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異世界混浴物語  作者: 日々花長春
神泉七女神の湯
181/206

第172話 湯が如く7 撫でりと湯浴み着の行方

 しばらくして満足気な春乃さんが離れると、隣のロニは、恥ずかしそうに俯いていた。

 しかしこちらが気になるのか、チラチラとこちらを見ている。ふと視線が合うと、顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。

 しかし、すぐにこちらを見てきて、再び目があった。その視線にも期待の色が見える。

 分かっている。頑張ったのはロニも一緒だ。ロニに向けて両腕を広げると、彼女はおずおずと近付いてくる。

 最後はこちらから腕を伸ばし少し強引に抱き寄せたが、ロニは抵抗する事なく腕の中に納まった。

 ここまでくると、ロニも目を輝かせてこちらを見上げてくる。褒めて褒めてと、そのキラキラした目が語り掛けてくる。

 そこまで期待されては応えねばなるまい。俺はその頭を抱き寄せ、わしゃわしゃと撫でまわす。するとロニは鼻先を俺の首筋にすりつけるようにして応えてきた。

 お返しにと、大きな耳の付け根を優しくマッサージ。ロニは気持ち良さそうに、そして恥ずかしそうに身をよじらせた。確かな存在感を示す柔肉が二人の間で形を変えていく。

「くぅん……♪」

 目を閉じたまま、甘い声を漏らす。狼の亜人・リュカオンだけど、猫なで声だ。

 クレナの前ではしっかりした従者であろうとしているため、そういう素振りを見せようとしないロニ。

 しかし、俺は甘えても大丈夫と判断しているようだ。実のところマッサージされるのは嫌いではないらしい。

 ロニが腰を浮かせて、俺の身体に腕を回し抱き着いてきた。俺は手を下に伸ばし、湯浴み着の裾から手を入れて、足の付け根からふとももにかけてゆっくりと撫で回す。

 湯舟の中で見えにくいため、時折指先が際どいところに触れてしまったりする。その度に彼女の腕に力が入り、二人の密着度が増していた。

 しかし、不意にロニが離れ、両手で自らの湯浴み着の裾を掴む。

「トウヤさま……」

「それはダメ」

 湯浴み着をめくり上げようとする手を止めた。そんな切なそうな目で見ないでくれ。

 次はお腹を撫でて欲しいのだろうが、湯浴み着をめくり上げてしまうと変態、もとい大変な事になってしまう。

 しかし、くぅ~んと鼻を鳴らしながら見つめてくるロニには勝てない。湯浴み着越しに撫で回すと、ロニは顔を火照らせ、甘い吐息を漏らしながら受け容れてくれる。

 そのまま撫でていると、またロニが抱き着いてきた。密着するとお腹は撫でにくくなるため、再び脚の方に手を伸ばすと、ロニの方から片脚を近付けてくる。

 倒れないように支えようとすると、彼女はそのまま身体を預けてきた。やはり湯浴み着越しではなく直に撫でられる方が嬉しいようだ。

「……それはダメ」

 なお、春乃さんとラクティも湯浴み着をめくり上げようとしていたが、それはしっかり止めておいた。うらやましそうな目をしてもダメです。



 それからお互いが満足するまで撫でまくった。

 今はロニとラクティが交代して、ラクティを抱っこしながら和んでいる。

「それにしても……冬夜君、すごいですね」

 春乃さんが、ふとそんな事を言ってきた。

「何が?」

「MPですよ。冬夜君は、こんなにMPを使っても余裕そうで……」

 ああ、そっちか。俺の方は余裕だったが、春乃さんの方はキツそうだったな。

 やはり普段から使っているかどうかの違いだろう。春乃さんは『無限リフレクション』は、俺の『無限バスルーム』みたいに日常的に使うものではないからな。

 ステータスは使用すればする程成長するし、逆もまた然りだ。

 俺みたいに直接神様から指導を受けてる訳でもないし、日常的にギフトを使って鍛えるという発想も無かったのだろう。

