表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

377/443

38-2 ねこたん、かえってこない……

・( ΦωΦ )


 朝、ミャーは揺すり起こされるニャ。


「こげにゃん、おはよー。きょうもいっしょに、いくかー?」

「……ニャ、ご一緒しますニャ。ふぁぁ~……眠い……ニャ……」


 パティアは朝早いニャ。

 一緒に寝るようになってから、子供たちの存在がどれだけありがたいか、知ったニャ。


「こげにゃん、えらいえらい。よーし、いくぞーこげにゃーん!」

「はい、ですニャ……。ミャ、目が開かないので、引っ張って欲しいニャ……」


「パティアには、それは、ごほうびです! にくきゅうすき」

「ミャ……」


 最近はずっとこんな感じですニャ。

 パティアに引っ張られて、眠くて開かないまぶたを辛うじて広げて、城を出ますニャ。


 もう夏が来てますニャ。こんな清々しい朝は寝て過ごしたいものですニャ。

 けどそうもいかないんですニャ……。


「おはよーっ、クレイさん!」

「あはは、そんなに眠いなら寝てればいいのにー」


 すみませんですニャ。ちょっと寝てましたニャ。

 頭をブルブル振って眠気をかき消すと、不思議なことにもう森の中でしたニャ。


 それと水くみに参加するようになってから、子供に囲まれることが増えたニャ。

 別に慕われたくないのに、ミャーは子供たちに懐かれてしまったニャ。


「ニャ、起きますニャ」

「寝てたの!?」


「寝てましたニャ。今からがんばりますニャ」

「こげにゃんはー、ねながらあるくの、じょうずだなー」


 また不思議なことが起きてましたニャ。

 背負った記憶のない弓が背中にあったニャ。


 ミャーは弓を片手に子供たちの先頭に出て、万一のことがないように、気配を探りながら引率していったニャ。

 気を抜けない仕事ですニャ。


「こげにゃん、こげにゃん」

「なんですかニャー? 今ミャーはお仕事中ですが?」


「あれあれ、あれとって、こげにゃん!」

「あーー、桑の実だ!」

「あのオデブちゃんに頼んだらどうですかにゃ?」


「しろぴよー? しろぴよはー、たべる、やく」

「……よくわかんないけど、ならしょうがないですニャー」


 矢筒から鉄の矢を抜いて、頭上の桑の枝を撃ったニャ。

 今日は一発も外さなかったニャ。


 パティア含む子供たちが落ちた桑の枝に群がって、すぐに桑の実を美味しそうにほおばり出したニャ。

 ほんのりした甘みがあって桑の実は美味しいニャ。


「ぴゅぃぴゅぃ♪」

「あ、しろぴよ! しろぴよー、それーっ!」


「ぴゅぃーっ♪」


 狙い澄ましたかのようなタイミングで、デブ鳥が現れましたニャ。

 パティアが桑の実を空に投げると、しろぴよは器用に空中を舞って食らいつきますニャ。


 子供たちもパティアのまねをするものだから、デブ鳥は沢山の桑の実にありつけたようですニャ。


「へへへー……あさから、てのり、しろぴよ……。このふわふわの、ために、いきている……」

「手にウンチされてますがニャ。湖に着いたら、離れたところで手洗わないとダメですにゃ」


「しろぴよのうんち、きたなくないよ?」

「ぴよっぴよよーっ!」

「汚いですニャ」


「えーー……」

「ぴゅぃー……」


 つくづく、変なデブ鳥ですニャ……。



 ●◎(ΦωΦ)◎●



 湖に到着すると、ミャーは水瓶を受け取っては湖水をすくい、子供たちに渡していったニャ。

 夏とはいえ朝の湖は冷たいですニャ。パティアを含めて10人分の水瓶に湖水をためたニャ。


「ミャ……? パティアが戻ってきてないですニャ」

「あ、ホントだー」

「僕たち平気だから、見てきてクレイにゃん」


「了解、呼んできますニャ」


 パティアは少し離れた水辺で、しろぴよの糞を流しに行ったニャ。

 姿を探して湖畔を進むと、いましたニャ。うねった木の幹に腰掛けていたニャ。


「何してるのかニャー?」


 のんきな口調でパティアに声をかけても、反応はなかったニャ。

 頭上を広がる木々の支脈と木漏れ日を見つめて、いつまでも黙り込んでたニャ……。


 その隣にミャーは腰掛けたニャ。

