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【感謝330,000pv突破】【完結】回復魔法が貴重な世界でなんとか頑張ります  作者: 水縒あわし
生活の始まり

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22話後編


ダリウスの執務室を出て、ユートはバルカス、ドランと共にエレナの研究室へと続く自分の部屋に戻った。セーラが心配そうな顔で待っていた。


「セーラさん、聞いてください。俺、3日後に隣町へ行く商隊に同行することになりました」

ユートが伝えると、セーラは少し驚いた顔をしたが、すぐに頷いた。

「まあ……! ダリウス様から、いずれそういう機会があるかもしれないとは伺っておりましたが……。もちろん、私も同行させていただきます」

ユート専属であるセーラも、当然のように同行が決まった。


「よし、ユート、セーラもな」

研究室から顔を出したエレナが、二人に向き直った。「商隊に同行するにあたっての説明だ。まず、基本的には護衛部の指示に従うこと。特に戦闘になりそうな場合は、バルカス、ドラン、そしてライオスの指示をよく聞け。勝手な行動は慎むように」

彼女はユートを見た。

「魔法を使うタイミングも重要だ。むやみに使わず、ライオスたちの判断を仰ぐのが基本だが、緊急時には自分の判断も必要になるだろう。ただし、絶対に人前で回復魔法は使うな。これは徹底しろ」

エレナは厳しい口調で念を押した。


「必要な準備はこれから行う。まずは旅装だな。動きやすくて丈夫な服と、マント、それから予備の物資を入れておくための少し大きめの背嚢を用意させよう」

エレナは早速、セーラに必要なものを指示し始めた。


翌日、ユートはセーラ、そして護衛のバルカス、ドラン、レナータと共に市場へ買い物に出かけた。

回復魔法が使えない状況を想定し、ユートは念入りに応急処置用品を買い揃えることにした。

「包帯とガーゼは多めに……それから薬草。止血効果のあるものと、炎症を抑える効果のあるものをいくつか。あと、度数の高い綺麗な酒も消毒用に必要だな」

ユートは前世の知識と、【識別の眼】で効能を確認しながら、露店で品物を選んでいく。

バルカスとドランは、周囲を警戒しながらも、ユートが熱心に薬草を選んでいる姿を興味深そうに見ていた。


屋敷に戻ると、ユートはエレナに頼んで、制作部にいる錬金術師のフィンに手順を教えてもらい、買ってきた薬草を煮詰めて濃縮液を作り、ガーゼに浸して乾燥させるという作業を行った。

これは、以前インベントリに入っていたヒーリングハーブの包帯に近い効果を狙ったもので、「自作の特別な薬」として用意しておくためだ。

もちろん、ただの綺麗なガーゼや生の薬草、消毒用の酒も、インベントリと背嚢に充分な量を用意した。


出発前日には、エレナと攻撃魔法のおさらいを行った。

「いいか、ユート。あんたが今、実戦で使えるレベルにあるのはこの3つだ」

エレナは研究室の訓練スペースで説明する。

「まずは《ファイアーボール》。基本の火球だな。威力はそこそこだが、連射が効きやすい。」

「次に《フレイムスピア》。炎の槍を放つ、貫通力重視の魔法だ。硬い相手や、一点突破したい時に有効だろう。」

「そして《フレイムボム》。着弾点で小規模な爆発**を起こす。範囲攻撃や目くらましにも使えるが、味方を巻き込まないよう注意が必要だ」

エレナはそれぞれの魔法の特性、マナ消費の感覚、有効な使い方などを、実演を交えながら丁寧に指導してくれた。


通常の仕事をこなしながら、ユートはセーラと共に旅に必要な残りの準備を整え、体調管理にも気を配り、出発に備えた。


そして当日。早朝、ハーネット商会の中庭には、荷物を満載した4台の荷馬車と、今回の商隊に参加するメンバーが集まっていた。商業部の若い男女、総務部の職員たち、輸送部の屈強な男たち、そして物々しい雰囲気の護衛部の面々。


商隊のリーダーを務めるライオスが前に立ち、集まったメンバーを見渡した。

「皆、準備はいいな!」

力強い声が中庭に響く。

「今回の任務は、隣町『シルヴァン』への定期輸送だ。主な目的は、我々が運んだ荷物の売却、そしてあちらで産出される鉱物資源の買い付けだ。道中は気を引き締めていくぞ!」

ライオスは出発前に改めて任務内容を確認し、全員の士気を高める。


次に、今回の商隊メンバーを紹介していく。輸送部、総務部の担当者、そして商業部の担当として、快活そうな若い女性、リナと、少し気弱そうな男性、トムが紹介された。最後に、ユートたちが紹介される。

「そしてこちらが、エレナ様の助手であるユート殿と、その護衛のバルカス、ドランだ。今回は特別に商隊に同行してもらうことになった。皆、よろしく頼む」

集まったメンバーからは、好奇と若干の戸惑いが入り混じった視線が向けられたが、ライオスがリーダーを務めていることもあり、特に異論は出なかった。


「よし、全員揃ったな! 出発するぞ!」

ライオスの号令と共に、御者が手綱を引き、荷馬車がゆっくりと動き出す。


ユートは、バルカスとドランと共に、最後尾の荷馬車の近くに位置取り、ゆっくりと動き出す商隊の列に加わった。隣には、少し緊張した面持ちのセーラと、常に冷静なレナータがいる。

初めての商隊任務。初めての実戦経験の可能性。

そして、絶対に守らなければならない秘密。

様々な思いを胸に、ユートはアルテナの街の門をくぐり、未知の世界へと続く街道へと足を踏み出した。


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