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32-5 第二次ネコタンランド騒動 - ご入浴の儀 - (挿絵あり 挿絵差し替え済み

 男爵が魔将サレと手を結んだというのは事実のようです。

 2頭立ての荷馬車6台と、グスタフ商会のイヌヒト6名、ネコヒトの移民希望者12名にピッコロにまたがる男爵に斥候のわたし。


 そんな目立つことこの上ないキャラバンが何事もなく無事に里へとたどり着けたのですから、このための根回しが既に働いていたと見る他にありません。


 あえて苦労を上げるならルート選びくらいですよ。

 大型の荷馬車は悪路や狭い道に弱く、必要に応じて樹木の枝葉を落として進むことになりましたから。


 このサーカスでも始まりそうな一行が隠れ里ニャニッシュにたどり着くと、里の皆は大歓迎で迎え入れて下さいました。


 ネコヒトの民は同胞が増えることを心より喜びました。

 パティアを中心とした子供たちのテンションもフカフカの民と物資にうなぎ登りです。


 特に喜ばれたのはスポンジと軽石、それにダンがコソコソとお願いした月光石です。

 早くこの青白い石が夜中に燐光を放つところを、早く彼らに見せてあげたいものでした。



 ●◎(ΦωΦ)◎●



 さてわたしたちが里に到着した頃にはもう夕方でした。

 想定以上の人数がやってきて、リックら厨房担当が慌てだしたのはあえて語るまでもないことでしょう。


 よってこのままでは料理が足りないということで、いつもより晩餐の時間が遅れることになりました。

 そこで男爵とイヌヒトの労働者、それに新しいネコヒトの民はわたしたち隠れ里の住民と共に地下大浴場に向かい、その日の疲れを落とすことにしたわけです。


「グルルルル……なんでパティアさんと一緒に入れねぇんだ……」

「男爵、あまりそういうことを大声で言わないで下さい、パティアが聞きつけたらここに飛んできてしまいますよ……」


 陳腐な慣用句ですみませんがね、そうなることは火を見るよりも明らかです。

 男爵がパティアに惚れ込んでるのと同じように、パティアも男爵が大好きです。ええ、毛皮枠としてですが。


「わかるっ! わかるぜぇ男爵さんよぉ……。やっぱよ、男女で風呂を分けるなんてよ、こんなの無粋だよなぁ……」


 バーニィは混浴の時間を好んで入ります。

 しかし今日は男爵とご一緒したい気分だったようでした。


「迷い無きスケベ心が清々しいにゃ」

「てめーは黙ってろクレイ! まったくよ、パティ公と一緒に入りてぇ男爵の気持ちも察しやがれや!」


 あなたわざとやってませんかバーニィ……?

 男女の湯を隔てるのは折り畳み式の木板だけです。当然向こう側にいたパティアが反応してしまいました。


「へへへ……モテるおんなは、つらいぜ……。じゃ、ちょっとなー、いってくるねー、ジア」

「ちょっとパティア! またあんた、だ、ダメだってばっ! ってもういない!?」


 この常習犯の手口について説明しましょう。

 男女を隔てる木板の仕切り、これは折り畳むという構造上、湯船の下側をふさいではいません。実は潜れば簡単に行き来できてしまうのです。


 この前なんてジョグとリセリが手を繋いでいましたよ。

 本人たちはわたしに気づかれてるとは思ってもいなかったようですがね、フフ……。


「ばぁーっっ! きたぞぉーっぶるたぁぁーんっっ!」

「ぱっ、ぱぱぱぱっ、パティアすわぁぁーんっっ!!」


 男湯から女湯へと、白い肌とブロンドの髪を持つ魚影が現れました。

 それが男爵を見事水中の中から捜し当てて、目の前で地上に浮上したわけですよ、はしたない……。


「ぶるたーーーんっ♪ あいたかったぞー」

「お、お前ッパティアッ、またお前ッ?! うっ、ぅぅっ……」

「騒がしい子たちだにゃ……」


 仲のよろしいことで、カールとジアは同じ時間に入浴する傾向があります。

 そのカールの目の前に、男爵曰く絶世の美女の裸体が現れました。


「ちょっとカールッ、パティアの裸見ちゃダメッ、ダメだからねっ!」

「わ、わかってるって……うっ、うぁ……鼻血が、止まら、くそ……俺もう上がる!」

「おいおいカール、ゆっくりしてけって。男が男湯から逃げてどうすんだっての」


 バーニィの制止はムダでした。

 興奮のあまり鼻血をポタポタとたらして、危なっかしい足取りで浴室から出ていきましたよ。


 ここはまあ、頻繁に鼻血が出るほどカールが健康になったと喜びましょうか。


「無理もねぇ……パティアさんはあまりに美しすぎる……。心と姿、そのどちらもこれほどまで清らかな存在は他にいねぇ……」

「ぶーるたーん♪ ぶるたんのふかふか、あらったげる! ねこたん、せっけんちょーだいっ」


 幸いか不幸か、浴室には他に男の子はいません。

 わたしの娘はさも当然とここに居座るおつもりのようでした。


「言ってもムダだとわかっています。が、一応言っておきましょうか」

「えー、なーにー?」


「女の子がはしたないですよ、男爵はわたしが荒っぽく洗浄しておきますので、女湯の方に戻られて下さい」

「余計なこと言うんじゃねぇ猫野郎ッ! ああっ来て良かったぜ……パティアさん、パティアさん、このヘンリー・グスタフ、これからも貴方様にお尽し致します!!」


 ダメですねこれは。男爵の目からは幼き聖女にでも見えているのでしょうか。

 いえ実際のところ聖女と名乗れるくらいには、とんでもない力を持っているのですが……。


「うん! パティアもー、つくし、かわいくてすきだぞー。きがあうな、ぶるたん」

「パティアそっちのつくしじゃないって! ていうかわたしカールの様子見てくる、後でねパティア!」


 ただアホの子なのが難点です……。

 湯に濡れた9歳児は裸のままきょとんと首を傾げておりました。つくしじゃないの? とでも言いたげにです。


「あ、そうだー。ジアも、こっちにきたら、たのしいかも」

「ヤダよっだってバーニィさんいるもん! じゃあね!」

「フフ……」


 言われてしまいましたねバーニィ。それもこれもあなたがスケベで、それを全く包み隠そうとしないせいですよ。

 そう目線で彼を笑っておきました。


「ネコヒトよ、思春期の娘に嫌われる父親って、こんな感じなのかね……」

「生憎まだ経験したことがありませんね。パティアに限ってはわたしを嫌うことなどあり得ませんが」


 その後、パティアは男爵を楽しく洗いたくりました。

 さらにそれを羨ましがるネコヒト数名の毛皮も元気に洗い流して、それから上機嫌で男湯を上がっていきました。


 毛皮の湿った男爵に肩車されて、ネコヒトに取り囲まれながら、まるでお姫様みたいに彼女は食堂に移ったのでした。



【補完絵】大人しく入浴する方の幼女

挿絵(By みてみん)


おぅ……児童ポルノ……。

未完成版を投稿していたので、挿絵を差し替えました。

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