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異世界混浴物語  作者: 日々花長春
誘惑の洞窟温泉
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第138話 Lのレコンキスタ

 翌日から俺は、せわしない日々を送る事となった。

 まず港エリアで待っているパルドー達を全員呼び寄せた。滞在場所に関しては、白蘭商会の別邸を貸してもらった。『無限バスルーム』頼りだと、俺が動けないからだ。

 その別邸は隣に倉庫があり、キュクロプス達に使ってもらっている。そこならば天井が高いので彼女達の身長でも問題無く過ごせるのだ。

 もちろん礼金を支払おうとしたが、それについては断られてしまった。あちらとしては魔王の孫娘であるクレナに貸しているつもりなので必要無いとの事だ。

 それと『不死鳥』、正確にはその頭についてだが、闇の和室の床の間に飾っている。

 まだ落ち着いていないので身体を返す訳にはいかなかったのだが、床の間にあった闇の精霊石を見て何やら感動していたので、並べて置いておく事にしたのだ。

 闇の精霊石があればわめき散らしたりしないので、和室の客人扱いという事にしてしばらく放っておく事にする。

 一方コスモスは、神南さんが持ち込んだ例の武闘会のチラシに興味を持った。

 王女も武闘会で結果を残せば勇者としての功績になるという事で賛成というか、むしろ乗り気だった。俺と春乃さんが出場しない事に驚いていた程だ。

 という訳で彼等一行は武闘会の会場近くの宿を取ったようだ。立場的に魔将の世話になるのは気が引けるというのもあるのかもしれない。

 神南さんの方は、あれから顔を見せない。俺達を誘うのはスッパリ諦めたらしく、武闘会当日まで特訓すると毎日地上に出ているそうだ。借りた別邸も地上への出口に近い。

「そういえば、ここの地上ってどうなってるんだ?」

「暑いでござるよ」

 聞いたところ地上は日差しが強く、木々が少ない荒野が広がっているとか。

 赤茶けた大地を港に入る前に見たが、そんなに暑いのか、ここは。

「『空白地帯』みたいなものか?」

「近いのではないでしょうか。我等トラノオ族は、アレスから流れてあの地にたどり着いたと聞いております」

 それなら地下都市が発達するのも分かる気がする。同じく地下にある魔王城跡地も地上に比べると涼しく過ごしやすかった。

 そんな涼しい地下都市だが、光が差し込まないという問題があるため、アレスの人達にとって日の光を浴びる時間はとても重要なのだそうだ。

 地上には憩いの場が造られており、現在の流行はパターゴルフと鷹狩りなのだとか。前者が元々アレスにあったもので、後者は魔将達が持ち込んだものらしい。今となってはどちらもアレスの伝統だ。

 なお、調教可能な鳥モンスターを「鷹」と呼んでいるだけで、俺達の世界の鷹とは別種との事。鷹の美しさを競い合うコンテストなんてものもあるらしい。

 魔王も興味を持ったらしく、ここ数日は毎日のように地上に出掛けている。

「大きくて派手なのを捕まえるんだって張り切ってたわ」

「ああ、そこから始めてるのか。『魔犬』のを見せてもらったけど、カラフルだよな」

 たとえるならば南国の鳥だろうか。『魔犬』の鳥はさほど大きくはないが、鮮やかな黄色の羽、そして鋭い目とくちばしを持っていた。

 俺も鳥モンスターを飼うというのはペット的な意味で興味はあるが、そんな暇は無いというのが正直なところだ。


 ここ数日の俺の行動を簡単に説明しよう。

 まずは俺が出掛けて『無限バスルーム』が使えなくても大丈夫なよう、別邸での皆の生活環境を整えたのだが、これは要するにそれだけ出掛ける必要があるという事だ。

 最初に行くべきところは大地の神殿。闇の神殿再興について色々と話し合わなければならない。ここで反対されるようなら穏便な再興など夢のまた夢なのだから。

 ちなみに大地の神殿の見解は、反対はしないが地下都市での再興は止めて欲しいとの事だった。また地上ならば土地は空いているが、そちらは環境的にはお勧めできないとも言われてしまった。ただ暑いだけでなく、昼と夜の寒暖差が激しいらしい。

 要するに「アレスでは勘弁してくれ」という事だろう。

 次にアレス王家からの招待を受けた。魔王が復活した件についてかと思ったが、それは本命ではなく、『無限バスルーム』に生まれた大地の祭壇だった。どうやら神殿ルートで情報を得たらしい。

 これが祭壇を寄越せみたいな話ならばこちらも対応を考えねばならないが、礼拝したいだけだったようなので、こちらも礼儀正しく、『白面鬼』と共に出向く事にした。

 クレナと春乃さんを伴い、ルリトラを護衛に、ロニを侍女として連れていく。

「アレスの礼装って……え~と、あれだ、時代劇で大名とかが着てるヤツ!」

 後で春乃さんに聞いた事だが、あれは「かみしも」というらしい。それは江戸時代からの名称らしいが、魔王達の時代にも同じものはあったそうだ。

 おかげで服装だけ時代劇である。しかも大名クラスの豪華さの。

「我々の影響でしょうね。ここを拠点にして五百年ですから」

 魔将達はアレスに溶け込めるようおとなしくしていたそうだが、その一方でアレスも魔将達から影響を受けていたという事か。鷹狩りの流行もそういう流れだったのだろう。

 クレナ達も華やかな着物でいかにもお姫様な出で立ちだ。ロニは二人に比べると控えめだが、こちらも可愛らしい。

 流石にリザードマン用の裃は無かったため、ルリトラはいつもの鎧姿だ。

「アレスにもリザードマンはいるのですが、彼等は前掛けぐらいしか着ませんからね」

 そういえばトラノオ族も、そんな感じだったな。

 『白面鬼』によると、アレスには港で見たマーシュ・リザードマン以外にもサンド・リザードマンが住んでいるそうだ。ただしメレク族という別部族で、身体中に大きく鋭いトゲが生えているらしい。

