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10-7 子供たちを守れ 猫と傀儡の行進

 西の木々の向こう側に無数の人影が立ち、ゆらゆらとこちらに歩いて来ている。


「な、なんだよあいつらっ?! やべっ逃げるぞジア、走れ!」

「わかってるわよっ! あれって、兵隊さん……?!」


 バーニィは元騎士、集団行動には慣れている。

 言わずとも勝手に護衛として上手くやってくれるでしょう。

 後ろをバーニィとジョグに任せて、敵に近付かれる前にわたしとリックが突撃する。


 ナコトの書は手元にありません。パティアが所持しています。

 ウーズに肉体を奪われた者たちをレイピアで貫き、ウーズの核を確実に破壊してゆく。


「教官っ、ジアの言った通りだ、人間が混じっているぞ!」

「ギガスラインの警備隊でしょうかね、命さえなくせば魔族も人間も仲良くできるようで」


 リックは元から双剣使いだったかのような、見事な立ち回りを披露しました。

 その恵まれた圧倒的な筋力をもって、2本の剣が死体を防具ごと両断し、潰し損なった核を突き刺します。


 その戦いっぷりはあまりにも激しく、さすがのネコヒトも弟子との距離を保つことにいたしました。


「パティアのでばんだーっ、ふぁいあーっ、ふぁいあーっ、もえちゃえーっ!」

「うわ、す、すげぇ……」


 それにしても数が多い。

 それゆえどうしても発生する討ち漏らしを、パティアのファイアボルトが焼き払っていってくれた。


「あたしより小さいのに、パティア強い……」


 元々ウーズらスライムが炎に弱いのもあるが、その火力はボルト魔法という次元ではない。

 矢と呼ぶには余りに大きな、重弩のような炎の矢がウーズを吹っ飛ばし、その先で焼き払う。


 正確無比、弾切れ知らずの射撃にスライム系ごときが近付けるようなものではなかった。


「なんて命中率だ……。一度も外していないんじゃないか? とても、子供の術とは思えない……」

「ええ、あの子はがんばり屋の負けず嫌いですから、たくさん練習したようですよ」


 まさかあの訓練がここまで形にはまるとは思いませんでした。

 才能に保証された火力、努力によるコントロール、あまりにそれは凶悪無比です。


 しかしわたしたちには弱点がありました。戦闘員が少ないのです、とつじょ後方から子らの悲鳴が上がりました。


「教官ここはもういい、あちらの援護を!」

「ねこたーんっ、それならこれ、つかえー! なこたーん、そーーーいっっ!」

「ちょっ、ちょっとあなたっ?! ああもうっ!」


 それ親の形見ですよ。パティアがナコトの書を小さく戻して、それをわたしに向けて投げ飛ばしました……。

 風を切って鋭く飛ぶそれを、ネコヒトが全力疾走でそれに飛びつき、何とか受け取ることに成功した。


「てへへー、おもったより、よくとんだった(・・・・・)。ねこたん、ナイスきゃっちー! あとでー、あたまなでなでするねー!」

「わたしは犬じゃありません。では、こちらはあなた方にお任せします。パティア、やると決めたら必ずやり通して、生き延びることを優先するように」


「まかせろーっ、パティアがまもるー! ウズウズはちかづかせないぞー!」

「ふふ、頼もしいものだな……」


 まったくですよ。まだ10にもなっていない子供だというのに、何なのですかこの信頼感は。

 不思議なことに不安はなく、信頼と期待をもって前方を任せることができました。


 考えるよりも速くナコトの書を開き、アンチグラビティを発動させて、ネコヒトが森の中で無謀な加速をする。

 そうすればすぐに後方です、予想通り後ろにもヤドリギウーズの群れが現れていました。


「うっうわっ……」

「無理すんなガキども逃げろっ!」


 ジョグとバーニィだけでは防ぎ切れず、突破した敵が男の子たちの木の棒を鉄の剣で両断する。

 それでも蒼化病の里の子らは森の脅威になれているらしい、別の男の子が勇敢にも木剣を持ってフォローに入りました。


「すみません、お待たせいたしました」


 その危なっかしい防戦を矢になったネコヒトが終わらせる。

