表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モン娘えぼりゅーしょん!  作者: 氷雨☆ひで
ストーリーその2 一章 スカウトの日々
44/105

043 大地母神

 アルラウネが園に来て数日後、俺のもとに王都から客が訪れた。


「……君は?」


 そこにいたのは、若草色の祭服を着ている一人の少女だった。茶色の髪を左右に三つ編みにしていて、純朴な印象を受ける。たぶん十代後半かな?

 左胸にある麦の穂と鍬が十字に交差している意匠が印象的だ。確か……。


「王都のラーナ神殿で助祭を任じられているシンディといいます」


 そうだ、ラーナ神のシンボルだったな。大地母神にして豊穣神だったっけ。その性質上人気の高い女神だ。


「重要なお話があるのですが、よろしいでしょうか?」


 特に断る理由もないので客間に案内する。最初は軽い気持ちで話を聞いていたのだが、その内容の大きさに俺は戸惑っていた。

 要約すると、ラーナのお告げがあったということだ。ラーナが俺に話したいことがあり、その内容は重要なもので俺にしか聞かせることができない。そのために、三日後の夕方のごく短い時間、シンディにラーナが降臨する。降臨できる条件は厳しく、その日時を逃せば次がいつになるか分からない。そのため、三日後に王都のラーナ神殿に来てほしいとのことだ。


 ……地球の現代人的思考だと、どう考えても宗教による詐欺だ。神殿を訪れたが最後、一体何をされるのかと警戒するところだ。

 しかし、この世界には神が確かに存在する。そもそも、俺自身リディアスというこの世界の創造神とやらに関わっているわけで。この世界の神はリディアスが創造した部下のようなものらしいから、リディアスの力の一部と思われるものを持つ俺に対して何らかのアプローチがあってもおかしくない。


「あの、私はよく分からないのですが、チキュウ、ニホン、トーキョーという言葉を伝えればリューイチ様には分かると」


 頭を殴られたような衝撃だった。まさか、この世界で再びその言葉を第三者から聞くことになるとは。これは、神が関わっているのは本当かも……。


「分かった。確かに、重要な話だった。わざわざありがとう」

「よかったです、分かっていただけて」


 シンディはかなりホッとした表情になっていた。内容的にものすごく重要と思われる案件だけに、助祭という微妙な地位の子一人では不安があっただろう。

 お詫びとして、グローパラスを案内した。食事の戒律は特にないとのことで、ハーピーのオムライスをご馳走したらとても喜んでくれた。一番喜んだのはスライムとのふれあいだったが。すごいな、スライム人気。




 そういうわけで、指定された日に俺は王都のラーナ神殿を訪れた。

 俺を出迎えたのはシンディと、数人の司祭、そしてここの責任者である司祭長だった。

 案内されたのは礼拝堂で、降臨の時は俺とシンディだけになるそうだ。ラーナと波長が合うのがシンディだけらしい。この前シンディ一人で俺の所に来たのは、多数で押しかけることの無礼を心配して、重要な役を負うシンディが一人で行くことになったらしい。


 ラーナが降臨するとシンディは意識を失うので、ラーナとの会話は俺しか知ることができないようにするとのことだ。信仰する神の降臨に立ち会わなくていいのかと質問をしたら、これもまたラーナのお告げにあったらしい。

 とにかく、俺はラーナに名指しをされた人物ということで、司祭長たちがこちらを見る目は信仰のそれがあってやりにくいことこの上なしだ。時間が来るまでが本当に長く感じられた。


 そして、指定された時間が迫る今、礼拝堂に俺とシンディだけがいる。シンディは礼拝堂にあるラーナ像に祈りを捧げ、俺はそんなシンディを見ながら来るべき時を緊張して待っていた。


