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どエルフさん  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第七部第五章 からくり艦隊これくしょん
714/814

第714話 どエルフさんと第三レース

 第二レース、着順は以下の通りとなった。


 一位 パイ〇ーツ・マルミエヤン・ドットコム(8時間23分)

 二位 威臨社(8時間59分)

 三位 モッリ水軍(9時間33分)

 四位 小野コマシスターズ(9時間50分)

 五位 復讐屋アベンジャー海運(10時間12分)

 六位 謎の大陸商人コードX(12時間13分)

 以下 省略


 北海傭兵団は船員たちの負傷多数につき一位で入港も棄権。

 そんな北海傭兵団への攻撃にリソースを割いたのが効いたのか、小野コマシスターズはあれだけの猛攻を仕掛けながらも上位に食い込むことができなかった。


 いや、この場合。


「逆に上位に入賞しないように調整しているのか」


「あいつらの目的がこのレースに参加している商船たちの破壊なんだとしたら、そうなのかもしれないわね。あえて攻撃の仕掛けやすい中位の位置をキープしているのかもしれない」


 威臨社との情報交換を終えて、第三レースへと挑む男騎士たち。

 彼らはトップでこのレースを出発する――しかも他のチームを大幅に引き離しての出発である――というのに、一様に沈痛な面持ちであった。


 無理もない。

 向かってくるのが海賊ならばいざしらず、神が造りし兵器とそれを基にして量産された兵器たちなのである。しかも、二体や三体ならばいざしらず、それが何体もとなれば必然そういう深刻な表情にもなろうというもの。


 ただ、怖気づいているわけではない。

 無言を貫きながらも、静かに立ち向かう覚悟はできている。

 男戦士たちは歴戦の冒険者として当然の警戒をしていた。


 たとえ神聖遺物だとしても、負けるわけにはいかない。

 彼らの手には今、仲間の命と世界の命運が握られているのだ。


 なにより彼らにとってこの程度のことはもはや逆境でも何もない。いたって普通に処理するべきことだ。暗黒大陸の脅威にも真っ向から相対した。それ以前にも、ミッテルの使徒と熾烈な争いを繰り広げた。


 神の兵なにするものぞ。


「皆、気を引き締めてかかろう。レースもこれを越えれば折り返しだ」


「えぇ」


「だぞ」


「このまま他の商船もからくり艦隊もぶっちぎってGTR優勝と参りましょうか。あながち、このメンバーならできない気がしません」


「できますとも!! 私たちは暗黒大陸の魔神を相手に戦った勇者たちなんですから!! からくり娘たちなんて一ひねりです!!」


「お嬢の言う通りでさ」


「うむ」


「頼もしい限りです。ティト殿、本当にいい仲間を持っておられますね」


「…………」


 皆が気炎を肩から立ち昇らせる中、ふと、沈黙をしたのは青年騎士だ。


 この手の場面において、まずいのいちに威勢のいいことをいう彼。

 だが、どうして今日は覇気がない。どうしたことかと気にして視線が集まるのは自然のなりゆきだった。


 そんな複数の視線にさらされて、慌てて青年騎士が顔を上げる。


「皆さん、気合十分ですね。これならどんな敵がやってきても大丈夫。さぁ、出港しましょう。この第三レースも目指せトップ通過です」


 やや空回り気味な台詞が余計に気をもませる。

 何かあったのだろうかと顔を見合わせる男騎士と女エルフ。そんな彼女たちに、なんでもないですからといやにかぶりを振って今更覇気をみせる青年騎士。


 思う所というのが先日のからくり娘たちとの邂逅というのは間違いない。

 だが、男騎士たちはそれを知らない。


 からくり侍について知っていることを教えろと言われたことを――。


 さて。

 こんな時、いのいち鼻が利くのがこの女。


「ロイドさん、ちょっとよろしいですか」


 法王ポープである。


 組織の長として、様々な人間を操って来た彼女には、なんとなくではあるが人の不自然な挙動というモノに自然と気配が行った。その兆候を目ざとく見ぬことができなければ、到底、大規模な組織の長など勤めることはできない。


 少し気迫のこもった視線が青年騎士に飛ぶ。

 その視線に、彼がたじろいだその時であった――。


「おーっす!! お前ら、繰り上げ一位とはうまいことやったな!! だっはっは、なんだよなんだよ、心配していたけれどなかなかやるじゃないのよ!! 流石はティトとモーラちゃんだ、俺が見込んだ冒険者たち!!」


「「店主――じゃなかった、謎の大陸商人X!!」」


「まいど!! 合わせてくれてありがとうよ!! だっはっは、バレバレなのに身を隠さなくちゃいけないってのは辛いね!!」


 間が良いのか、悪いのか。

 謎の大陸商人Xこと、男騎士たちのいきつけの道具屋の店主が、彼らの船の甲板にその姿を現した。

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