46話
ここ最近の更新はこんな感じが多い気がしています。
ボルガナでの滞在も終わりに近づき、調査隊は鉱山町への出発を明日に控えていた。
セーラの心もだいぶ落ち着きを取り戻し、仲間たちの前では笑顔を見せることも増えてきた。
出発が近づいたある日の午後、ユートは男性陣(バルカス、ドラン、カイン、そしてたまたま通りかかった三つ子)を集め、こっそりと相談を持ちかけた。
「あの……皆さん、ちょっと相談があるんですが……」
ユートは少し照れながら切り出した。
「セーラさんに、何か……今回のことのお詫びと、これからも守るっていう気持ちを込めて、プレゼントを渡したいと思っているんです。何か良いアイデアはありませんか?」
「ほう、ユート様からセーラ殿へ?」バルカスがニヤリとする。
「それは良いお考えですな。彼女もきっと喜びますぞ」ドランも賛同する。
「贈り物ですか……。予算はどの程度で? あまり高価なものは、かえって彼女を困らせるかもしれません」カインは早速、現実的な視点でアドバイスする。
「そうだなぁ、やっぱりアクセサリーとかじゃないっすか? キラキラしたやつ!」リックが提案する。
「いや、もっと実用的なものがいいんじゃない? 温かいマントとか!」ロイが言う。
「……綺麗な石」レックスがぼそりと呟いた。
「石か……悪くないな。守りの効果があるような石を使った、小さな装飾品などはどうでしょう? あまり目立たず、常に身につけていられるような」バルカスが具体的な案を出す。
「アクアマリンなどはどうでしょう? 落ち着きと守護をもたらすと言われています。比較的手に入りやすく、価格もそれほど高くはないはずです」カインが知識を披露する。
「おお、それがいい! 小さなペンダントなら、服の下にも隠せるしな!」ドランも賛成した。
こうして、男性陣の協力のもと、ユートは街の宝飾店で、控えめながらも美しい輝きを放つ、小さなアクアマリンのペンダントを買い求めた。
出発を明朝に控え、その夜はボルガナ支店の一室を使って、調査隊メンバー全員と、ベテラン御者のハンス、そして世話になった支店の数名も招き、ささやかな夕食会が開かれた。費用はボルガナ支店が「餞別代わりだ」と持ってくれた。
「さあ、皆、今日は堅苦しい話は抜きだ! 明日からの長旅に向けて、英気を養おう!」
ドランが音頭を取り、乾杯のグラスが掲げられた。和やかな雰囲気の中、食事が進む。
「お前たち新人護衛も、少しは様になってきたじゃないか。だが、油断は禁物だぞ。常に最悪を想定しろ」バルカスが、少しだけ口調を和らげながらも、新人たちに釘を刺す。
「はい!」新人たちは緊張した面持ちで頷く。
「ミアさんも、馬車の扱いはもう心配ないですね。あとは、もう少し自信を持てば完璧ですよ」エマがミアを励ます。
「は、はい! 頑張ります!」ミアは照れながらも嬉しそうだ。
「カイン殿、次回の交易計画、期待しているぞ」
支店長がカインに声をかける。
「はっ! ご期待に沿えるよう、全力を尽くします!」カインは背筋を伸ばして答えた。
三つ子たちも、エルザに睨まれながらも、他のメンバーと冗談を言い合ったりして、場の雰囲気を盛り上げている。ユートも、リーダーとして皆に感謝の言葉を述べ、明日からの任務への意気込みを語った。
夕食会がお開きになり、皆がそれぞれの部屋へ戻っていく中、ユートはセーラをそっと呼び止めた。
「セーラさん、少しだけ、いいですか?」
「……はい、ユート様」
二人は、人影の少ない商館の廊下の隅へと移動した。月明かりが窓から差し込んでいる。
「セーラさん、これ……」
ユートは、昼間用意した小さな包みを差し出した。
「これは……?」
セーラが不思議そうに包みを開けると、中からアクアマリンのペンダントが現れた。控えめな銀の鎖に、澄んだ水色の石が揺れている。
「綺麗……」セーラは小さく息を呑んだ。
「あの……今回のことのお詫びと、それから……これからも、俺が必ずセーラさんを守るっていう、気持ちです。受け取って……もらえますか?」
ユートは照れながら、精一杯の気持ちを伝えた。
セーラの目に、じわりと涙が浮かんだ。
「ユート様……ありがとうございます……。嬉しい……です」
