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【感謝330,000pv突破】【完結】回復魔法が貴重な世界でなんとか頑張ります  作者: 水縒あわし
北方編

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64話


特別調査部として動き始めて数日。

ダリウス会長からの正式な指令もなく、ユートたちは各部署の手伝いをしながら、新しい調査部の片付けや、部署内の連携訓練などを行って過ごしていた。

いつ「特別な仕事」が降りてくるのか、皆、どこかそわそわしている。


そんな日が続いたある日。ユートが執務室で資料を整理していると、総務部のメイドが訪ねてきた。

ユートは彼女を部屋に通し、お茶を出しながら話を聞いた。


「ユート部長、お忙しいところ失礼いたします。総務部長より伝言がございます」

メイドは丁寧に曰く、王都より重要な来客があるのだが、予定より到着が遅れている。連絡も途絶えており、万が一、道中で何かトラブルに巻き込まれた可能性も考えられるため、捜索兼護衛として、ユートたち特別調査部隊に向かってほしい、という内容だった。


「現在、総務部長がダリウス会長と、この件について話を詰めている最中です。後ほど、正式に仕事が降りてくるだろうと思いますが、先に準備を始めていていただけると助かります」

メイドはそう伝え、一礼して帰っていった。


ユートは、受け取った情報に緊張感を覚えた。王都からの重要な来客。捜索と護衛。特別調査部にとって、これが初めての正式な任務になるだろう。

ユートはすぐにメンバーに指示を出した。

「皆、聞いてくれ! 我々の初任務だ!馬車の準備と、数日分の物資の用意を始めてくれ!」

指示を受けたメンバーたちは、待ってましたとばかりに動き出した。


準備の指示を終え、ユートはダリウス会長のもとへ向かった。会長室の扉を開けると、予想通りダリウス会長と総務部長のアルバンが、真剣な顔で話し込んでいる。


「おお、ユート殿。ちょうど良かった。今、君を呼ぶところだった」

ダリウスはユートを部屋に招き入れた。

「総務部長、メイドから、おおよその話は聞きました」ユートが簡単な説明は聞いたことを伝えると、ダリウスは頷き、アルバン総務部長が詳細を説明し始めた。


「ユート部長。王都から来るのは、王都に本店を構え、様々な街に支店を持つ大店、ネトルシップ商会の重役、ロベルト殿です。我々ハーネット商会よりも規模は大きいですが、最近、我々の活動に興味を示し、協力関係を結びたいと打診がありました。その話をするために、わざわざこのアルテナまで来てくれることになっていたのです」

アルバンは、ネトルシップ商会がどれほどの大商会であるかを説明し、今回の会談がハーネット商会にとってどれほど重要であるかを強調した。


「しかし、ここより少し先の街、『ミストヴェイル』を出発したのは確認できたのですが、以降の足取りが掴めない。連絡も途絶えています。道中で何かトラブルに巻き込まれた可能性が高いと見ています」

アルバンの表情が険しくなる。

「そこで、ユート部長。君たち特別調査部に、ロベルト殿一行を捜索し、保護し、そして無事にアルテナまで護衛してもらいたいのです」


「承知いたしました、会長、総務部長」ユートはきっぱりと答えた。「特別調査部にとって、これが初めての正式な任務となります。必ずややり遂げてみせます」

「頼もしいな」ダリウスは頷いた。「準備を終え次第、すぐに出発して構わない」

「はい。すぐに準備を整え、出発いたします」


「うむ。それから、ロベルト殿一行に関する情報は、総務部でまとめている。出発までには、相手の情報を用意し、君に届けるように手配しておこう」

「ありがとうございます」


ユートは、ダリウスとアルバン総務部長に頭を下げながら会長室を後にした。特別調査部初の任務。相手は王都の大商会の重役。責任重大な仕事だ。


調査部に戻ると、メンバーたちはすでに馬車の準備や物資の積み込みを始めていた。

ユートは、皆に正式な任務内容を伝え、指示を出した。

「皆、聞いてくれ! 我々の初任務だ! 王都の大商会、ネトルシップ商会の重役、ロベルト殿が道中で消息を絶った。ミストヴェイルまで向かい、彼らを捜索し、保護、そして護衛してアルテナまで連れ帰る!」


ユートは地図を確認する。ミストヴェイルの街は、ここから2つほど先の街だ。馬車で向かえば、日数にしても3〜4日ほどだろうか。

「エルザ、リック、ロイ、レックス。君たちには、馬にて次の街、『ナギレンツ』まで先行してもらう。街道沿いの状況を確認し、何か異常があればすぐに連絡してくれ」

「承知しました!」エルザが力強く返事をする。三つ子も、初めての任務に気合が入っているようだ。


ユートたちも、少し遅れて、準備を終え次第出発する。荷馬車は1台。ユート、セーラ、エマ、カイン、ミアが馬車に乗り込み、バルカス、ドラン、レナータ、ユージーンが周囲を警戒しながら歩く。



アルテナを出発し、街道を進む。

天気は穏やかで、旅は順調に進んだ。道中、他の旅人や商隊とすれ違うこともあったが、特に変わった様子はない。

ユート達は、ロベルト殿一行の手がかりがないか、注意深く周囲を観察しながら進んだ。


ナギレンツまでの道のりは、以前薬草を買い付けに行った村々を通る道と重なる部分もあった。

収穫を終えた畑が広がり、農民たちが冬支度を始めている。のどかな風景だが、ユートは油断しない。


街に到着すると、先行していたエルザたち4人と合流した。彼らも特に異常は見つけられなかったという。ユートは、エルザ達が手配していた宿に案内され、まずは一息つく。


宿までの道中、ユートたちは街中の様子を観察した。ナギレンツはアルテナほど大きくはないが、街道沿いの街らしく活気がある。

露店が並び、多くの人々が行き交っている。エルザたちは、街中や周辺の情報を聞きながら進んでいたが、ネトルシップ商会に関する有力な情報は得られなかったようだ。


宿につき、荷物を解くと、ユートはメンバーを集め、明日以降のことについて話し合った。

まずはミストヴェイルへ向かい、そこで本格的な捜索を開始するしかないだろう。特別調査部、初めての任務は、予想以上に難航しそうな予感を孕んでいた。


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