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異世界混浴物語  作者: 日々花長春
神泉七女神の湯
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第170話 お風呂への道

 城での戦いが終わり、城を出た俺達はそのまま光の神殿に向かったのだが、神殿の前に到着したところでひとつ問題が起きた。

「いーーーやーーーーーっ!!」

 絹を裂くよう……でもない野太い声。『不死鳥』が光の神殿に入るのを嫌がったのだ。

「あ、あの、それは一体……」

 門番をしていた若い神殿騎士がおずおずと尋ねてきた。警戒するのも無理は無い。見た目は骸骨なのだから。

 そこで俺は、見ての通り魔族だが危険は無いと答えておいた。嘘ではない、彼は元魔将であるが、同時に闇の神官だ。それも高位の。

 それだけにラクティへの信仰心が篤く、彼女の嫌がる事はしない。

 光の神殿に入るのを嫌がっているのも、闇の神官だからなのだろう。

「ラクティ、先に入ってくれ」

「えっ? あ、はい」

「女神さまあぁぁぁぁぁっ!!」

 ラクティが先に光の神殿に入ると、『不死鳥』は態度を豹変させてその後を追った。その唐突な動きに神殿騎士達は反応できていない。

 無理もない。『百戦百敗将軍』といっても、それは軍の指揮官としての話。とてもそうは見えないが、個人としては五大魔将と並ぶ力を持っているのだから。

 実際城での戦闘中も一人で勝手に中庭に吶喊し、十人以上の騎士達を一人で相手取って大立ち回りを演じていたらしい。

 しかも一度倒されたが、すぐに復活してリベンジしたそうだ。やはり不死身である。

「……多分、魔将やってた時もあんな感じだったんでしょうね」

 クレナが呆れ顔でそう呟くと、春乃さん達もうんうんと頷いた。

 なるほど、指揮官が真っ先に突っ込んでしまっては指揮するどころではないだろう。彼が百戦百敗なのは、その辺りにも原因があったのかもしれない。

 それはさておき、神殿の外にトラノオ族の戦士達がたむろしていると周りの人達は不安に思うだろう。俺達もすぐに神殿に入る。

 とはいえこちらは人数が多いので、すぐに神殿長に挨拶をして許可を取り、中庭に『無限バスルーム』の扉を開かせてもらおう。

 今回は寄進の果物を買う暇が無かったので、『無限バスルーム』が生み出す石鹸セットを寄進しよう。神殿長も知っているものなので問題は無い。

 せっかくだし、今夜は夕食に招待しよう。どれだけ成長したかを見てもらうのだ。

 その時に六女神の神殿を集める事についても話すとしよう。


 その後、中庭を使用する許可はすぐに出た。神殿長の部屋の窓からは、中庭がトラノオ族で埋め尽くされている様子が見えていたはずなので、当然といえば当然である。

 すぐに中庭に戻り、皆を『無限バスルーム』に入れて休ませる。

「冬夜君、大丈夫ですか? 謁見の間でも結構MPを使ったはずですけど……」

「ああ、問題無い問題無い」

 大量の泡を謁見の間に巻き散らしたが、逆に言えばそれだけだ。大したものではない。

「春乃さんの方は大丈夫なのか?」

「正直、疲れました……」

 やはりか、『無限リフレクション』を連発していたから無理もない。

 そういう事ならば、ゆっくりと休んでもらおう。遠慮しないで休んでくれと皆を『無限バスルーム』に入れる。

「プールをお借りします」

 早速ルリトラは、ドクトラ達を連れて奥のプールに水浴びをしに行った。

「それじゃトウヤ、私達もお風呂入りましょ」

 クレナに誘われ、俺達も二の丸大浴場で休ませてもらう事にする。

「そういえば水浴びもお風呂も、トウヤさまのMPを使ってるんですよねぇ……」

「ああ、でも負担は掛かってないから、気にせず休んでくれ」

 ふと思い出したかのようにロニが言う。

 とはいえ航海中の滞在人数を考えれば、謁見の間で使ったMPなんて、それこそ「大したものではない」事が分かるだろう。

 来客があった時に備えて、普段から二人だけで入浴しているブラムスとメムに加え、サンドラ、リン、ルミスも後回しにする事になった。

 サンド・リザードマンはルリトラで知っているだろうが、闇エルフを初めて見る人も多いだろうから、神殿騎士であるサンドラ達がいてくれた方がいいだろう。

「あの、私も……」

「いや、セーラも休め」

 セーラは自分もと手を挙げたが、サンドラに止められている。

 彼女も城では治療に駆け回っていた。そうは見せないようにしているようだが、やはり疲れているのだろう。