彼女は震える手でペンダントを受け取り、そっと首にかけた。月明かりを受けて、アクアマリンが優しく輝く。
ユートは、感極まっているセーラの肩にそっと手を触れた。そして、彼女の潤んだ瞳を見つめ、ゆっくりと顔を近づけ、優しく口づけをした。セーラも、今度は怯えることなく、そっと目を閉じ、そのキスを受け入れた。
唇が離れ、二人はしばらく見つめ合った。言葉はいらない。お互いの気持ちは、痛いほど伝わっている。
「……セーラさん」
「……はい」
「もう少しだけ……一緒にいても、いいですか?」
ユートの言葉に、セーラは顔を赤らめながらも、こくりと頷いた。
二人は、誰にも気づかれないように、そっと商館を抜け出した。そして、町の宿を取り、一つの部屋へと入っていった。
扉が閉まると、部屋の中には二人だけの静かな時間が流れる。ランプの柔らかな光の中で、二人は互いの温もりを確かめ合うように、そっと寄り添った……。
窓から差し込む柔らかな朝日で、ユートは目を覚ました。腕の中には、穏やかな寝息を立てるセーラの温もりがある。昨夜の出来事が、夢ではなかったことを実感する。彼女の頬にはまだ涙の跡が微かに残っていたが、その表情はここ最近見られなかったほど安らかだった。ユートは愛おしさが込み上げ、そっと彼女の柔らかな髪を撫でた。
(セーラさん……綺麗だ……。こんなに近くで、貴女を感じられるなんて……)
昨夜、触れた彼女の素肌は、想像以上に滑らかで、温かかった。ランプの光に照らされた、普段はきっちりとした制服の下に隠された、女性らしい柔らかな曲線。震える手で、彼女の服のボタンを一つ一つ外し、その白い肌があらわになった時の、息を呑むような感覚。初めて見据えるセーラの裸身は、あまりにも無防備で、神聖なもののようにさえ思えた。細い肩、なだらかな背中のライン、そして、恥じらいに赤らむ柔らかな胸の膨らみ……。その肌の感触、甘い香り、か細い喘ぎ声、そして、自分を受け入れてくれた時の潤んだ瞳……。全てが脳裏に焼き付いて離れない。彼女を傷つけたゴブリンへの憎悪が、腹の底から再び込み上げてくる。だがそれ以上に、このか弱く、しかし強い意志を持つ女性を、自分の全てで守り、愛したいという激しい衝動が、ユートの心を支配していた。この温もりを、この存在を、誰にも奪わせたくはない。
部屋には、昨夜の二人だけの時間を匂わせるように、シーツが乱れ、互いの衣服が床に散らばっていた。ユートは、名残惜しさを感じながらも、セーラを起こさないように静かにベッドを抜け出し、手早く自分の服を着た。
(まずい、そろそろ皆が起き出す時間だ……!)
このまま宿で朝を迎えて、他のメンバーに昨夜のことを悟られるわけにはいかない。ユートは眠っているセーラの額にそっとキスを落とし、優しく肩を揺すって起こした。
「セーラさん、朝です。……帰りましょう」
「……ん……ユート様……?」
眠そうに目を開けたセーラは、状況を理解すると、顔を真っ赤にしながら、タオルケットで身体を隠して慌てて身を起こした。
二人は手早く身支度を整え、皆に見つかる前に、少し気まずいような、それでいて満たされたような複雑な気持ちで宿を後にした。
早朝のまだ人通りの少ない道を、二人は少し距離を置いて、しかし互いを意識しながら歩き、無事に商館に戻った。それぞれの部屋に戻り、何食わぬ顔で出発の準備を整える。心臓はまだ少しドキドキしていたが、顔には出さないように努めた。
しばらくして、他のメンバーたちも起き出し、出発の準備を始めた。セーラも、いつもより少しだけ明るい、そしてどこか女性らしい艶やかさを増した表情で食堂に現れた。ユートと目が合うと、頬を染めて俯いてしまったが、その様子がまた愛らしい。
「よし、全員揃ったな! 準備はいいか?」
ユートはリーダーとして、皆に声をかける。
「鉱山町『ボルガナ』から、その先の北方へ! 出発だ!」
新たな決意と、セーラへの深い想いを胸に、ユート率いる調査隊は、再び旅路へと足を踏み出した。
昨夜の出来事は、二人だけの秘密として、今はそっと胸の奥にしまっておくことにした。
今回の表現は…どうなんでしょうか
大丈夫なのか?心配しつつ更新ボタンを押しました。