 よく観察すると、あのデブ鳥の姿も近くの樹木の上にあったニャ。

 ジッとパティアを見守っているように見えたニャ。


 原因はみんな知ってるニャ。パティアのねこたんが帰ってこないせいニャ……。

 最初は寂しさのあまり、静かな涙を何度もこぼしたりしてたニャ。


 けれどある日を境にこうなったニャ。泣かない代わりに笑わないニャ……。

 こんな姿を見せられたら、責任を感じてしまうニャ……。


 ミャーが暗殺計画を運んでこなかったら、こうはならなかったニャ……。


「どうしたのかニャー? それにしても、いい天気ですニャー。……そんなにぼんニャりしてたら、みんなに置いてかれちゃうかもニャー?」

「……いい」


「いいって、何がニャー?」

「いいの。パティアは……おとーたんにも……ねこたんにも……おいてかれた。さき、かえって、いい……」


 グサリときましたニャ……。

 痛々しいですニャ。罪の意識を感じますニャ。

 他の連中ならまだしも、パティアだけは悲しませたくない。それがネコヒトの総意ですニャ!


「大先輩なら生きてるニャ。絶対に死なない凄い人だニャ。大先輩が帰ってくるまで、みゃーが代わりになるニャ。だから、笑ってほしいニャ」

「ん……。そか……」


 もう何百回も伝えた言葉ニャ。

 繰り返し繰り返し、みんなが心に思い聞かせてる言葉ニャ。

 大先輩、里の最長老エレクトラム・ベルがいないネコタンランドなんて、あり得ないニャ。


「パティアが悲しいと、ミャーたちネコヒトはみんな悲しい。パティアはミャーたちの、魔王様だニャ」

「こげにゃん……じゃあ、めいれい……。パティアを、なぐさめて……」


「もちろん喜んで、お任せらくちんニャ」


 パティアの両手を二つの肉球で挟み込んで、すっかりフワフワになった毛皮をすり付けたニャ。

 そうするとパティアの目から涙が流れ落ちて、悲しそうに鼻をすする音も聞こえてきたニャ。


 大先輩の温もりを思い出しているのかニャ……。


「あの人はミャーの憧れ。そのエレクトラム・ベルが、娘を置いて死ぬわけがないニャ。外の世界が大変だから、きっとやることができて、戻るに戻れないだけニャ」

「じゃあ、パティアが、たすけにいく……」


「パティアはこの里を守るのが役割ですニャ。それを忘れちゃダメですニャ」

「そか……パティア、ひつようか……。うん……わかった……。こげにゃん、かえろ」


「そうしますかニャ」


 こんな生活が朝から晩まで、明日も明後日も明明後日続いてゆくニャ。

 大先輩、ミャーもそろそろマジで帰ってきて欲しいニャ……。


 うさぎさんもリックも、あのお人好しのクークルスまでどことなくおとなしくて、こういう暗いのはもう勘弁願いたいですニャ……。



 ●◎(ΦωΦ)◎●



 余談だけどニャ。大先輩が旅立ってほどなくして、ネコヒトの移民者が合計で300人もやってきたニャ。里が猫だらけになって、パティアはとても喜んでいたニャ。


 しかし移民計画の約束は全て果たされる前に、穏健派と正統派の争いにより、それ以上の移民は実現不可能になっていたニャ。

 無事に里まで、移民者を運べなくなってしまったのニャ。


 今、結界の外側は、穏健派と正統派の軍隊が行ったり来たりの大乱戦ニャ。

 それでも必ず、大先輩は戦場の中すらくぐり抜けて、里に帰ってくるはずニャ。


 そうしたらミャーたちはこう言うニャ。

 パティアを、ネコヒトの新しい魔王様にしようって、言うニャ。


 ひねくれ者で裏切りの常習犯であるミャーも、パティアにはもうメロメロニャ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

小説家になろう 勝手にランキング
よろしければ応援お願いいたします。

9月30日に双葉社Mノベルスより3巻が発売されます なんとほぼ半分が書き下ろしです
俺だけ超天才錬金術師 迷宮都市でゆる~く冒険+才能チートに腹黒生活

新作を始めました。どうか応援して下さい。
ダブルフェイスの転生賢者
― 新着の感想 ―
[良い点] クレイのお話。良かった、それ以上の感想が浮かばない。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