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異世界混浴物語  作者: 日々花長春
激動の海底温泉
114/206

第105話 幼女の逆襲

「じゃあ、頭からな。プラエちゃんは、ここの使い方教えるから、よく見てて」

「は~い」

 まずはリウムちゃんの頭からだ。並行してプラエちゃんへのレクチャーも進めていく。

 リウムちゃんは緊張した様子で身を縮こまらせており、髪を湿らせてシャンプーを頭につけるとピクッと肩を震わせた。この子はシャンプーが苦手なのでいつもこうだ。

 後ろではラクティが楽しそうにタオルを泡立てている。

 女神に背中を流させていると言うととんでもないが、この子は元々お世話好きなのだ。そういうところは女神っぽい……いや、違うか?

 ともかく、リウムちゃんの頭を洗いながらラクティに背中を流してもらう。こうしていると本当に和む。安らぎの時間である。

「こ、こら、洗いにくいって」

 リウムちゃんが、少しずつ身体を近付けてくる。これもいつもの事だ。このまま寝てしまう事もよくあるので、声を掛けて起こす。

「そっちも対抗しない」

「えへへ……」

 ラクティが対抗して、タオルだけでなく全身で背中にひっついてくるのもいつもの事である。少し照れ気味に笑われると、強く言えないのもいつもの事だ。

 雪菜が来てから、より甘えてくるようになった気がする。雪菜の甘えっぷりを見て羨ましくなったのかも知れない。

 そんな俺達の様子を、すぐ側で楽しそうに見ているプラエちゃん。眼帯に隠れていない瞳がルビーのようにきらめいている。

 俺の倍ぐらいはありそうな目だ。瞳に映る自分の顔がやけに大きく見える気がして、だらしない顔をしていないかと思わずまじまじと覗き込んでしまった。

 するとプラエちゃんは、きゃ~っと目をそらした。あ、見つめ合う形になっていた。しまった、不躾だったな。

「ゴメンな、ジロジロ見ちゃって」

「い、いいよぉ~、恥ずかしかっただけだから~」

 手をブンブンと振って照れ隠し。その姿を見る限りでは、肌が青色なだけの普通の女の子だな。手の動きによって起きたそよ風を頬に感じるけど。

 しかし改めて見てみると、幼気な性格とは裏腹に、身体つきはしっかりとした女性的なそれだ。その大きさのためピンと来ないが、人間でいうと二十歳ぐらいだろうか。

 って、いかんいかん。また見てしまった。今謝ったところじゃないか。

 明らかに俺の頭より大きいおっぱいが二つ、そこに並んでいるが、見てはいけない。我慢するんだ。

「ちょっ、これじゃ洗いにくい……!」

「今は……私の番……」

 見透かされたのか前からの圧力が強まった。全然痛くはないけど、流石に動きにくい。背中も力任せにゴシゴシされて、みるみる内に泡まみれになってしまう。

 プラエちゃんは、そんな俺達を変わらぬ笑顔で見ていた。

 前後の圧力にもがきつつも頭を洗い終え、泡を流す。リウムちゃんはこれが苦手なのでゆっくりとだ。

 それが終わるとラクティと交代だ。こちらも背中を流し終え、嬉しそうに俺の前にちょこんと座る。