「私も修業とかした方がいいんでしょうか?」

「修業って……魔法の勉強を?」

「それも手ですね。時間は掛かるでしょうけど……」

 でも、俺より早く覚えられそうな気がしないでもない。

「ハルノさんも、ギフトを使うのが一番だと思いますよ?」

 膝の上のラクティが言った。

「それは私も考えた事はあるんですけど……その、消しちゃいませんか? ここ」

「あ~……」

 春乃さんが言っているのは『無限バスルーム』内の空間の事だろう。

 聖王都から旅立つ前、まだ小さなユニットバスだった頃に中で使った事があった。

 あの頃は何の問題も無かったが、彼女のギフトは風の女神の力を受け継いだ事で大きく成長、変化を遂げている。

 今使うとどうなるか分からず、下手に試す事もできなかったのだろう。

「えっ? 消せませんよ?」

 しかし、ラクティはあっさりとそれを否定した。春乃さんは呆気にとられた顔をしてこちらを、正確には俺の膝の上のラクティを見ている。

「今のここは『神域』に属するものですから、ギフトでは消せません!」

 初耳だぞ、それ。いや、今まで考えた事も無かったけど。

「『神域』って何ですか?」

 春乃さんが尋ねた。俺も同じ疑問を抱いていた。

「私の夢……は、見た事ないですよね……。そうだ! 風のお姉様がハルノさん達を『水の都』に送った時に使ったルートも神域ですよ!」

 得意げな顔で説明してくれたラクティ。女神自身の力、という事だろうか。

「俺の『無限バスルーム』も、それと同じだと?」

「はい! だから私の新しい弟なんですよっ!」

 彼女の説明をまとめると『無限バスルーム』の空間や設備は神域になっているらしい。ギフトよりワンランク上という解釈で合っていると思う。

 いつからそうなっていたかというと、実は『無限バスルーム』に風呂以外の空間が誕生した時から神域になり始めていたらしい。

 混沌の女神の祝福を授かっていたのは、この世界の召喚された当初からだったという話だし、その辺りの影響もありそうだ。

「つまり、ここで私のギフトを使っても『無限バスルーム』は消えない?」

「この『場』は消えません。『無限バスルーム』が生み出したものは消えますけど」

「お風呂場は消えないけど、お湯とかは消えるという事ですか……」

 春乃さんが、真剣な顔をして考え込んでいる。

「……つまり、打たせ湯で滝行みたいな修業が本当にできる?」

 しかし、次に続いた言葉はどこかズレている気がした。

 真剣な表情のままなだけに、どう反応すればいいか分からない。いや、そのお湯を『無限リフレクション』で消し続ければ修業になるのは確かなんだろうけど。

 というか、やってみたいと思っていたのだろうか、滝行。意外とお茶目かもしれない。

「早速やりましょう!」

 ざばっと勢いよく立ち上がる春乃さん。

 やけに楽しそうなので、普通にお湯につかってやれば周りのお湯を際限無く消して同じ事ができるのでは、とは指摘しない事にした。

「いや、疲れてるんじゃ……」

「鉄は熱い内に打てです!」

 言い換えれば思い立ったが吉日、だろうか。

 そのキラキラした目を見てこれは止めても無駄だろうと判断し、ついて行く事にする。打たせ湯ができるのは一階の檜風呂、奥の壁だ。

「クレナ達はどうする?」

「私とロニは、もう少しゆっくりしていくわ」

「私は一緒に行きますよ~」

 クレナとロニは残るとの事なので、ラクティだけを連れて三人で一階に戻る。

 プラエちゃん達も既に上がっていたようで、一階には俺達三人しかいなかった。

 春乃さんは早速湯をかき分けながら檜風呂の奥に進み、流れ落ちる湯の前に立った。傍から見ても、わくわくしているのが見て取れる。

「春乃さん、気を付けて」

「そうですね、最初は短時間だけやって様子見を……」

