36-7 バーニィのお泊まり計画 - 放牧地の完成 -
・うさぎさん
畑や狩りに労働力が分散したのもあって、放牧地作りは着手から6日をかけてどうにかほぼ完成した。
伐採が済んだことにより、小さな勾配のある広い平地がそこに生まれて、初日にまかれた牧草の種が若葉を作っていた。
「よし、鉄線を巻き付けろ、こいつが終われば晴れて放牧地の完成だ!」
「はい、任せて下さいバーニィさん!」
「キシリールは馬どもを連れてきてやれ。だがよ、牧草の新芽を食い散らかされないように見張っとけよ」
「そうしましょう。うちのファゴットも喜びますよ」
馬をモンスターに狙われたら大損害だからな、新しいバリケードはでかくてガッチリとした構造にした。
場所は古城裏、つまり西側の城壁にそって張り巡らせた。
さらに放牧地のための柵も加えた二重構造だ。これなら馬どもも安心して放牧を楽しめるはずだ。
ちなみに俺の計画は馬だけじゃねぇ。さらにこれを北へと広げて、将来的には、カスケード・ヒルから家畜を買う。
リックちゃんが牧畜系の食材をやたら欲しがってたからな。
卵と乳があれば、女の子が喜ぶ食べ物が作れる。俺は酒の方がいいけどな。
「バーニィ先輩、連れてきましたよ!」
「ピッコロ! ピッコロは僕が面倒見ますね!」
ニヤニヤと壮観の放牧地を眺めていると、もうキシリールが馬を連れてきた。
ラブ公がピッコロの手綱を受け取って、キシリールが柵を開いて馬たちを中へと連れてきた。
「どうどう、落ち着けファゴット。ははは、お前がこんなに興奮するなんてな」
「無理もありませんよ。ピッコロとファゴットだって手伝ったんですから」
馬どもは興奮していたよ。すぐにでも駆けたそうに前足をバタ付かせてよ、どっちもしきりに背中に乗れと急かしていた。
「ちょっと走らせてやったらどうだ。ここまで見せてよ、まだ牧草が生え揃ってねぇから走れねぇなんて、馬は納得しねーだろ」
育ち始めた牧草と、広々とした平地は何度見ても達成感にかられた。
もう少し待てばここが緑いっぱいになってよ、馬たちが里にいながらして牧草をはめるようになる。
その光景がまた、さぞや牧歌的っていうかよ、たまんねぇんだろうな。
「い、いいんでしょうか……?」
「じゃあ少しだけ……ピッコロ、いくよっ!」
「あっ、ずるいですよラブレー! ファゴット追いかけろ!」
「ははは、こりゃアルスの野郎も呼んでやらねぇとかな」
隠れ里の放牧地の完成だ。
まずは山羊かね。その次は羊かな。牛なんかもパティ公は喜ぶだろうな。
……まあ、牛は匂いがアレだから、城から遠ざけたい気もするが。
「おおー、バニーたんバニーたんっ、ほーぼくちん!」
「……は?」
そこにどこで嗅ぎ付けたのやらパティア飛んできた。
「ほーぼくちんかんせいしたのかー!?」
「なんだそりゃ。お前さんよ、ぼくちんってツラじゃねぇだろ」
「ち、ちがうのーっ! ほーぼくちんなのーっ!」
「ああ、なんだ、ほうぼくちんって、放牧地のことか……」
パティ公も広大な放牧地に感動していた。
「あっ、ラーーーブーちゃーーんっっ♪」
「って、危ねぇから待てやこらっこのバカ娘っ!」
「ふぎゅぅっ……!」
一気にテンション上げてよ、駆け回ってる馬どもに向かってつっこもうとしたからよ、大変だったわ……。
まあそういうわけだ。こうして、俺たちは里での生活に付き合ってくれる馬どもとの、信頼関係ってやつを確かなものにした。
●◎(ΦωΦ)◎●
でよ、その日の晩、俺はとあるお宅にやってきた。
時刻はいつもの賑やかな晩餐が盛り上がりのピークを迎えて、ガキどもが寝る支度を始める頃だ。
今日、俺はここに泊まる。もうそう決めた。
ここはマドリとラブレー、カールの家だ。これを建てた俺には、ここに泊まる権利があるからだ!
さて、まずは外掘りから埋めて行こうじゃねぇか、へへへ……。
「お前さんよ、ハンスのおっさんとは一緒に暮らさなくていいのかよ?」
「じゃあここも改築してくれよ。そしたらとーちゃんとも一緒に暮らせるぜ」
「いや、それはちょっとなぁ……。むしろ、俺がここに居座りたいというか、なんというか……」
ハンスのやつがマドリちゃんに勘違いを起こしちゃいけねぇ。
その点、俺なら安心だ。俺はマジにならないプレイボーイだからな、へへ。
「おっさん……。まだマドリにちょっかい出してるのかよ……。あのさ、マドリとは、歳めちゃくちゃ離れてるだろ……っ!?」
「おいおいバカ言っちゃいけねぇぜ。いいかカール、男が若い子に惹かれるのは、本能だ。お前もわかる、じきにわかる……俺の気持ちがよ。本能だからしょうがねぇのよ、へへへ……」
冷たい目でカールに見られている。だが俺の知ったこっちゃねぇ。
歳を取ればお前だってわかるんだよ、絶対にわかる。保証するから俺の背中を見て育て。
「エレクトラムさんが言ってたぞ。あんまおっさんの影響受けるなよって」
「ダハハハッ、正論過ぎて反論できねーわな」
「おっさん……。そろそろいい加減にした方がさ、いいんじゃねーのかな……」
「いいかカール。男のスケベ心はよ、いくつになっても消えねぇんだ。それに逆らって生きるなんて、そんな人生味気ねぇだろっ、いいや俺は絶対イヤだね!!」
「わかんね……。おっさんみたいにはなりたくねーよ、俺……」
するとその時、玄関が鳴った。
帰ってきたその子は俺を見て、目を見広げて口を開き、驚いた。
「えっ……!? ば、バーニィさん……?」
「おうっお帰りマドリちゃん。ところでよ、今日俺ここに泊まるからよ、よろしくな?」
そのかわいらしい目がさらに大きく広がるのを見つめて、俺はこれから始まる完璧な計画に身をゆだねた。
突然ですが、365話目にて更新ペースを落とそうと考えています。
実は「超天才錬金術師」の書籍化作業に、新作の準備、その他諸々のシナリオお仕事に追われています。ごめんなさい!
それといつも応援、感想、語時報告ありがとうございます。皆様のおかげで走り切れそうです。
つきましては、365話達成の翌日に公開する、どうか新作も応援して下さい。
さらにもし気が向きましたら、近々予約が開始される「超天才錬金術師」も買って下さい!
本作「通称ねこたん」はとても気に入っている作品なので、これからもじっくり続けていきます。応援して下さい! ねこたんも書籍化したい! あとバニーたん自重しろ!