 こういう時、休みた~いと言いそうなリンもうんうんと頷いてセーラの背を押しているあたり、彼女もセーラが疲れている事を分かっているのだろう。

「それじゃ行っくよ~♪」

 ここはゆっくりと休んでもらわねばなるまい。そう考えていると、プラエちゃんが動いた。早速セーラさんを抱き上げて駆け出していく。

「えっ? ちょっ、この年で抱っこは~……!」

 瞬く間にセーラさんの声が遠ざかっていった。

 そりゃ恥ずかしいだろう。彼女の抱っこの仕方は、赤ん坊を抱き上げるような縦抱きなのだから。俺も皆に見られている所では遠慮したい。

 俺も行こうかと思っていると、くいっくいっと袖を引っ張られた。何事かとそちらを見てみると、キラキラした目でこちらを見ている雪菜の姿が。

 プラエちゃん達を見てあの頃を、生前の事を思い出したか。

 そういう事ならばと雪菜を横抱き、いわゆるお姫様抱っこにする。

「おにいちゃぁ~ん~♪」

 すると雪菜はへにゃ~っと緩んだ笑みを浮かべ、俺の首に腕を回して頬を寄せてきた。

 肩に乗っていたデイジィが、雪菜に巻き込まれないよう、俺の頭の上に移動する。

 その様子をリウムちゃんとラクティがうらやましそうに見ている。更に二人の後ろに、こっそり春乃さんも加わっていたりする。

 流石に全員抱っこするのは厳しいので、後でという事にしてほしい。


 着替えの準備をして二の丸大浴場の脱衣場に入ると、既にセーラさんとプラエちゃんの姿は無かった。もう浴場の方に行っているのだろう。

 プラエちゃんのものであろう衣服が脱ぎ散らかされており、床に散乱している。

 ん、あの白い大きなものは……思わず視線を逸らそうとすると、その前に雪菜が両手で目隠しをしてきた。

「も~、プラエちゃんったら!」

「すぐに片付けますね~」

 声から察するに、ラクティが片付けてくれたようだ。

「……というかあの二人、まっすぐここに向かってたけど着替えは用意しているのか?」

「そういえば……無いわね」

「私、用意してきます!」

 目隠しされたまま言ってみると、クレナとロニの声が聞こえてきた。そして一人分の足音が脱衣場から出ていく。やはり用意されていなかったようだ。

 俺が用意する訳にはいかないし、そちらはロニに任せておこう。

 という訳でこちらは雪菜を下ろし、デイジィも頭から降りてもらう。

 それから服を脱いでいると、背後で春乃さん、ラクティ、そしてリウムちゃんの三人が真剣な顔でジャンケンをしている。

 そんな三人をクレナが何か言いたげな顔で見ていた。あれは呆れ……ではないな。自分も気になるけど、恥ずかしくて参加できない顔だ。後でフォローしておこう。

 とりあえず、三人が何をしたいのか察しがついた。こちらは手早く脱いで、湯浴み着に着替えておこう。

「……勝ち」

 勝負を征したのはリウムちゃん。誇らしげにチョキを見せながら近付いてきた。

「……いや、服を着たままじゃ連れて行けないぞ」

 そう指摘すると服を着たままだった事に気付いたようで、俺の隣で黙々と脱ぎ始める。

「んっ」

 そして一糸まとわぬ姿で両手を広げ、改めて抱っこを求めてきた。

「……湯浴み着をちゃんと着てくれ」

「はいはい、これ使いなさい」

 既に着替え終えていた雪菜が、リウムちゃんの分の湯浴み着を持ってきてくれた。

「……準備完了」

 もそもそと着替え終えたリウムちゃん。心無しか得意げな顔になっている彼女を抱き上げ、雪菜とデイジィを連れて浴場に入る。

 ちなみに縦抱きである。雪菜やラクティは子供っぽいと嫌がるが、リウムちゃんはこちらを好んでいた。

 なお、そんな子供っぽいと言われる縦抱きだが、誰も見ていないところでこっそりやる分には、クレナと春乃さんも意外と喜んでくれるのは秘密である。

 「~への道」というのは色々とありますが、今回のタイトルの元ネタとしてイメージしていたのは、マンガ『ドラゴンクエストへの道』でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 神殿到着、そしてラクティもフェニックスも神殿内へ 肌色タイムもなんだか久々な気が…ここまで魔法使いまくり+魔力喰い使用+入浴のコンボでも大丈夫だと、久々ステータス更新時のバグめいた表示が楽し…
[一言] 既にセーラさんとリウムちゃんの姿は無かった。 ⇒これリウムちゃんではなくプラエちゃんではないでしょうか。
[一言]  はるのんのMP不足は修行不足からですなぁ  せっかく冬夜と合流して(お風呂で)安全にギフトを鍛錬できるようになっても特訓しなかったですからねぇ
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