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モン娘えぼりゅーしょん!  作者: 氷雨☆ひで
四章 モンスター娘と人間を絆ぐ者
35/105

035 風呂の全裸祭り

 ローナたちに押されて、なぜか女湯の更衣室に連れられる。


「前に言ってたろ。体の洗い方を教えてくれるって。正直、あたしらは水浴びぐらいしかしたことないから、きちんとした入浴ってのが分からないんだ」


 あ、そんなことを言ったような気がする。

 いや、これは色々とまずいんじゃなかろうか。


「はいはい、うぶなねんねじゃあるまいし、さっさと脱いだ脱いだ」

「いや、それ女の台詞じゃないだろ!?」

「往生際が悪いよぉ、うふふふ」

「そうそう、覚悟を決めなさい」

「それ、みんな、かかれ!」

「うわ!? やめ……」


 一斉に襲いかかられ、あっという間に全裸にされて放り込まれた。そして、服をたたむことを知らないモンスター娘たちがすぐに全裸姿で入ってくる。スカラベが部分鎧を脱ぎ散らかしているのが目に入る。やっぱりあれって脱げるのか。

 そして、目に入る肌色と裸祭り。

 これはもう、あれだ。無の境地になるしかない。幸い、教えるべきことはあるわけで、それに集中すればいいだろう。


「いいか、これから俺が教えることはとても大事だからな。手順をしっかり覚えて仲間にもきちんと教えるように」


 キリッとした表情で言ったつもりだが、目の前に全裸の美少女や美女が並んでいる姿を見ると冷静ではいられなくなる。いかん、色即是空空即是色……。


「あそこを勃たせて真面目な表情は滑稽でありますな」

「うるさいよ! 俺の下半身はともかく、これから話すことは本当に大切なことだからちゃかすんじゃない!」

「ねえ、リューイチ、これ何?」


 いつの間にか近くに寄ってきたサンディが、マイサンを興味深そうにいじり始めた。いや、サンディさん、それはまずい。色々な意味で。


「サンディ、お前にはまだ早い。今は、俺の言うことをしっかり聞きなさい」

「はあい」


 危ないところだった。他のモンスター娘たちが肩を震わせて笑いをこらえているが無視だ無視。


「この場にいるサンディを除く全員には、唾液に強い殺菌作用が出るような進化をさせている。まずは、全身をその唾液で消毒だ。舐めなくてもつけるだけでいい。特に、口の中と、口の周りは念入りに。髪はやりづらいだろうが、頭皮を含めて唾液をつけるようにしてくれ。一人では無理なら、他の誰かに協力してもらえ。時間がかかるだろうが、これだけは絶対にさぼらないように」


 そして始まる、体の手入れ。動物は自分の体を丁寧に舐めて手入れをするものだけど、まあそんな感じの光景だ。ただし、外見が人間に近い美少女、美女がそれをやっているとなるとかなりアレな光景になる。

 無心だ無心。

 なお、サンディは環境的に唾液による消毒をする必要がないので、俺の近くに待機している。まだマイサンに狙いを定めているっぽいので気をつけなければ。


「ねえねえ、これって面倒なんだけど、やる必要あるの?」

「少なくとも、ゴミや糞に触れたら必ずやらないとダメだ。こまめにやっていればそこまで時間をかけないでもいい。大雑把に言うと、目に見えない小さな生物が体内に入ることで病気になるわけだ。だから、その目に見えない小さな生物を、その唾液で殺さなければならない。そして、そういった目に見えない小さな生物は、ゴミや糞に多くいる。面倒だからとさぼると、お前たちに触れた人間が病気になる可能性が高くなる」

「うう……、面倒だけどそれなら仕方ないか……」


 こればかりは丁寧にやらないと意味がない。モンスター娘が原因で病気が流行してしまっては、共存の道が絶たれてしまいかねない。

 そのことを理解してか、彼女たちは真剣に唾液による消毒をしていた。真剣すぎて目に毒だからしばらく目を逸らしておこう。しっかりやっているようだし。


 それにしても、風呂文化がきちんとあるのは改めて素晴らしい。本当は体を洗う場所にもシャワーやお湯が出る場所がほしいのだが、そこまで贅沢を言ってはいられないか。いや、水量が豊富だし、設置ができるかもしれないな。