 お湯を消すだけなので何も問題は無いだろうが、念のため側で見守っておこう。

 何かあった時すぐに動けるよう、ラクティと二人で側に控えておく。


「……行きます!」

 気合いを入れた春乃さんは打たせ湯の下に立った。そして頭から湯を被りながらこちらを向き、目を瞑り、念仏を唱えるかのように両手を合わせた。

「いざっ! 『無限リフレクション』!!」

 そして俺とラクティが見守る中、ギフトを発動。

 その瞬間、彼女の身体が光を発し、流れ落ちていたお湯が消えた。彼女の頭上、少し上の辺りで湯が消えている。お湯は流れ続けているが、途中で消えてしまっているのだ。

「おぉっ!」

 また、彼女の足元のお湯も消えていた。湯舟の中に立っているのに、お湯が途中で途切れて彼女の周りだけお湯が無い空間ができている。なんとも不思議な光景だった。

「…………おぉぅっ!?」

 そして……春乃さんの湯浴み着も一緒に消えていた。

 一糸まとわぬ姿となり、その女神の如き肢体が露わになっている。

「見てください、冬夜君! お湯、消えてますよねっ?」

 目を瞑りながら嬉しそうに言ってくる春乃さん。

 いや、見てくださいと言われても困るんだ、春乃さん。

 驚いて数秒見てしまったが、我に返り慌てて目を逸らした。

 そういえばそうだ。湯浴み着だって、『無限バスルーム』の力で生み出したものだ。

 そうこうしている内に春乃さんも自分の状態に気付いたようで、慌てて『無限リフレクション』を切り、両手で自分の身体を隠すようにしてしゃがみ込んだ。

 打たせ湯も湯舟のお湯も元に戻ったが、消してしまった湯浴み着は戻らない。当然だ、お湯だって消したものが帰ってきている訳ではないのだから。

「み、見ました……?」

「……ちょっとだけ」

 ほんの数秒である。その数秒の記憶が脳裏に焼き付いているが。

「ちょ、ちょっと待ってて。すぐに替えを取ってくるから!」

「あ、私が行ってきます!」

 俺が動くよりも早く、ラクティが駆け出して行った。

 いや、ここは俺に行かせて欲しかった。むしろここで、一糸纏わぬ春乃さんと二人きりにされても困ってしまう。

「…………」

「…………」

 無言の時間が気まずい。

 ラクティは大急ぎで取ってきてくれたのだろうが、彼女が戻ってくるまでの時間がやけに長く感じられるのだった。


 その後、春乃さんは修業のためにフィークス・ブランドに湯浴み着を注文して作ってもらうと言い出した。

 普通の服を着て、足元のお湯を消せばいいのではと思ったが、触れないでおいた。春乃さんはきっと滝行がしたいのだから。

 ちなみに、彼女の提案に真っ先に賛同の意を示したのはロニだった。

 上下が分かれたセパレートタイプの湯浴み着が欲しいらしい。こちらは直にお腹を撫でて欲しいのだろう。

 こちらも入浴時以外ならばいつでも撫でてあげるのだが、それについてはやはり触れないでおいた。何故ならば、俺が撫でたかったからである。

 今回のタイトルの元ネタは、1月16日に発売したばかりのPS4の新作ソフト『龍が如く7 光と闇の行方』です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] バスルームの外に出して一定時間経って消えなくなった湯あみ着を使えばいいのでは?石鹸のように。
[良い点] おお、春乃さんからも有能なポンコツの匂いが。 [気になる点] 優しく愛撫、ではなくわしゃわしゃとやっているのか。 https://twitter.com/aims2koz/status/…
[良い点] 読者視点では一目瞭然な地雷に気付かずに全力で踏みに行く登場人物たちによって、ラッキースケベは作られているのだなぁ。 [気になる点] 混浴でイチャイチャするのはいいんですが! 物凄くイイんで…
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