 リウムちゃんは、プラエちゃんの懐にスッポリ収まって、そのまま一緒になってこっちを見ている。

 身体を冷やさないように湯船に……って心配する必要は無いか。プラエちゃんに包まれる形で心配しなくても暖かそうだ。

 リウムちゃんの頭の上に、大迫力のおっぱいが乗っている。う~ん、代わって欲しい。

「トウヤさん……?」

 おっと、また見てしまっていた。気を取り直してラクティの頭を洗い始めよう。

 いつものように洗っていると、ラクティも身体をすり寄せてきた。おすまし顔をしているけど、頬に火照りだけではない紅が差している。明らかにワザとである。

 この後は、リウムちゃんが背後に忍び寄ってのしかかってくるのがお約束だ。

「ぐえっ」

 と思っていたら、今日はプラエちゃんごと来た。

 重……くはない。ラクティに重みが行かないように身構えたが、プラエちゃんが体重は掛けないようにしてくれているようだ。

 でも、埋まっている。頭がたわわな果実に挟まれて埋まっている。

 このままでいたい気もするが、これではほとんど身動きできない。というか、ラクティが身体を擦り付けてきてる体勢がヤバい。

「ちょ……ちょ~っと離れてくれないかな? ラクティ洗えないし、リウムちゃん挟まってるから」

「このままで……いい」

「リウムちゃんこう言ってるけど、プラエちゃんも自分の身体洗わないと」

「……あたしは洗ってくれないの?」

 なるほど、それで待っていたのか。お望みならば……いや、ダメだ。この子は普通に望んできそうだ。流石に前は洗えない。

「身体は洗っても背中までだぞ? 頭なら後で洗ってやるけど」

「じゃあ、後でねっ!」

 嬉しそうに離れるプラエちゃん。ちょっぴり惜しい気もするが仕方がない。

「リウムちゃん、分からないところがあったら教えてあげて」

「……分かった」

 リウムちゃんも離れてくれたところで、ラクティに集中するとしよう。


 その後のラクティは、いつもより更に甘えてきた。この子は、こうやって口には出さず行動に出る事が多い。

 泡を流した後頭を撫でてやると、見ているこちらも幸せになれるようなほっこり笑顔を見せてくれた。

 甘えられると洗いにくいのだが、この顔を見ると何も言えなくなってしまうのだ。

 ふと隣を見ると、プラエちゃんがたどたどしい手付きで身体を洗っている。タオルはサイズの関係でバスタオルだ。

 背中はリウムちゃんが洗ってあげているようで、それを見たラクティが「お手伝いします」と立ち上がった。

 それにしても随分と不慣れな様子だ。今まで石鹸を使っていなかったのだろうか。

「その子、今日まで水浴びとかばっかりなんですよ」

 その時、声を掛けてきたのはリン。どこか楽しげな声だ。

 髪を洗い終えたところらしく、ウェーブの掛かった亜麻色の髪が水滴で光っている。

 クレナや春乃さんと比べると慎ましやかだが、スラッとしたプロポーションをしているのが、濡れた湯浴み着の上からでも分かった。

 彼女達の方はできるだけ見ないようにしていたが、少し離れたところにサンドラ、ルミスにいたっては入り口近く。蛇口二つ分しか離れていないリンは、かなり近いところに陣取っていた。

