91話後編
二人は並んで部屋へと入る。
防音された部屋は、外の喧騒とは隔絶された静けさに包まれており、二人のためだけに時間が流れているかのようだった。
部屋の灯りは抑えめにし、柔らかな光だけが室内を照らしている。
セーラは少し緊張した面持ちで、ユートを見上げていた。何度か肌を重ねた関係ではあるものの、こうして誰にも邪魔されない、二人きりの夜を過ごすのは、前回のミストヴェイル以降では初めてかもしれない。
お互いに多忙な日々の中で、今日のこの瞬間は、特別なものだった。
ユートはセーラを優しく抱き寄せ、彼女の髪を撫でる。セーラもユートの胸に顔を埋め、彼の温かさを感じていた。言葉は何もいらない。
ただこうして二人でいることの喜びと安堵が、部屋を満たしていた。
そのまま、二人はゆっくりとベッドに倒れ込んだ。
柔らかなシーツの上で、ユートはセーラを見つめ、セーラもまた、ユートの顔を見つめ返す。
どちらからともなく、二人の唇が重ねられた。
最初のキスは優しかった。
お互いの気持ちを改めて確かめ合うように、そっと触れるだけ。
だが、すぐにそれは長く熱を帯びたキスへと変わっていった。
求め合うように、深くなる口付け。
お互いの呼吸が乱れ、部屋の空気は急速に熱を帯びていく。
旅の疲れも、日々の緊張も、この瞬間だけは忘れ去られていた。
長く熱いキスが終わり、唇が離れた。見つめ合う二人の瞳は、潤み、情欲の光を宿している。
すると、セーラがユートをベッドの上に優しく押し倒し、その上に跨るように馬乗りになった。
いつもは控えめなセーラの、積極的な仕草に、ユートの心臓が大きく跳ねる。
「ユート様…」
セーラはユートを見下ろしながら、自らのパジャマのボタンに手をかけた。
白い肌を滑るように、一つ、また一つとボタンを外していく。
そして、柔らかな生地が滑り落ちると、その下に隠されていた白い肌が現れた。
更にその下、レースの縁取りがされた下着へと指を滑らせ、ゆっくりと下着も脱ぎ去る。
露わになった、柔らかな白肌の曲線。
形の良い二つの双丘が、ユートの目の前で揺れる。
普段はメイド服や制服に隠されている、セーラの美しい胸。
視線がその先端へと向かうと、そこは高揚して桃色に染まっている。
ユートは視線を双丘から少し下げ、セーラの滑らかな太ももへと移す。
優しく閉じられたその太ももの間は、すでに甘美で妖しい湿り気を帯びていることが、見るだけでも伝わってきた。
お互いを求める気持ちが高まっている証拠だ。
ユートは我慢できなくなり、優しく、その湿り気の元目掛けて手を伸ばした。
セーラの腿に触れ、内側へ。
肌の温かさ、そして、求め合う気持ちが生み出した熱。
指先が敏感な場所に触れると、セーラは「ひゃ…」と、甘く、小さな声を漏らした。
普段の穏やかな声とは違う、情欲に濡れた声に、ユートの理性が吹き飛びそうになる。
そこからは、まるで堰き止められていた感情が溢れ出すかのように、熱く交わっていった。
久しぶりにお互いを求める身体は、寸暇を惜しむように肌を重ねる。
互いの呼吸は激しくなり、愛撫の声や吐息が静寂な部屋に響く。
何度も、何度も、愛と欲望を確認するかのように、二人の体は一つになった。
長い旅と任務の疲れも、この瞬間、快感と充足感へと昇華されていった。
愛しい人と肌を重ねる喜びが、ユートとセーラを満たしていく、情熱的な夜だった。




