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どエルフさん  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第一部第六章 エルフさらいの悪漢ドワーフ
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第82話 どエルフさんと千年に一度の美エルフ

「私が、熟れ熟れのじゅくじゅくの結婚適齢期エルフ五百歳、エルフィンガー・ティト子よぉおおおお!!!」


 きらめくパーマーのかかった金色の髪に、まるでケチャップでも塗りたくったような真っ赤なルージュ。

 ひじきのようにごん太のまつ毛に緑色の瞳を揺らして、顔面はおしろいを塗りたくったように蒼白。

 どうしてか、所々に粉が吹いているのが見て取れる。


 顔から下はといえば、赤いボディコンスーツにどたぷんとたわわにメロンサイズのビックおっぱい。

 そのぴっちりとしたスーツから伸びている手足は、野山を駆け回って鍛えたのだろうか、逞しい腕と足が伸びている。

 そして剛毛。自然というよりも野生を感じさせる濃ゆい体毛が、バイソンのような足に映えていた。

 

 彫の深い顔をこちらに向けたそいつの耳は、申し訳程度に尖がっている。

 まるで、粘土で無理やりとがらせたようなそれは、彼女が髪を振うたびに何故だがその金色の毛を絡めとった。


 ――うん、なんだ、これ。

 そう、思ったのは女エルフだけではない。


 暗黒騎士、そして、彼らがいる店の店主を除いた誰もが、言葉を失ってその場に立ち尽くしていた。

 そんな妙な間を裂くように、熟れ熟れエルフがまた口を開く。


「想像妊娠でオークの子を身ごもること三桁!! 愛するより乱暴でもいいから愛されたい!! エルフィンガー・ティト子よぉおおおお!!!」

「いいから、分かったから、落ち着きなさいよ!!」


 絶叫する熟女エルフ――もとい、女装した男戦士にすかさずツッコミを入れたのは、本物の女エルフだった。


 長らく行動を共にし、相棒として認めていた男。

 その男がやって見せた理想のエルフという体での女装。


 そのあまりの衝撃的な姿に、彼女が覚えた戦慄は言葉にすることは難しかった――。


 ツッコんだはいいけれど、その次の言葉に困って黙り込んでしまう女エルフ。

 そんな彼女の横をすり抜けて、男戦士に歩み寄ったのは店主のおやじと暗黒騎士であった。


「なるほど、五百歳エルフとは、考えたなティトよ」

「年若いエルフにはない、どこからともなく滲み出てくる圧倒的な大人の余裕。そして物理的かつ精神的な包容力。なんてバブいエルフなんだ」

「店主のおやじ、それにシュラト。お前たちならわかってくれると思ったよ」


 手を取り合い、熱い涙を流す男戦士と店主のおやじと暗黒騎士。

 そこには、おそらくその三人しかわかりあうことのできない、妙な、そして強烈な空気がたちこめていた。


「それがお前の理想のエルフ、最高にバブれるエルフということなんだな、メチャデッカー」

「あぁ、これこそ俺が求める理想のエルフ。ママエルフも捨てがたいが、熟れに熟れた純潔の体を火照らせる行き遅れエルフもまた――」

「あぁ――」

「いぃ――」


 何かを分かち合って天井を見上げる三人。

 そんな三人を白い目で見つめながら、女エルフはまた、言葉を見失うのだった。


「あんなの毎日相手にして、アンタも大変だな」

「――本当にね。なんで、私、あんなアホを相棒にしたんだろう」


 同じく隣でドン引きしている少年勇者にかけられた言葉には、流石に女エルフも答えを迷うことはなかった。

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