第71話 どエルフさんとベスト4
「はい、という訳で、二回戦も無事に終了いたしました!!」
男戦士たちの試合がひと段落して、しばらく。
続いて始まった勇者チームの試合が勇者の圧勝で決着し、第二回戦の対戦はすべて終了した。
「これにて本日の日程は終了、明日は昼前より準々決勝を執り行います!!」
「あら、今日中に全部の試合をするわけじゃないんだ」
「まぁ、連戦に次ぐ連戦じゃ、各々力を出し切れないからな」
「休憩して万全の状態でってことか、気が利くわねぇ」
「それだけみんな、いい勝負を見たいってことさ」
ステージの脇にしつらえられた控えのベンチ。
そこに腰かけながらも足をベンチにあげて、膝を抱えながら女エルフはつぶやいた。
その視線の先には、先ほどの試合で勝利した、勇者チームの少年と少女。
試合が終わるなりそそくさと、勇者の少年の後ろに隠れたエルフの少女に、女エルフは少なからず興味を持っているようだった。
「では、ベスト4に残ったメンバーを紹介していこうと思います。まずは、先ほど見事な試合を見せてくれた、勇者アレックスとエルフのララ!!」
「やだ、恥ずかしいよ、アレックス」
「ララ、こんなことくらいで恥ずかしがるなよ。勇者のパーティなんだから、注目くらいされるさ」
惜しみない拍手が送られる中、迷惑そうに身を縮こまらせる少女エルフ。
そんな彼女をかばうでもなくはげますでもなく、毅然と立ちつくす少年勇者。
どういう二人なのだろうか、と、女エルフは首を傾げた。
そして、彼らと同様に分からない二人組。
「Aブロックからは、やはり、予想通りでしょうか、雰囲気はもう優勝候補、シュラトとアリエス!!」
「ふっ、まぁ、順当な結果だと言っておこうか」
「…………」
当然のようにAブロックを勝ち抜いていた黒騎士。
ステージ上へとのぼるその姿に目が言ったのは、女えるふではなく男戦士の方だった。
魂の名前を持ち合う二人は、しばしステージの上と下から視線をかわす。
ふっ、と、また気障なためいきを吐くと、彼は男戦士に背中を向けたのだった。
「どう考えても、あれがAブロックは勝ち抜いてきそうね」
「相手には悪いが、どう考えても彼の実力は、このメンバーの中で頭一個飛びぬけている」
それは男戦士も含めてか、と、女エルフは視線で尋ねた。
男戦士はその視線にあえてこたえず、すっとその視線を、もう一人のAブロックのベスト4へと向けた。
「さぁ、そんなシュラトの相手をするのは――巨人族の末裔と噂される、巨漢の剣士ゴリアテ!!」
「フヌゥウウウウッ!!」
見るからに筋肉馬鹿、という感じの巨漢がステージに歩み出た。
その場でこれ見よがしに筋肉を隆起させれば、そのパフォーマンスに闘技場はにわかに沸いた。
「あきらかにごり押しタイプよね、彼」
「そしてそんなごり押しが通じるタイプじゃないからな、オニイチャンスキスキーは」
「だからその呼び名なんとかしなさいよ」
「同じく、巨漢の女剣士、ゴルゴン!! 筋力ステータス全振りな二人組という異色の組み合わせですね!!」
筋力と剣術は直接的な関係にはない。
もちろん、剣を振るうのに必要最低限の基礎筋力は必要だが、多ければよいというほどでもないのだ。
男戦士や黒騎士くらいの筋力量――ほどよく引き締まっている程度が、剣を振るには都合がよいのだ。
「これはまずAブロックの勝者は間違いないな」
「じゃぁ、なんとしてもBブロックを制して、戦わなくちゃね」
「えぇ、あぁ、まぁ――」
いやに乗り気じゃないか、と、男戦士が女エルフの発言に戸惑う。
すると、くすり、と、女エルフが微笑んだ。
「戦ってみたいんでしょう、その、シュラトと。見てれば分かるわよ、貴方、なんだかやる気が溢れてる」
「ばれてしまったか」
「なんだかんだで、おバカだけれども、根っこのところはちゃんと戦士なのよね、貴方って」
と、久しぶりに、男戦士の顔がこわばった。
なんだ、今度はいったいどんな地雷を踏んだのだ、と、女エルフの顔があきれ顔へと指し代わる。
「根っこのところが戦士だなんて。そんな、俺を夜の戦士みたいに言わなくっても」
「お前のそのお股にぶら下がってるのは、根っこやったんかい」
「しかも、オニイチャンスキスキーを見て、ヤル気になっているだなんて。そんな誤解を招くようなことを」
「うーん、いつも好き放題に誤解しておいてからに、そういうことをいうかねコイツ」




