第749話 ど狼さんとちょっと待ったァ!!
「あひっ、あひゃっ、ふひはっ……もう、らめぇっ」
作り物の瞳で白目を剥いて倒れるのは、からくり艦隊これくしょんを率いていたリーダー。
幸運の誉れ高き、七人の最初の原器が一つ――『ユキカゼ』である。
エルフリアン柔術∞段の長男が繰り出す、十二の必殺型によって、精神的に痛めつけられた可憐な少女は、そこになんだか企画モノビデオの事後みたいな感じで、ぐったりと倒れこんだ。
やらしいことはなにもしていない。
ちょっと肌と肌の接触が濃厚だっただけで、別に性的なことは少しもなかった。
そう、エルフリアン柔術は実戦武術である。
急所をむやみやたらと晒すわけがない。
そこはそう、金〇をうまいことひっこめて、そして珍〇を小さく萎えさせて、収納すると接触しないようにしていたのだ。
断じてセクハラ回避のためではない。
これは身を護るため。そう、エルフリアン柔術は護衛の技。
か弱きエルフの身を護るための技なのである。であれば、金〇のような人体の急所は可及的速やかに隠す必要があった。
「……ふぅ。コツ〇ケのおかげで助かった。またエルフリアン柔術に救われた」
空手の技である。
サン〇ンから始まりコツ〇ケと、某おろちリスペクトまったなし。
鬼を滅する刃に加えて、刃のような牙の方まで読んだのかというくらいに、もうなんていうか空手であった。お前、カラテクラスタと少なからず交流(一方的)あるのに、そういうことしててええんかいと、ちょっと疑問に思うアレであった。
いや、そもそも柔術なら本部が強くて――。
「ちょーっと待ったァ!!」
その時である。
まさに、パイ〇ーツ・マルミエヤン・ドットコム大勝利。
第七部完、待ったなしと思われたまさにその時である。
万里波濤を越えて、その声は届いた。
二十世紀に置いてきたような、セーラーなムーンっぽい声は木霊した。
あれはなんだ、誰だ、なんだとみんなが見る。
そんな中、水面をすべるようにしてやってくるのは赤い人影。
赤いピッチリとしたスーツに身を包んだそいつはそう――。
「バニー」
「ガール」
「だと!?」
赤いバニーのガール。そう、もはやバニーガールというだけで、ウワキツ案件待ったなし、いったい誰が着るんですかそんなの、パーティでも今どき来ませんよという、昭和のアイテムを着こなして、奴は現れた。
飛び交う砲弾の雨霰。
餓狼の如き唸り声。
すわ、彼女はさんざんに恥ずかし固めを受けて、グロッキーになった『ユキカゼ』及び身体をほぼほぼ破壊され残骸となった『クマ』を回収すると、アクロバティックに宙を舞って男騎士たちの前に立ちふさがった。
そう、敵側についた最初の七人の原器は合計で四体――。
本部で待機している『ホウショウ』以外にもう一人、この海域に小野コマシスターズとして参戦しているモノがいる。
それこそが、目の前の昭和バニーの正体。
「よくもまぁここまでけっちょんけっちょんのぎったんぎったんにやってくれたわねぇ。もうっ、女の子相手に加減ってものを知らないのかしら!! そんな悪い男の子たちは――この正義のバニームーン、アシガラがお仕置きしちゃうんだから!!」
「「「「「ぐわはぁっ!!」」」」」
目を剥くほどの月力。
三回石で頭を殴って正気を確かめたくなるような、そんな声色。
そう、現れたのは、昭和と平成の黎明を駆け抜けた声の持ち主。
本当にこんなこと言っちゃ失礼だけれど、ウワキツキャラの演技をさせたらたぶん日本一みたいな声をした、そんなからくり娘であった。
「さぁ、ここからが本当の勝負よ!! 最初の原器が飢えた狼――『アシガラ』さん!! 満を持しての登場なんだから!! あっ、満って言葉の響きで興奮しないの!! そういうのよくないと思うなァ!!」
「「「「「うわぁっ!! きっついっ!!」」」」」
さて、今ここに、敵方最強のウワキツ娘が姿を現した。
はたして、男騎士たち、最大ウワキツ力を誇る女エルフを欠いた状態で、彼女に勝つことなどできるのか。勝、元祖セーラーソルジャーともいえるような声を持つものを相手に、いったいどれほどのことができるのか。
戦いは――まだ始まったばかりだ!!