 しかし彼女はそんな事は気にする様子もなく、軽い口調で話を続ける。

「プラエも一度使った事あるんですけど、その時シャンプーが目に入っちゃって……」

「それから使ってなかったのか、石鹸も」

 リンはコクリと頷いた。

 モンスターでも悶絶するからな、このシャンプーは。というか、眼帯を着けているせいじゃないだろうか。

 もしかしたらプラエちゃん、気持ち良さそうに頭を洗われる皆を見て、自分もやってもらいたいと思ったのかも知れない。

「まぁ、私達もここんとこは使えなかったんですけどね。やっぱり良いわぁ、これ」

「? ユピテルで渡したのは足りなかったのか?」

「そうじゃなくて、ここじゃ水が貴重だったから」

「ああ、飲み水以外に使う余裕は無かったのか」

 周りが海水だらけだからか。

「そういう事なら存分に使ってくれ。俺のMPが尽きない内は無くならないから」

「モチロンそのつもり! ほら、こっちもサービスしちゃうから♪」

 しなを作りながらそう言ってきた。

「……もしかしてシャンプー目当てに『巡礼団』を辞めたのか?」

「それも否定しないけど、結構真面目に考えたってば。『巡礼団』止めても神殿騎士は辞めてないし」

「自分の信仰に背いた訳じゃない?」

「そこまで真面目に考えた訳じゃないけど……」

 どっちだよ、とツっこもうとしたら、不意にリンが真っ直ぐにこちらを見つめてきた。

「とりあえず、ハルノさまもトウヤさまも間違ってないとは思ったから……かな」

「そ、そうか……」

 信じてくれたという事か。というか急に真面目になるな。ドキッとしたぞ。


「あ、でも、向こうの二人はあんまりジロジロ見ちゃダメだよ。サンドラはガサツで無頓着なだけだけど、ルミスは普通に恥ずかしがってるから」

「聞こえているぞ、リン!」

 先程見せた真面目さはどこへやら、一転して楽しそうな表情を見せるリン。

 そんな彼女の物言いにサンドラは異議ありと声を上げる。あちらも髪は洗い終えているようで今は身体を洗っている。当たり前の事だが、湯浴み着を脱いだ状態でだ。

「は~い、ジロジロ見な~い」

 すかさずリンが視界を遮ってきた。しかし、既に脳裏に焼き付けた。

 ガサツなんて言われていたが、とんでもない。艷やかな藍色の長い髪に、高身長で均整の取れたプロポーション。特にスラッと伸びた長い脚が良い。正に美脚である。

 それが堂々と、こちらの視線を意に介する事なく、真っ裸で身体を洗っていたのだ。クレナ達だって身体を洗う時は、もう少しこちらの視線を気にするぞ。

「ゴメンねぇ、サンドラってば『巡礼団』のノリそのままだから」

「……『巡礼団』って、そうなのか?」

 俺の印象は「真面目そうな人達」というか、いかにも「才女」って感じだったが。

「男の視線から離れた、女ばっかりの集団生活だからね~。馴染み過ぎるとああなっちゃうんですよ」

「……そうなのか?」

「そうなんですよ」

 そういえばリンは出会った頃から他の『巡礼団』とは違うノリをしていたな。そういう部分に違いがあったのか。

「サンドラも、もう少し恥じらう! そういうところがガサツなんだって! 自覚持とうよ! ホント、無頓着なんだから!」

「そこまで言われる筋合いはないぞ? 見せる事がサービスだと言っていたのはお前だろうが。それが礼になるというのならば……」

「甘いわよ、無駄乳」

「むだっ!?」

「無駄にほっぽりだされても、ありがたみ無いって」

「あり……っ!?」

 なお、バストサイズはサンドラの方が上だ。リンの物言いは、その辺りも関係していそうな気がする。

 それとリンも一つ勘違いしているので、そこは訂正しておこう。

「待て、リン。サンドラほどの美人なら、それはそれとしてありがたみはあるぞ」

「ト、トウヤさま、お戯れはお止しください!」

「いや、その点に関しては大真面目だ。すごい美脚だし」

「美゜っ!?」

 流石に恥ずかしくなったのか、サンドラは身を縮こまらせて泡立ったタオルで脚を隠した。そしてすぐ後に無防備な胸元に気付いて腕で隠した。

「そう、それよ!」

「どれだっ!?」

「その恥じらいがいいのよ! トウヤさまも絶対喜んでくれるって!」

「ぁぅぁぅ……」

 サンドラはしばし口をパクパクさせた後、顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 要するに『巡礼団』の面々は、女性だけで旅をする生活を続けてる内に男性の視線に鈍くなってしまったのだろう。