「ルリトラの親戚?」

「いえ、確か我等の先祖が『空白地帯』に追われる原因になった部族がそんな名前だったかと……」

「……なんでまた?」

「水場を巡る争いだったはずです」

 その頃は地上のサンド・リザードマンと、地下都市の闇エルフが対立していて、地上の限られた水源を巡る争いが度々起きていたらしい。

 城の衛兵にはメレク族が多いらしく、城に行くと顔を合わせる事になりそうだ。

「ルリトラ、大丈夫か?」

「数百年前の話ですし、今更ですな」

 トラノオ族的には水場争いする敵がいない『空白地帯』に移り住めた事は良い事だったようで、特に遺恨は無いようだ。

 おかげで王宮でメレク族の衛兵と出くわしても特に問題は起こらなかった。あちら側も物珍しそうにルリトラを見ていたが、どちらかというとドラゴン・ボーンアーマーの方が気になっていたようだ。自慢の逸品だ、当然の反応であろう。

 そして謁見した国王一家は……闇エルフのアイドル集団だった。

 しかし紹介された王子と王女の年齢は既に百歳近いという。二人と並んでアイドルで通じそうな国王と王妃の年齢は考えない方が良さそうだ。

 礼拝は滞りなく済み、その後は昼食会だ。王族に出す料理という事で、王宮の料理人達が来て共同で料理するという事になった。

 大地の神殿長から味噌汁について聞いていたらしく、「女神のスープを出してほしい」と頼まれた。最初は土のスープと勘違いされていたが、そういう評価になったのか。

 まぁ、出すのは問題無いので「正しくは『女神の味噌汁』です」とだけ言っておいた。

 せっかくなので、王宮の料理人達が味噌や醤油を使ってどう料理するかを見せてもらおう。見るのは一緒に料理する春乃さん達だが。

 その間に俺は、クレナによる即席マナー講座で最低限恥をかかない程度のマナーを教えてもらい昼食会を乗り切った。

 アレス王家の人達、大地の祭壇よりも女神の味噌汁の方がリアクションが大きかったように見えたのは気のせいだろうか。

 それはともかく、その昼食会でも闇の神殿再興が話題になった。

 こちらもやはり再興するならアレス以外でと言われた。かつてハデスと友好関係を結んでいた事もあり、それならば支援してもいいそうだ。

 国土を削るのは勘弁だけど、外に友好勢力ができるのは歓迎といったところか。



 そんな多忙な日々が続き、ようやく一段落して落ち着いた時間が作れるようになったのは、一週間ほど後の事だった。

 武闘会は既に始まっており、今は予選でコスモスと神南さんが大活躍しているらしい。うん、やっぱり俺は出ている暇が無かったな。

 この一週間でケトルト、グラウピス達からも話を聞いてみたが、闇の女神は元々亜人の神だからか、明確な反対意見は出なかった。

 ヘパイストス王はどういう反応をするか。パルドーの意見を聞いてみたが、アレス王と変わらないのではないかと答えてきた。つまり、外の友好勢力なら歓迎という事か。

 グラウピス達の方は、風の神殿の再興も考えて欲しいと言われた。神殿長はどうするのかと尋ねてみたところ、プラエちゃんならば能力的に可能との事だった。性格的にどうかは触れないでおく。

 しかし、闇の神殿だけでも大変なのに、風の神殿もというのは厳しい。

 プラエちゃんも風の神殿再興を望んでいるようなので、なんとかしてやりたいとは思うのだが、物理的に二箇所の神殿再興を同時に主導するのは難しいだろう。

「ん……?」

 ここでふと、ある事に気付いた。二箇所じゃなければいけるのか?

 ケレスには光と大地の神殿があった。ヘパイストスにも炎と光の神殿があった。

 一箇所に闇と風の二つの神殿があってもいいのではないだろうか。

 アレス王と大地の神殿がアレス以外でと言ったのは、結局のところ信者の取り合いになるのを避けたいという意図があったのだろう。

 しかし、女神姉妹同士は仲が良いのだ。きっと許してくれる。いや、喜んでくれるに違いない。

「いっそ、他の女神の神殿も一箇所に……?」

 闇の神殿だけを再興すると、光の神殿と聖王家の反応が怖い。

 しかし、同じ場所に光の神殿を含む他の四柱の神殿もあればどうだろう?

 いけるかもしれない。これはセーラさんに話してみる必要がある。そう考えた俺は、早速彼女の下に向かった。

 今回のタイトルの元ネタは『Gのレコンギスタ』です。

 Lはラクティの頭文字です。

 元ネタの方に濁点が付いているのは、濁点が付いていた方が人気が出るから……という話を聞いた事があります。



 メレク族の名前は、モロクトカゲが元になっています。

 モロクは悪魔、もしくはヘブライ語で王を意味する神の名で、その別名がモレク、あるいはメレクとなります。


 サボテンの金冠竜から名前を取って「キンカン族」というのも考えましたが、第六天魔王がいるのに因縁のある明智光秀のあだ名だといわれている「金柑頭」を連想する名前はないわーという事で没にしました。

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