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どエルフさん  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第七部第八章 七悪顕現!! 破れ絶対障壁!! 掴め人類の未来!!
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第781話 ど男騎士さんと人と神を別つ一撃

 それはいずれ彼がやらねばならない宿命。

 それは彼が中央大陸のために立ち上がった時から決まっていた運命。

 あるいは彼が産まれたその瞬間から定められたものなのかもしれない。


 握るはかつての大英雄の魂が眠りし、エルフが鍛えた魔剣なり。

 これより今、神々から神を倒すことを委ねられた男が振るう一刀は、虚空を経て模造神イミテーション・ゴッドへと届くだろう。

 参るという言葉と共に宙へと舞う。


「ティト!!」


 店主が叫ぶ。


「ティトさん!!」


 法王ポープが叫ぶ。


「だぞ!! ティト!!」


 ワンコ教授が叫ぶ。


「お義兄にいさま!!」


 さりげなく新女王がなんか不穏なことを口にする。

 普段ならば、えっと耳を疑う所だが、ここが一所懸命。男騎士は新女王の台詞をあえて捨て置いた。


 パーティたちの視線を受けて飛び立った男騎士。

 その身体を、彼が契約する精霊王が巻き起こした海風が巻き上げる。


 太陽を背にして剣を構える。

 自分に向かって殺意と敵意を浴びせかける緋色の目をした異形に、冷たい汗を掻きながらも男騎士は叫んだ。


 張り裂けんばかりに肺腑に押し込んだ息を吐き出して、必殺の名を告ぐ。


 神断つ一撃。

 雷鳴の如く海原に響く、それは猿叫。


「真バイスラッシュ!! チェストォオオオオ!!」


 刃は空気を断ち、光を裂き、眼下の模造神イミテーション・ゴッドへと向かう。しかし、むざむざとそれを受け入れる相手でもない。


 おヘルス仮面に向けていた闇の粒子。

 それをかき集めると束ねて鞭として編む。

 天に向かって逆さに打ち出したその黒鞭は、しかし、光の帯と、風の刃で微塵に切られた。敵は、天上より舞い降りる男騎士だけではない。


 視線の端で二人の女が不敵に笑っている。


「今です、ティトさん!!」


「やっちまいなさいティト!! こんな奴、アンタの敵じゃないわ!! いつものように、一発ズバッと、問答無用で切り捨てちゃいなさい!!」


 おヘルス仮面と女エルフ。

 スケベ二人の的確なフォローにより、活路は開けた。

 それでもなお、散った黒い粒子をかき集めて、今度は薄い膜のような盾を造りだす異形の女。


 そこに向かって、男騎士はなおも、ひるむことなく剣を繰り出す。


 衝撃音。

 激しく金属が打ち付け合う音は、一瞬で止むことはなかった。

 黒い天幕を引き裂いて、男騎士の刃は雷鳴の如く落下していく。

 猿叫はますます激しく、吐き出す呼吸は深い。


 一呼吸。

 さらに力を籠めて男騎士が剣を押し込む。


「もう少しだティト!! あと少しでこいつを突破できる!!」


「性郷どん!! 俺に力を!!」


 その時、懐かしい声が聞こえた気がした。

 悲嘆にくれる男騎士のために心を鬼にして喝を入れてくれた男。

 この島国の平和を願って、最後の最後まで戦った男。


 このレースの背後に潜む政府の陰謀を挫き、この島国に生きる者たちの真の自由のために戦った男。その男から託された想いが、熱意が、男騎士の背中を盛り上がらせる。


 想いの一つで敵が断てるかと言えば決してそうではない。

 しかし、今、ここに至るまでのすべてが繋がり、想いを起源として男騎士の剣閃に力を与えた。


 雷轟ふたたび。


 ひび割れるような音と共に割れた黒い天幕。

 そして、降り注ぐ青き魔剣。


 かつての大勇者の魂を宿して怪しく輝くその剣は、眼下の黒髪の模造神イミテーション・ゴッドの肩口からわき腹を抜けてその身体を断絶した。


 上段袈裟斬り。

 返す刃が再び煌めく。


 血を纏って怪しく輝く魔剣の刃先。

 風の精霊王がしつらえた風圧による足場で、踏みとどまってみせた男騎士は、今度は切り上げで模造神の脇から首に向かってその刃を走らせる。


「くぉおおおおおおっ!!」


 ダメ押しの一声。

 男騎士の切り上げの剣閃が肉を断ち、骨を断ち、そして、皮を断つ。

 跳ね上げられた模造神イミテーション・ゴッドの首が宙を舞えば、鮮血が紅海へと舞い散った。


 勝った。

 神に準ずる権能を持つ者に、男騎士の刃が競り勝った。

 そう思ったその時。


「図に乗るな人間が。人の理で我を倒せると思うてか」


 その泣き別れした頭が怪しく光るや、緋色の目が明滅する。

 まずいと思った時にはもう遅い。


 濡れ羽鴉の黒髪が舞い立った。

 かと思うと、そのサファイアの瞳から、強烈な光が放たれた。

 セクシー破壊光線とは違い、一極に集中したその光は男騎士の肩を射抜く。


「ヅァっ!!」


「ティト!!」


「ティトさん!!」


 体勢を崩して甲板に転がり落ちる男騎士。

 その眼前で、黒髪の模造神イミテーション・ゴッドは自らの首を腕に抱えて、邪悪にほほ笑むのであった。


 神殺し。

 生中には行えるものではないらしい。


「来るがいい、人の希望を背負いし勇者よ。神に模された我が身なれども、人類を調伏するが我が使命。七悪が強奪うばうもの。よもや、この程度の技で殺せるなどとは思うなよ」


 腕にまとわりついていた闇の瘴気が更に濃度を増す。

 次は、彼女が男騎士を攻める手番のようであった。

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