 彼女達は女神の化身扱いなので、敬われ、近寄りがたい存在だった事もそれに拍車を掛けていたのかも知れない。

 基本的に旅から旅の生活だったらしいので、そんな事を気にしていては役目を果たせなかったとも考えられる。

 リンにはそれが「女を捨てている」と感じていたのかも知れないが、俺としては堂々としていてもサンドラが美人なのは変わらないと思う。

 そんな凛々しいお姉さんが恥ずかしがるのも、意外な一面が見られてお得だと思うのも否定しないが。

 ただ、恥ずかしがっている人をジロジロ見るのは、止めておこう。

 クレナが先程言っていた「見ていいのは、見られる覚悟がある者だけ」を思い出した。いや、微妙に意味が違うか。


 ちなみにリンは、腕を組んで「うんうん、やっぱり魅せ方だよね~」と納得していたので、こちらもツっこみを入れておく。

「リンも考えてたのか? 魅せ方」

「言ったでしょ、サービスって♪」

 しかしリンは悪びれず、振り向いてウフンとポーズを取ってみせた。

 ありがたみという意味ではそれもなんだかなぁと思わなくもないが、これぐらいのノリの方がこちらも気楽かも知れない。

「ルミス、良かったわね。染まる前に抜け出せて」

「リンさん、そこでこっちに振らないでくださいよっ!」

 向こうのルミスが声を上げる。しっかり聞き耳を立てていたようだ。

 それにしても、あまり知りたくなかった真実だな。

「あ、ハルノさまも染まってないから、安心していいですよ」

「そ、そうか……」

「むしろ、ハルノさまの立ち振舞いに皆影響受けてたっていうか……」

「それは凄いな」

 でも納得。流石春乃さんだ。

「もう少し男の目線を気にしろって話ですよね~。という訳で、私もこれから身体を洗いますから……ちょっとだけなら見てもいいですよ?」

「難しい判断を迫ってきたな」

 リンの悪戯っぽい流し目に、努めて軽い口調で返した。内心ドキドキしながら。

 「ちょっとだけ」とはどれぐらいなのか気になるところだが、残念ながらそれを気にしている時間は無さそうだ。

「終わったよ~♪」

 プラエちゃんが身体を洗い終えて抱きついてきたからだ。

 ひと仕事を終えたリウムちゃんとラクティも揃って得意気だ。この子の広い背中を流すのは大変だっただろうな。

 さて約束通りこの子の頭を洗ってあげるのだが、さてどうしたものか。

「プラエちゃん、眼帯は外せないのか?」

「え~……これはちょっと……」

 ダメなのか。ならば仕方がない。

「あ、あの……私もお手伝いしましょうか?」

 何か良い手はないものかと考えていると、ルミスが近付いてきてもじもじしながら声を掛けてきた。頭も身体も洗い終えているようで、湯浴み着をしっかり着直している。

「えっ? いいのか?」

 特に俺に近付いても。

「そ、その、旅の間は私がプラエちゃんのお世話役でしたから! その、私昔から亜人とはお友達で……!」

 真っ赤な顔でわたわたしながらの説明を聞いてみたところ、彼女の故郷は亜人が多く昔から慣れていたようで、プラエちゃんのお世話役を自ら買って出ていたそうだ。

 なるほど、それで恥ずかしさを堪えて来てくれたのか。

 俺がプラエちゃんに変な事しないか心配だからではない事を願う。

「そういう事なら手伝ってもらおうか」

「は、はい! どうしますか? 手で目隠ししますか?」

「いや、それでシャンプーが入るのは防げないだろ」

 思いついた方法があるので、ひとまずそれを試してみる事にしよう。


「……で、お兄ちゃん何やってんの?」

「見ての通りだ」

 という訳で俺達はプラエちゃんを仰向けに寝かせて頭を洗っていた。デイジィと一緒に近付いてきた雪菜が「美容院?」と呟く。

 そういえば雪菜にもやってやった事があったな、これ。体調的に美容院に行くのが難しかったので、せめてごっこ遊びででもって。

 案の定、雪菜はうらやましそうに見ている。明日またやってあげるとしよう。

 さて、今はプラエちゃんである。やはり頭が大きいので、ルミスには泡を洗い流す時にシャワーを担当してもらう。

 この体勢だと泡も目に入らないと思ったがビンゴだった。彼女は初体験であろう感覚に顔を火照らせながら目を閉じている。

「シャンプーってぇ……気持ちいいんだねぇ~……」

 デイジィに続いてプラエちゃんも気に入ってくれたのなら何よりだ。

 大きな頭を洗うのは大変だが、喜んでもらえるならばそれも苦にならない。むしろ『無限バスルーム』を認められたようでどこか誇らしい気持ちになれる。

「ルミス、そろそろシャワーを……って、ルミス?」

「ひゃ、ひゃい!?」

 声を掛けると、ルミスは素っ頓狂な声を上げた。何やらぼうっとしていたようだ。

「どうかしたのか?」

 何かを見ていたのだろうか。先程までの視線の先を追ってみると、そこには大きな身体が邪魔にならないよう立てていたプラエちゃんの青い両膝――ではなく、それにも負けない存在感を放つ、豊かな双丘があった。

 ……うん、見なかった事にしよう。

 俺の視線に気付いたのか、恥ずかしそうに俯くルミス。

 春乃さんと同い年の彼女は、少年と間違われる事もある少女である。

という訳で、混浴はまだ続きます。


春乃、クレナ、セーラ、ロニの出番は、次回をお待ちください。

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