 俺の考えでは、三つある風呂のうち、一つは汚れを落とすための場所と割り切るようにしている。ここでの湯船は、あくまでも体を流すための湯をためておくものと割り切る。この汚れを落とす場所以外の二箇所でゆっくりと湯船につかるのがいいだろう。


「ねえねえ、リューイチ、私も体を舐めた方がいい? それともリューイチの体を舐めようか?」

「サンディや俺には必要ないんだ、うん」


 危ない。考え事をしていたから頷きかけていた。サンディに自分の体を舐めさせる図……どう考えても事案を通り越して犯行現場だよな。

 ……よし、見た感じ、全員体を唾液でしっかりと消毒したようだな。


「次! 全身を石鹸でよく洗う!」


 切り餅みたいな直方体の石鹸が大量にある。実はそれなりに高価らしい。自然物でできているから、日本でも一時期話題になってたっけ。ルイ十四世が力を入れていたとかなんとか。たぶん、それと似たような作り方をしているんだろうな。

 確かこのテの石鹸って……うん、そうそう、ちょっと粘土っぽい匂いがするんだよな。体にはこういう匂いは残らないらしいけど、やっぱ石鹸はいい匂いがするのがいいんだけどなあ。


「石鹸の一番大きな役目は、体の汚れを落とすことだ。唾液の消毒で事足りると思うけど、人間の文化を知ってもらうためにもやってみてくれ。確か美肌効果があるとも言うし」


 正直そこらへんは興味がないので実際はどうか知らない。だが、美肌という言葉にサンディを除く全員の表情がギラっと輝いた気がした。

 ……これは、実はよく知らないけどー、なんて言い出せなくなったな。

 それから、石鹸の泡立て方やタオルに泡をつけて全身を洗うやり方を教えた。


「なあ、リューイチ、よく分からないんだけど」


 ローナが泡立てたタオルを持ちながら途方に暮れた表情になっている。さっき俺が恥ずかしい思いをしながら実演したというのに、一体どういう了見だ。


「はあ、ちょっと貸してみな」


 俺はタオルを受け取ってローナを洗い始める。

 無心だ、無心。あまり強くこすりつけないように、肌を撫でるように洗う。泡がなるべく全身につくようにしないと汚れを落とすことができない。

 ……こうやって見ると、元はGだというのに肌は結構きめ細やかだな。そして、褐色とまではいかないが若干黒い肌。胸は控えめだが、タオル越しにでもその膨らみが分かる、結構弾力が……って、やばいやばい、無心無心。


「な、なんか気持ちいいね、これ。触り方が優しくて……ちょっとエロいけど」

「そ、そういうことは言わないでくれ。強くこすると肌を痛めるから、自分でやるときは力加減に注意しろよ」

「なあ、こうやって手で洗うのはいけないのか?」


 ローナが手に泡を付けて俺の微妙なところをやわらかく撫で始める。や、やばいぞこれは。さっきから危機の連続だ。


「実際、肌が弱いなら手で洗う方がいいって話だ。俺はタオルで大丈夫だけど」

「ねえ、もっと手で洗ってほしいんじゃない?」


 耳元に息を吹きかけながら囁いてくるローナ。俺は自制心をフル動員して、ローナにチョップをかます。


「今はそんなことをやっている場合じゃないだろ!」

「なんだよ、ケチ。じゃあ、今度ね」


 その言葉には返事せず、俺は全員に髪も洗うように指示をした後、サンディのところへ戻った。やはり、うまく体を洗えていない。サンディはまだ小学生っぽい外見なので、俺は心を乱すことなく体を洗ってやることができる。というより、基本的に芋虫ボディの方が長いから、やわらかい芋虫ボディを手で丁寧に洗うことに集中して邪な気持ちがわかないといった方が正しいかもしれない。


