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【感謝330,000pv突破】【完結】回復魔法が貴重な世界でなんとか頑張ります  作者: 水縒あわし
北方編

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50話後編


リーナたちを見送った後、ユートと残りのメンバーは、フリューゲルでの本格的な情報収集を再開した。現在の目標は、最も情報が少なく、入手困難とされる『陽炎石』の手がかりを見つけることだ。


一行は、効率と安全を考慮し、3つのグループに分かれて街の調査にあたった。


ユート、セーラ、レナータのグループは、市場の露店や薬草店、そして街の老人や情報屋が集まるような裏路地へと足を運んだ。

「陽炎石ねぇ……」露店の老婆は、皺くちゃの手で顎を撫でた。「昔は、『陽だまりの丘』って呼ばれてる場所で、時々見つかるって話だったけどねぇ。あの丘は、昔はこの街の有力な獣人の一族が管理していてね、彼らだけが陽炎石を扱えたんだよ。立派な家柄だったんだけどねぇ……。今はもう、その丘も荒れ放題で、魔獣の巣になっちまった。一族も、どこへ行ったんだか……」老婆は遠い目をして語った。


怪しげな情報屋は、薄暗い酒場の隅で、酒代と引き換えに囁いた。

「陽炎石は、ただの石じゃねえ。特別な『目』を持つ者か、石に選ばれた者にしか見つけられねえって話だ。あんたらに、その『目』があるかねぇ?」

彼はニヤリと笑い、それ以上の情報は引き出せなかった。

セーラは、まだ少し緊張しながらも、ユートの隣で真剣に話を聞き、メモを取っている。レナータは、情報屋の胡散臭い態度に警戒の視線を送り続けていた。


バルカス、ドラン、エマのグループは、冒険者が集まる酒場や、武具・道具を扱う店を中心に聞き込みを行った。

「陽炎石だと? ハッ、夢みたいなこと言ってやがる」古参のドワーフ冒険者は、エールを呷り、豪快に笑い飛ばした。

「ありゃあ、『炎風の谷』の奥深く、それも特別な時にしか採れねえ代物だ。あそこは火を吹くトカゲがうじゃうじゃいやがるし、足場も悪ぃ。命が惜しけりゃ、近づかんことだな」

彼は、まるで子供に言い聞かせるように言った。


別の狼獣人の傭兵は、腕を組み、少し考え込むように言った。「陽炎石か……。あれは持ち主を選ぶ石だとも言うな。力ずくで手に入れようとしても、石がそれを拒めば、ただの石ころに変わっちまうとか……。昔、あの石の管理を取り仕切っていた獣人の一族がいたが、彼らは特別な方法で石を見つけ出していたらしい。まあ、古い言い伝えだがな」エマは、彼らの言葉の一つ一つを、聞き漏らさないように丁寧に記録していく。バルカスとドランは、冒険者たちの荒っぽい言葉遣いにも動じず、巧みに会話を続け、さらなる情報を引き出そうとしていた。


エルザ、ミア、カインのグループは、商業組合(組合長等は避けて、他の職員や出入りしている商人から)、職人街、そして図書館などを回り、文献調査や専門家への聞き込みを行った。

「陽炎石の加工ですか?」宝石職人は、ルーペを目に当てながら首を横に振った。「いえ、残念ながら……。噂には聞きますが、現物を見たことがある職人は、この街にもほとんどいないでしょう。あれほどの石を扱えるのは、よほどの腕利きか、あるいは……特別な血筋か」

図書館の司書は、埃っぽい羊皮紙の束を紐解きながら言った。「古い記録によりますと、『陽炎石』は古来より、この地の有力な獣人の一族によって、その産出から流通まで、一切が管理されていた、とあります。しかし、数代前にその一族は力を失い、管理体制も崩壊したとか……。その後の消息は不明です……」


商業組合の職員は、少し声を潜めて教えてくれた。

「陽炎石ですか……。ええ、稀にですが、組合に持ち込まれることもありますよ。といっても、他の鉱石の買い取りなどの際に、偶然紛れ込んでいる程度ですがね。専門の部署があるわけでもないので、量が少ないので見つかっても大抵は、物好きな収集家か、どこかの魔道具師が高値で買っていくくらいです。以前、陽炎石の管理を取り仕切っていたのは『緋色の爪』と呼ばれた獣人の一族だと聞いていますが……今はもう、没落して、街のどこかで暮らしているという噂です」


数日間、精力的に情報収集を続けた結果、いくつかの重要な情報が集まってきた。


過去の管理者: かつて『緋色の爪』と呼ばれた有力な獣人の一族が、陽炎石の産出から流通まで、一切を取り仕切っていた。しかし、現在は没落し、その消息は不明。


産出場所の候補:


『陽だまりの丘』: かつての一族の管理地? 現在は魔獣の巣窟。


『炎風の谷』: 産出の可能性はあるが、危険な魔物が多く、直接取りに行くのは非常に困難。


入手方法:


通常の採掘や採取では見つからない可能性が高い。


特別な力や、石に選ばれる必要がある?


商業組合に稀に持ち込まれることがあるが、偶然性が高い。


没落した『緋色の爪』の一族の末裔が、石の隠し場所や見つけ出す方法など何か手がかりを持っているかもしれない。


「……やはり、直接取りに行ったりするのは難しそうですね」


宿で作戦会議を開き、集まった情報を共有しながら、ユートは結論づけた。

陽炎石の入手は、通常の素材調達とは違うアプローチが必要そうだ。

「『陽だまりの丘』は危険すぎる。『炎風の谷』も同様か……」バルカスが腕を組む。

「過去に管理を取り仕切っていたという、『緋色の爪』の一族……その末裔を探してみるのが一番の近道かもしれません。何か手がかりを持っている可能性は高いでしょう」エマが提案する。


「ですが、没落した一族となると、見つけ出すのは容易ではないでしょう。それに、協力してくれるかどうかも分かりません」ドランが懸念を示す。

「情報屋が言っていた『特別な目を持つ者』というのも気になりますね。それが『緋色の爪』の一族と関係があるのか、あるいは別の何かか……」レナータが付け加える。

「いずれにしても、まずは『緋色の爪』の一族の末裔を探すことから始めるべきでしょう。彼らに接触できれば、道が開けるかもしれない」エルザがまとめる。


一行は、当面の目標を「没落した獣人の一族『緋色の爪』の末裔を探し出すこと」に定め、フリューゲルでの調査を新たな段階へと進めることにした。

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