 ヤドリギウーズを貫き、立て続けに抜けてきた1体も核を狙い必殺しました。


「エレクトラムさん!」

「はぁぁ、死ぬかと思ったっ、遅いじゃないか!」

「ええすみません、返す言葉もございませんよ」


 男の子たちに怒られてしまいました。

 この子たちこんなに元気で明るい性格だったんですね、知りませんでした。


「危ねぇ危ねぇ……で、来てくれたのは嬉しいけどよ、あっちはいいのかよネコヒトよ」

「ええ、パティアが思った以上に育っていたようで、もしかしたらあなたより戦士として使えるかもしれませんね」


 きつめの冗談にバーニィが苦笑いする。

 経験にもとづいた確実な立ち回りで、バーニィも人間と魔族の混成軍団を排除していた。


「無駄話してねぇで早くどうにかしてくれよぉ! これ以上敵が増えたらやべぇべ!!」

「あの、それなんですが……。あちら側から新手の気配が、するみたいです……私の勘違いじゃなかったらですが」


 リセリが遠慮がちに最悪の展開を察知してくれた。それはまたまずい。

 あのとき横着せず駆除しておけば、こんなに団子みたいに軍勢が膨らむこともなかったんでしょうか。


 いえ、そんな女々しい結果論はすぐさま投げ捨てて、わたしは新たな切り札を発動させる。

 バーニィとジョグの前に踊り出し、わたしの意思に従って書が術のページを開いてくれた。


「どうするつもりだネコヒト?! いくらお前さんがとんでもなく速いっつったって、こりゃ相手にするにも限度があるぜ?!」


 はい、パティアの父、エドワード・パティントンが生み出した奇跡の書に記された、奥の手を使います。


「ウェポン・スティール! 剣よっ、槍よ、斧よ、あらゆる武器はわたしの下に集いなさい! 亡き主人の名誉を守りたいならば、従え!」


 バーニィとジョグの武器まで奪わないよう、彼らの物を目視でよく確認しておきました。

 バーニィは金のかかった切れ味エンチャント付きのナイトソード。ジョグの方は魔軍でよく見かける制式の金属槌ウォーハンマーを装備しています。

 魔界の者はほぼ全てが軍属のようなものです、さして珍しい武器でもありません。


「ふむ……成功率約60%といったところですか、まだまだですね」


 術の成功率はあまり高くありませんでした。

 森の中で目視できる範囲の敵から、15前後の剣、斧、槍、鞭や短剣を奪いました。

 それがわたしの正面以外を取り巻き、わたしの意思の外で敵への自動迎撃を始める。


「な、なんじゃそりゃぁっっ?! はぁっ、反則だろその魔導書っ、そんなんありかよっ?! つーか無敵だろそれ!」

「エレクトラムさんすごいっ、まるで、猫の勇者様みたい!」

「よ、よくわかんねぇけど、何とかなりそうな気がしてきただ、おいら! やるべバーニィ!」


 こんなことなら練習しておけば良かったです。

 というのは実は無理な話でして、スティールという性質上、こうやってぶっつけ本番でいくしかないのです。


「では、わたしも少しがんばってみます」


 ヤドリギウーズの群れに突っ込みました。

 舞い踊る武具の自動迎撃と、わたしの必殺のレイピアで敵を轢いていきます。

 突っ込めば武具の乱舞が敵を切り刻む、よって轢く感覚に近いと思いました。


「つくづく思います。生活スタイルを含めて、わたしは集団戦に向いていないのでしょうね」

「ま、んな危なっかしい術者が隣にいたら逃げるわなっ。ネコヒト、リセリの感知した新手の迎撃を頼めねぇか、こっちはどうにかなりそうだ!」


「了解です。では、これは、テストです。勇士たちの武具よ、わたしはあなたたちを放棄します」


 剣をヤドリギウーズに乗っ取られた人間の死体に、発射しました。

 グサリとイメージ通りの胸に剣が突き刺さり、コアを失ったウーズが崩壊してゆく。

 それをダーツ遊びのように残弾の限り撃ち放って、盗んだ武器全てを放棄しました。また盗めばいいのですから。


 さあ、この集団戦に向かない力を駆使して、リセリが感知した新手を奇襲しに行きましょう。


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