「きゃはは、くすぐったいよぅ」

「動かないでくれ、洗いにくい」


 結構やわらかいのに、砂の中を高速で移動しても傷つかないんだよなあ。皮膚そのものが丈夫なのだろうか。……って、うっすらと鱗みたいな感じになっているのが見えるな。鱗でありながらこのやわらかさ、うーん、やはりモンスター娘は色々と謎なところが多い。


「うにゅう……」


 腹の部分を優しく泡で撫でると、すっかりくつろいだ表情で横たわるようになった。やっぱ風呂って癒やし空間だよな。俺も一人なら、体を洗ってゆっくりと湯船につかりたい……。


「サンディばかりずるいであります。私の腹も洗ってほしいであります。一人じゃ洗いにくいので」


 サンディをひと通り洗い終わるのを待っていたかのように、さっきまで遠目で俺がローナやサンディを洗っているのを見ていたカフィがやってくる。


「ああ、了解」


 さすがに全裸祭りに慣れてきた俺は、カフィからタオルを受け取ると、上半身の腹の部分をタオルで撫でる。


「うひゃう!? ち、違うであります! そこじゃなくて、蜘蛛の腹の部分であります!」


 顔を真赤にしてカフィがあわあわしている。全裸は平気で見せているのに、その基準が分からない。それから、器用に体の側面を床について腹を見せたので、俺は丁寧に腹を洗ってやった。


「はう……極楽であります……」


 いや、マジで全裸に対して感覚が麻痺してきたな。もう何も怖くない!

 それから、他の連中も「不公平だ!」と言ってきたので、背中やら腹やら洗わされるはめになった。普通の人間だったら絶対のぼせてた。こいつら、本当に体は頑丈だな、と改めて気付かされた。




「ふう……」


 体の汚れをしっかり落としたので、二つ目の風呂ではすぐに全員で湯船につかることになった。事ここにいたっては皆が無言。ただただ気持ちよさに身を任せているという感じだ。


「いやあ、風呂っていいものなのねえ……」

「本当にそうね。体を綺麗にするのも、なんか達成感があって癖になりそう」

「とにかく、こうして体を清潔に保つようにしてくれ。特に、人間に会う前は風呂で汚れを落とすのを忘れないように」


 なんだか不思議な光景だ。様々な外見をしたモンスター娘が皆同じようにくつろいだ表情で湯船につかっている。これだけでもう、人間とモンスターの共存も楽勝ではなかろうかと錯覚する。


「わーい!」


 サンディが器用に湯船で泳いでいる。芋虫ボディをうまく上下に動かしている様子が、バサロ泳法を思い出す。そういや、今はバサロはダメだったんだっけ。

 本来は湯船で泳いではいけないが、まあ今回に限っては許そう、うん。

 あー、マジでいい気持ちだ。

 風呂掃除はどうしようかなあ。なんかもう疲れた、めんどい。

 このグローパラスにはスタッフが色々と必要だな。それもモンスター娘で揃えた方がいい。各地で勧誘するか? ただ、移動が大変なんだよなあ。とりあえず、馬に乗る訓練をした方がいいかな。

 あー、もう考えがまとまらない。難しいことは今度考えよう。


 そして、風呂をたっぷりと堪能して屋敷へと戻った。サンディを除くモンスター娘たちは、それぞれ自分たちの住処へと帰っていった。

 ん? なんか人の気配がするな……。


「あ、ようやく帰ってきた!」

「こんにちは、リューイチさん」

「あれ、クレアにティナ、どうしたんだ?」


 なんか荷物らしきものがそこらへんにあるのが気になる。


「私たち、この屋敷に住むことになったから」

「よろしくお願いしますね」


 は?


「ど、どういうこと?」

「ふっふっふ、私のモンスター調査のことが大臣閣下に認められてね」

「リューイチさんの仕事のお手伝いを頼まれたんです」


 今日は寝耳に水なことばかりだ。

 これから本当に忙しくなりそうだな。

 R-15でどこまでOKか微妙だったのでマイルドに。


 次回でストーリーその1が完結です。

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