プロローグ
不幸な産まれを強調するために、あえて教養のない親と子、という文面になっています。
子供は親を選べない。
だからこそ親には重大な責任がある。
全8話(エピローグとプロローグも入れて)、14000字くらい。
以前投稿したものの文章全体を見直し、内容を一部変更して再投稿します。
固い地面に作られた畝には貧弱な作物の茎が残され、痩せた土地での実りの悪さを感じさせた。
乾いているのは地面だけでなく、集落にある唯一の井戸も枯れはじめていた。
ここはウルド国の中でも特に寂れた領土にある、名もなく、土地を治める領主も存在しない未開拓の土地。
町から遠く離れ、よほどのことがない限り誰も近づかないような山中に、その集落は存在していた。そこに人が住んでいるとは誰も知りもしないような場所に、ひっそりと。
ルシュタールの北東側に位置しながら、文明の発展を成し遂げたかの国とは違い、ウルド国は文明的な発展から切り離されたかのように、いまだ未開拓の土地が大半を占めている状態にあった。
そんな国の片すみで産まれ、圧制を敷く領主から逃れて来た者や、町での成功を夢見て田舎から出て行った身分の低い者。あるいは窃盗や詐欺でお尋ね者となった、すねに傷を持つ者など。そんな社会の落伍者が寄り合ってできた集落。
その小さな集落で産まれた子供が一人、地面に突き立てられた不格好な石の墓標の前で手を合わせ、今は亡き母に祈りを捧げていた。
目をつむる少年の顔には大きな痣があった。
産まれたときには付いていた痣。
顔の半分近くを青紫色の痣がおおい、痛々しいほどだったが、集落にはそれを気にする同年代の子供はいなかった。
少年は村にいるただ一人の子供だった。彼は同年代の子供と触れ合うこともなく、この小さな集落ですごしてきた。
それゆえにその痣のせいで避けられたり、怖がられることも経験せずに済んでいた。
──この物語は、不幸な境遇に産まれた少年が、破滅を迎えるまでの物語である──




