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どエルフさん  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第七部第七章 異世界ウワキツ格付けチェック
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第775話 どエルフさんとハンマーチャンス

「はい、では、最後の格付けチェックということでね、気合を入れてやって行って貰おうと思います」


「とはいえ、もはやここまで点差が開いてしまうと、なんていうか白けてしまいますね。なにかこう、一般ウワキツ人のしまむらモーラさんに、救済策はないんでしょうか」


「そうよそうよ!! もうこれなんていうか勝負決っている感じじゃない!! やる意味あるの!! というか、ここまで貶めなくてもいいんじゃないの!! ほんと、アタシ、ヒロインなんですけれど!!」


 確かに一理ある、と、なんだか物分かりのいい感じに頷く風の精霊王。


 この精霊王、なんだかんだとこれまで女エルフのウワキツブリを認めていなかったくせに、ここに来てちょっと情け心を発揮していた。

 流石にちょっと、自分でも性癖を贔屓しすぎたかなと反省をしていた。


 これまでのウワキツ勝負を振り返ってみて思う。

 確かに、全て軍配は元赤バニーのからくり娘に上がった。けれども、そこに風の精霊王の好みが入る余地がなかったかと言えば――確かにある。


 風の精霊王。

 行き遅れ、嫁ぎ遅れの女性というのは好み中の好みであったが、その中でもとりわけて、お姉さんっぽい女性には目がなかった。


 中身は間違いなくウワキツ。

 けれども、見た目はそれ相応に美少女。

 女エルフのそんな言動と身体的特徴の不一致が、あまりこう性癖に刺さらないとは、彼も微妙に感じていたのだ。


 なので――。


「仕方あるまい。確かに、ちょっとこのウワキツモンスターを相手に、モーラちゃんでは荷が勝ち過ぎるというのは分からなくもない。最後の格付けは、サービス問題にしてやってもいいかもしれんのう」


「ふっ、自らハンデを貰うなんて、ヒロインが聞いてあきれるわねモーラ!!」


「うっさい!! 勝てばなんとやらよ!! こっちは大切な人を賭けてんのよ、あんたと違ってね!! 負けるわけにはいかないんだから必死にもなるわよ!!」


 負ければ男騎士は元赤バニからくり娘の旦那様にされてしまう。

 世界を救うという使命もあるが、それよりも、それはパートナー的にノー。

 なんとしても女エルフはこの勝負に勝ち、男騎士を護らなければならなかった。


 そのためには、たとえなんと言われようとも、粘ってやるわよと女エルフ。

 男騎士への想いは、たとえそっくりさん、一般ウワキツ人と言われようとも、彼女にとって間違いないものだった。

 たとえ、流石だなどエルフさんと弄られなくても、それは確かなものだった。


 その絆に、うむと頷く風の精霊王。

 かつて一度は彼が認めたラブコメカップル。

 こんな状況にあっても、まだ諦めないその姿に、彼もまた謎の安堵を覚えた。


 そして――。


「最後の格付けチェックはこれ。ともすると、モーラちゃんに優利過ぎるかもしれんがのう。これくらいのチャンスがあってもいいじゃろうて――ていや!!」


「うわっ!!」


 風の精霊王が指をくるりと回せば、男騎士の周りで白煙が上がる。

 いきなり、白い煙に巻かれたかと思えば、その姿が一瞬消える。


 なにごとと女エルフとからくり娘が狼狽えるその中で。


 二つの影が煙の中で蠢いた。


「「ごほごほ、ちょっと、カイゲン。魔法を使うならば、もうちょっと、一言かけてくれてからでもいいじゃないか」」


「えっ? はい?」


「やだちょっと、これ、どういうこと!? ダーリンが二人!?」


「「……は?」」


 はたして煙の中から現れた男騎士。その姿は何故か、二つになっていた。

 二人の男騎士が、まったく同じ顔をして指を突き合わせるその光景。

 それを眺めて、風の精霊王、にやりとほくそ笑む。


「最後のウワキツ格付けチェックのテーマは――愛しい人じゃ。さて、どちらかは本物のティト、どちらかはワシが魔法で作り出した、偽者のティト。見た目ではさっぱりと分からない。そっくりさんを、ちゃんと見分けることができるかのう」


「「な、なんだってぇっ!?」」


 いきなり、巻き添えを喰らった男騎士が狼狽える。

 しかし、そんな中、当のウワキツ格付けチェック参加者の二人は、いいじゃないとばかりに唇をなめずるのだった。


「そうそう、こういうのよ。こういうチェックを待っていたのよ。わからいでか、いったい何年一緒にいると思っているのよ、分からない訳がないでしょう」


「ふっふっふ、失われし神代の科学力を舐めて貰っては困るわよ。本物のダーリンかどうか、見分けるなんて、このアシガラには造作もないこと」


「「くっ、二人ともノリノリじゃないか!!」」


「ふぉっふぉっふぉ、まぁ、最後のチェックくらい、ラブコメらしくいかなくてはのう。そして、これを見分けられないということは、そもそもとしてヒロインとしての資格がないということ――」


 本当に、男騎士のことを愛しているなら。

 自分の大切なパートナーだと思っているなら。

 この難関越えてみせよ。


 好々爺転じて凛々しい顔となった風の精霊王。

 そんな彼が見守る中、女エルフと元赤バニからくり娘は、やってやろうじゃないのと腕まくりをして男騎士へと近づくのだった。


 かくして、最後のウワキツ格付けチェック。


 モニタリングなし、男騎士本人を前にしての、直接対決がはじまった。

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