかもしれないと遠巻きにしていると、リウムちゃんが近付いて懐から取り出したナイフで器用に側面のカバーを外す。

 何が起きたのか、近付いてリウムちゃんと一緒に覗き込んでみると神具の中は焼け焦げて真っ黒になって煙が出ていた。

「まさか……中で爆発してたのか!?」

「多分、そう」

 リウムちゃんが答える。カバーが耐え切れなかったら、周りにも爆発の被害が及んでいたという事か。頑丈なカバーで良かった。

「でも、どうしてこんな事に……壊れていたのか?」

「多分……トウヤさんのMPが多過ぎたせいかと」

「俺のせい!?」

 ラクティの指摘に思わず声を上げてしまった。MPがステータスカードに収まりきらないぐらいに成長していたのは知っていたが、まさかこんな事になるとは……。

「す、凄いですよ! 流石は『女神の勇者』! これは伝説に残ります!!」

 我に返った神官が、興奮気味にまくし立ててきた。いや、こういう事で伝説に残すのは勘弁してくれ。下手をすれば皆に怪我をさせていたんだぞ。

 ここは元同僚のセーラさんに止めてもらおう。

「凄い! 凄いですよ、トウヤさん! これは奇跡です!!」

 いいえ、ただの事故です。

 というかセーラさん、あなたもか。いつもの落ち着きはどこへやら、きゃーきゃー歓声をあげてぴょんぴょん跳ね回っている。

 ちょっと可愛いぞ、セーラさん。できれば映像に残して、落ち着いたのを見計らって見せてやりたい。

 もしや神殿関係者は皆こうなのかと思ったら案の定、サンドラだけでなくリンも同じような反応をしていた。ルミスにいたっては、ものすごくキラキラした目で俺を見ている。

 とりあえずこの様子ならば、神具を弁償しろとか言われないだろうから、その点については一安心である。

 そんな事を考えてしまうあたり、実は俺自身も混乱しているのかもしれない。

神具「リア充爆発しろ」

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― 新着の感想 ―
[一言] 旧型のスカウターはこうなりますね(笑)
[良い点] セーラさんかわいい [気になる点] 他の人達のカードの更新はどうするの? [一言] やっとスカウターを爆発させる域に達したか……。 ところで、トウヤは各地に勇者の遺物と呼べる痕跡を残して…
[一言] ステータスを表示する事も、冬夜を爆発させる事もかなわず自壊しましたか 神器にとっては、さぞかし残念だった事でしょうw
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