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どエルフさん  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第七部第八章 七悪顕現!! 破れ絶対障壁!! 掴め人類の未来!!
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第779話 ど女エルフさんとおヘルス仮面

 男騎士と女エルフを助けるため、現れたのは、ストッキングを頭からかぶり、局部をニップレスと前張りで隠した謎の女傑――おヘルス仮面であった。


 その登場に、男騎士たちから謎の黒髪女ことからくり侍から変身した女の視線が、そちらへと向かう。


 忌々しそうに舌打ちした彼女は、その瘴気渦巻く漆黒の手を、おヘルス仮面の方へと向けた。黒い砂嵐のようなものがうなりを上げたかと思えば、その腕から離れておヘルス仮面に向かって渦を巻いて迫る。


「……黒塵!!」


 黒い瘴気のかまいたち。

 青天の海原の上でごうごうと唸るそれがほぼ全裸の女へと迫る。

 これにひるまず、彼女は甲板の上で構える。


 何か策があるのか。

 さきほどの戦闘で珍しく不覚を取った男騎士が刮目する。


 目の前で繰り広げられる、謎の女たちの戦い。

 はたして黒い瘴気が大きな手の形となり、裸の女の身体をわしづかみにしようとしたその時。


「甘い!! セクシー破壊光線!!」


 彼女の身体からまばゆいばかりの白色の破壊光線が照射された。


 そう、白色の破壊光線。

 天上から、まるで彼女の裸体を隠すように、掃射されたそれは、黒い霧を見事に焼き切って、おヘルス仮面の危機を救った。


 構えはまさしく胸ポロリのその姿。

 しかしながらニップレスにより、大切な部分は隠されている。

 腕をどけた所で、待っているのはがっかりなパティーン。

 しかしながら、謎の光は大切な局部を隠すために、世界の理を越えてここに放たれた。


 そう、これまでの大出力のそれは初めて見るが、それは間違いなく男騎士たちが見たことのある技。


「ギリモザ!!」


「コーネリアの必殺技じゃないのよ!! やっぱアンタコーネリアでしょ!!」


「ノー!! コーネリアノー!! アイアム、スーパーケンコウマスク!!」


「おヘルス仮面の訳しかたおかしくない!?」


 なんにしても、狂乱する闇の砂嵐は、光の奔流によってかき消された。

 忌々しく、またしても舌打ちするのは黒髪の異形の女。


 彼女はゆっくりとその腕を下ろすと、綺羅星のようなサファイアの瞳を綴じた。


「ふふっ、このおヘルス仮面を舐めていただいては困りますよ。ニップレスにより局部を隠すことにより、ギリモザを発動しなくなったと思いきやさにあらず。この装備は、危険な描写を隠すためのものではない。むしろ、逆に、危険な描写を誘引するためのギミック。世界を騙して、ギリモザを発生させるためのものなのです」


「世界を騙すだと」


「……なるほど!! そういうことね!!」


 納得したのは女エルフ。

 どういうことなんだ、と男騎士が聞き返すと、簡単なことよと女エルフは得意げに腕を組んだ。


「ギリモザは、局部が見えそうになることにより発生する、謎の光による神聖攻撃よ。けれど、その局部露出をノーモーションで行うには動作が大きすぎる」


「……なるほど!!」


「コーネリア――もといおヘルス仮面は、あえてあの格好をすることにより、見えそうで見えないという状態を、瞬時に造りだすということに成功したの。これにより、本来であれば使用するのに時間がかかったギリモザを、瞬時に繰り出すことができるようになるわ。これは実は驚異的なことなのよ」


「ふふっ。それだけではありませんよモーラさん」


「えぇ、もちろん分かっているわよ。更に、おヘルス仮面は、局部の露出を意図的にコントロールし、ギリモザの力を一極集中――その攻撃力を更に高めることに成功した。つまり、伊達や酔狂であんな全裸をしている訳ではないということ」


 その通り、と、パシリとお尻を叩いて背中を向けるおヘルス仮面。

 支援職である女修道士シスターの頼りなさなどもうどこにもない。戦士の顔を仮面の下から覗かせて、おヘルス仮面は謎の女を睨みつけた。


 その時、もっそりと起き上がる影が見える。


「……やはり、ギリモザで私たちを助けてくださったのは、姉さまでしたか」


「リーケット!!」


「……だぞ。そんな格好になってまで、僕たちを助けに来てくれるなんて。コーネリア、本当に、本当に仲間想いのいい奴なんだぞ」


「ケティ!!」


「まさかまさかです。この窮地に、冥府から駆け付けてくれるなんて!!」


「エリィ!!」


 倒れていた男騎士パーティたちが続々と姿を現す。

 店主、勝海舟、暗殺者、船団長、頭領三兄弟。揃いも揃って、皆、無事である。

 男騎士たちの表情がほころんだその瞬間――。


 みな、一様に女エルフの方を向いた。


「けど、ここまで的確にあの、ごにょごにょの理屈を分かってしまうなんて」


「流石はお姉さま。ギリモザを使えなくとも、その手の知識に豊富だからこそ、一瞬で理解することができるその知啓」


「だぞ。僕にも流石に理屈が分からなかったんだぞ。今もちょっとわからないけれど、それがわかるモーラはやっぱりすごいんだぞ」


 あ、これ、クライマックスもいいところなのにいつもの奴だ。

 戦慄する女エルフに向かって、おヘルス仮面と彼女の仲間たちはほほ笑んだ。


「「「「流石だなどエルフさん、さすがだ!!」」」」


「だーもう!! だから、なんでこの場面でこうなるのよ!! せっかくのいいシーンなのに!! もうちょっと、展開考えなさいよ、バカー!!」

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