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どエルフさん  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第七部第七章 異世界ウワキツ格付けチェック
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第761話 どエルフさんとウワキツ格付けチェック

「……いや、ウワキツチェックって言うけど、そんな簡単な二択問題で、本当にそんなもの分かるの? そもそもウワキツに正解とかってあるのかしら」


「ねぇ?」


「さぁ、最初のウワキツ格付けチェックの内容は葡萄酒でございます!!」


「「聞けや!!」」


 女エルフたちの素朴な疑問を完全にスルーして、茶番を進行する男騎士と風の精霊王。お前たちのためにやっているんだろうがという、謎の上から目線を炸裂させて、女エルフたちを睨む男騎士たち。


 巻きでお願いします、もう尺がないので。


 そんな強く睨まれると、途端に何も言えなくなってしまうのが、女エルフたちの悲しい所。その一瞬の隙をつかれ、話の主導権は風の精霊王たちに握られた。


「片方は、一本1ゴールドの安物葡萄酒。もう一方は、一本五百ゴールド。王室ご用達の有名地方産限定葡萄酒になります」


「よく持ってたわねそんなの」


「お二人にはそのどちらかを飲み比べていただきます」


 なるほど、と、女エルフ。

 ここでようやく合点がいく。


 どちらが本物のウワキツヒロインなのか。

 簡単な質問に答えるだけで、それが分かるのか、彼女の中でこのウワキツ格付けチェックの仕組みが理解できた。


 そう、本当にできるウワキツヒロインであれば。


「葡萄酒の味くらい分かるってことね。つまり、どれだけ大人の女性としての蘊蓄を持っているかを、私たちは試されているってこと」


「……なるほど、それなら納得だわ」


 頷き合う女エルフと元赤バニからくり娘。

 ウェディングドレスを揺らして頷き合う彼女たちに、ご理解いただけましたかという感じの視線を向ける男騎士と風の精霊王。


 やってやろうじゃない。

 そんな感じで、飢えた一匹狼娘たちが真面目な顔を造った時――。


「ちがいます!! はい、格付け前からウワキツありがとうございます!!」


「そのワインのどっちが高級か、判断している最中に見せた仕草、素振り、コメントその他もろもろを考慮して、どっちがウワキツか判断させてもらうんじゃぁ」


「「だったら普通に高級葡萄酒飲めばいいだけじゃない!!」」


 冷静にツッコむ男騎士と風の精霊王。

 この二人、もう完全に運営側のノリになっていた。


 特に男騎士。


 愛し愛され合う男女という立場を完全に忘れて、ノリのいい司会者になりきっているのだった。それはもう、キレのあるコメントで切り返したのだった。


 とんだ赤っ恥である。

 そして、これから先もおそらく、とんだ赤っ恥が続くのであろう。


 あまりにも悪趣味かつ下劣な企画に女エルフは戦慄した。

 元バニからくり娘も戦慄した。


 この企画の底にある、ウワキツヒロインを格付けするというお題目の下にくだされる、残酷な仕打ちを想像して、彼女たちは表情を凍らせた。


「安い葡萄酒を飲みながら、さもそれっぽいことを言っている姿が滑稽でたまらないんじゃないか」


「逆に高い葡萄酒を飲みながら、ぽんこつなことを言っているのがおもしろいんじゃないか。そういう視聴率をもっと意識した、画として映える光景をよろしくお願いしますよお二人とも」


「……つるし上げか」


「……なんて底意地の悪い番組」


 正解するか、不正解かなんて些細なこと。

 そこに至るまでの過程こそが、真の醍醐味。


 そう、ウワキツ力に正解はないのだ。


 その在り方こそがウワキツ。

 その所作こそがウワキツ。

 細部にウワキツは宿るのだ。


 今、ウワキツを試される時。


「正解しても、不正解でも、ランクの上下は発生しません」


「ワシがより、うわーきついと思った方がウィナー」


「さぁ、二人の本気のウワキツを見せていただこうじゃないか、モーラさん、アシガラさん」


 試されている。

 いろいろとあったが、女エルフと元赤バニ娘の目に、やる気の炎が燃える。

 このまま、無駄に年齢を積み重ねた、年増女に甘んじる訳にはいかない。


「やってやろうじゃないのよ!!」


「毒を喰らわば皿までよ!! あなたたちがそういうつもりなら、こちらも全力でやってやるだけだわ!! 見なさい!! これが全力の焦り系女子の意地よ!!」


「「焦り系女子www」」


「「煽ってんじゃないわよ!!」」


 かくしてはじまるウワキツ格付けチェック。

 女エルフはウワキツ力で、元赤バニからくり娘を上回ることができるのか。実に、アラサーっぽいというか、うわきつい感じの、葡萄酒の飲み方ができるのか。

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