第77話 どエルフさんと手ぬぐい
「くっ、しまった!! まさかこんな巧妙な罠を張り巡らしていたとは!! おそろしい奴ら!!」
「おそろしいのはお前の頭じゃい」
「どうしよう、こっちには――手ぬぐいしかない!!」
自分のそれの代わりに、男戦士がにぎりしめたのは手ぬぐい。
男湯から持ってきたのだろうそれは、ほどよく絞られていたがとても武器としては使えそうになかった。
しかし、それでも、男戦士はそれを構える。
「――さぁ、来い!!」
「来いじゃないわよ!! あんた、それ武器にする前に、もっと違う所に装備するべきでしょ!!」
女エルフが的確なツッコミをする。
なるほど、そうだな、と、男戦士。かれはさっそく絞った手ぬぐいをほどくとそれを広げ――。
そしてねじって、頭へと巻き付けた。
【手ぬぐい(鉢巻): 頭部装備アイテム。防御力+1。のぼせステータスにならない】
「さぁ、来い!! 防御力が+1された俺が相手だ!!」
「違うわよ!! そこじゃないでしょ!!」
なんでそうなるのよ、と、女エルフ。
相棒の激しいツッコミに困惑した男戦士。しかし、すぐに彼は彼女が何を言いたいのか察した――という顔をした。
そうして今度、彼が装備したのは肩。
【手ぬぐい(肩あて): 胴体装備アイテム。防御力+1。攻撃種別【斬撃】のダメージを-1する】
「よぉし。これで貴様らの斬撃攻撃にも耐えられるぞ。さぁ、来い!!」
「だから違うって言ってるでしょ。なんであんたはそうなんでもかんでも、合理的に考えるのよ」
「戦闘では常に冷静な奴が勝つんだ!!」
「弱点丸出しでよく言うわよ!!」
何が言いたいんだ君は、と、エルフさらいの一味に背中を向けて女エルフに詰め寄る男戦士。
そんな背中に、ふっ、と、気障な台詞が突然あびせられた。
「ティトよ冷静になれ」
「シュラト!?」
「彼女はこう言いたいのだ。そんな装備で大丈夫なのか、と」
いや、そういうつもりじゃ、と、女エルフが口ごもる。
基本、男戦士については辛らつだが、他人に対しては一歩引いた感じの、内弁慶な彼女であった。
そんな彼女から視線を女湯の入口へと向けた男戦士。
「では、どうしろというんだ」
「知れたこと――装備を整えればいいのさ。この私のようにな」
静かになった女湯に、さっそうと現れる暗黒騎士。その体は――。
【手ぬぐい(鉢巻): 頭部装備アイテム。防御力+1。のぼせない】
【手ぬぐい(肩あて): 胴体装備アイテム。防御力+1。【斬撃】ダメージ-1】
【手ぬぐい(武器): 右手装備アイテム。攻撃力+1。股間を拭くと毒効果付与】
【手ぬぐい(防具): 左手装備アイテム。防御力+1。股間を拭くと回避力+1】
【手ぬぐい(足) : 足装備アイテム。濡れた床でもすべりにくくなる】
【手ぬぐい(アクセサリー): 首に巻くと、汗を吸収してくれて快適】
フル手ぬぐい装備であった。
「なるほど!! さすがオニーチャンスキスキー!!」
「ふっ、さぁ悪漢ども!! この私が相手だ!!」
そう言った、暗黒騎士。
しかしながらその股間は、男戦士と同じく無防備な状態で風に揺れていたのだった。
暗黒剣が月夜に映える。
「だからあんたたち!! なんで股間に装備しないのよ!!」
「「股間!? いや、股間に装備ポイントはないだろう!!」」
「そういう問題じゃないでしょ!! もうっ、バカぁっ!!」