 キィィィィィィン……


 気づいたら空気が振動していた。

 何か大きな存在が礼拝堂を覆い、圧迫感を感じるようになる。その中、シンディはどこか虚ろな瞳をして立ち上がる。

 そうか、もうシンディにラーナが……。


「はじめまして、リューイチ。私はラーナ、豊穣神と呼ばれています」

「……!」


 声はシンディのそれだが、どこか遠くから聞こえてくる。それなのに、脳に直接響くような妙な感じを受けてぞわぞわする。


「この子に負担がかかるので、話したいことは多々ありますが、重要なことのみ伝えます」

「はい」


 俺は余計なことは口挟まず、ただラーナが語る言葉を聞くことにした。


「リディアス様の力の一端を得たあなたは、半神と呼べる存在となっています。そんなあなたの生殖についてですが……」

「そんな話!?」


 俺はそう言わざるをえなかった。もっとこの世界のこととか俺の力のこととか、そんな重要な話が始まるものとばかり。


「私は生殖と繁栄を司る神でもあります。あなたの状況を考えると、早いうちに話しておかねばなりません」

「……はい、分かりました」

「あなたの子は、あなたの力、正確にはリディアス様の神力の影響を受けて何らかの特別な力を持つ可能性が高いでしょう。神の血がまだ濃く、言わば神の眷属となるのですから。そのことをあらかじめ知っておいて下さい」


 神のクォーターってことだから、まあ力もそれに応じて大きいだろうな。


「ただし、その力が強大故に、母の中で結合する確率、つまり妊娠する確率は相当低くなります。また、あなたの子種が入ると、あなた以外の子種はすべて消え去ってしまいます。ある程度子の形を成していたらそれは起こりませんが」


 なんかいきなり露骨な表現が使われて冷や汗をかいてしまう。

 つまり、なかなか妊娠しないということと、俺が性交渉をすると他の男との間で仮に妊娠していても、お腹の中で一定以上子供が成長していない限り、仮に妊娠していてもそれがなかったことになるということか。

 えー、何それ、ものすごく怖いんだけど。


「また、子が腹の中で成長すると共に、母体も神の力の影響を受けます」

「具体的には?」


 ……母体が耐え切れないとかなると笑えない。


「望む年齢まで若返り、肌はぴちぴちになり、金運は上昇し、女子力も大幅にアップします」

「あなた、本当に神ですか?」


 なんかいきなり俗っぽい台詞が。女子力って言葉がこの世界にあるの?


「あなたに分かりやすい言葉で伝えたつもりですが……」

「は、はい、分かりやすいことは分かりやすかったです」

「それはよかったです。私が伝えたかったことは、もし子供を作る気があるなら、普通の人間とは色々と異なることを自覚しておくことが必要だということです」


 わざわざそんなことを伝えたかったのか。いや、今の俺の状況的に、いつモンスター娘から寝こみを襲われるか分かったものではないから、あらかじめ知ることができてよかったと言うべきか。


「母体の子供の影響で若返ると、それからは定期的に神力を摂取することでほぼ不老になるので、人間の場合は周囲への影響が大きいと思われるので気をつけて下さい」


 ……そもそも若返った時点で説明が必要になると思う。


「情報をありがとうございます、助かりました」

「いえ、あなたの存在はこの世界にとって必要となるでしょうから。なお、私の立場としては産めよ増やせよです。そろそろこの子の限界が近いので、私は戻ることにします。リューイチ、モンスターたちをよろしくお願いします」


 そして、シンディは糸が切れた人形のように、その場に崩れ落ちたので慌てて支える。すでに、ラーナがいた時の圧迫感はなくなっていた。

 その後、おそらく聞きたいことは山のようにあるだろうに、司祭長たちは何も聞かずに俺を見送った。後日聞いた所、シンディは三日間意識を失っていたが、目覚めると以前よりも体の調子がよくなって元気にやっているようだ。


 それにしても、神の実在を確認し、さらに俺の生殖能力について分かることになるとはなあ。

 モンスター娘をかわすときに、子供ができにくいというのはいい言い訳になるかもしれない。特に、他の人間との子供ができる可能性を潰してしまう可能性まであるわけだし。いや、特別な存在が生まれるとなると逆に積極的になる連中がいるかもしれない……うーん。

 別に禁欲的なわけではないし、子供を作るわよといきなり迫られると、いや、なんかね。聖人のように何もしなかったというわけではないけど。


 今は、もっとグローパラスを充実させること、モンスター娘の種類を増やすことに専念することが大事だ。

 次はどんなモンスター娘をスカウトしようかな。

リューイチとの間に子供ができるとどうなるか、気になっている人がいるかもしれないので。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